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集落を襲ったケガレと呼ばれているいかにも邪悪そうな生き物は、リリィお姉ちゃんやマーフィちゃん、他の集落の人達の手で全て退治された。
「ふぅ、これで全部みたいだね」
「リリィお姉ちゃん! 大丈夫? 怪我は無い?」
「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね」
戦っている時は近寄りがたかったけれど、終わればいつもの優しい笑顔を見せてくれる。
目立った怪我もなさそうだし、無事で本当に良かった。
次に僕は、マーフィちゃんとその父親の方へ目を向けた。
「まさか、お前にそんな力があったとはな……」
父親は、集落を救った落ちこぼれの娘と視線を合わせ……。
「見直したぞマーフィ。流石は我が娘だ」
その娘の頭を、少し乱暴に撫でて労った。
「とーちゃん……」
それに対してマーフィちゃんは、少し照れくさそうにしながら合っていた視線を逸らした。
「だが、なんだその面妖な格好は」
「お、おいらもよく分からないにゃ」
「にゃ……?」
「へ? お、おいら何かいったかにゃ?」
「マーフィ。お前おかしいぞ、後でおじじ様に見てもらえ」
「う、うん。分かったにゃ」
そして僕は、マーフィちゃんの口調が、フィクションの中の存在である白昼猫と同じになっている事に気づく。
史上最強のスキルの影響力は、まさか能力だけじゃなくてキャラクターの設定も引き継ぐ……?
じゃあ、リリィお姉ちゃんも……?
「タロ君、マーフィちゃんも無事でよかったね」
確かに女神セレスティーネは、普段おっとりとした性格だ。
元々お姉ちゃんはそういう性格だから、変わっている事に今まで気づかなかったけども……。
まさか、史上最強のスキルって。
服装や能力だけじゃなくって、性格や口調すらも僕が好きなキャラと同じにしてしまう?
「お初にお目にかかる。私はこの集落を仕切っている者だ。流石は天の神の使いと村一番の狩人。よくケガレを倒してくれた」
様々な思考が僕の脳内をぐるぐるしている中。
派手な冠をかぶっている老爺が、僕達の前へと現れてそう告げた。
「えっと、私の事はリリーシアと呼んでくれれば良いですよ」
”天の神の使い”という、呼び方に慣れていないんだろう。
リリィお姉ちゃんは、少し困った笑顔を見せながら返答した。
「それではお言葉に甘えて。リリーシア様が事前に集落の者を集めてくださったお陰で、避難も容易に出来た。誠に感謝する」
そもそも、僕とマーフィちゃんを二人きりにするための行動だった。
それが、こんな形で役立つなんて……。
僕は都合のよさを感じながら、お姉ちゃんや集落の人々の無事を改めてかみ締めた。
「あのケガレって一体何なのですか?」
その時、お姉ちゃんは集落を襲った謎の存在について問いかける。
「ふむ、巻き込んでしまったからには、話さざるをえないな」
集落の長は鼻を一つ鳴らすと、両手を後ろで組んで遠い眼差しをしながら語り始めた……。




