表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/433

36

 僕とマーフィちゃんは、急いでテントを抜け出して宴をやっていた広場へと向かった。


「こ、これは……!」

 そして広場に到着した僕は、目の前の風景を見て愕然とした。


 村の外から次々と現れる黒い物体が、まるで日食がおきた太陽のように輪郭のみを輝かせてながら、見た目を鳥にも蜘蛛にも変えて集落の人々を襲っていたのだ。

 これが、ケガレ……?


「リリィお姉ちゃん!」

「とーちゃん!」

 集落の人々が避難している最中、ケガレへと立ち向かう人影が二つ。

 先程マーフィちゃんを叱っていた大人と、リリィお姉ちゃんだ。


「タロ君!」

「マーフィ!」

 というか、さっき怒ってた人はこの子のお父さんだったのか!

 でも、今はその事を考えている場合じゃない。

 早くリリィお姉ちゃんに合流して……。

 そう思いながらも、僕は二人へ近づこうとした。


「さっき居たテントに隠れていて!」

「さっき居たテントに隠れてろ!」

 リリィお姉ちゃんは魔法で、マーフィちゃんの父親は持っていた槍で、ケガレを撃退しながらそう告げた。


「僕も戦う!」

「おいらも戦うよ!」

 大切な人だけを戦わせるわけにはいかない。

 その思いはマーフィちゃんも同じだったらしく、そう発言した後に前線へ向かおうとした。


「私は大丈夫だから、タロ君は隠れていてね」

「マーフィ、お前が居ても邪魔なだけだ。分かったらさっさと隠れていろ!」

 お姉ちゃんはともかく……。

 何もそんな言い方をしなくてもいいじゃないか。

 確かにマーフィちゃんは、期待に答えられないかもしれないけれど……。


「うぅ……」

 マーフィちゃんはその場に立ったまま、瞳を潤ませてうつむいてしまう。


 やっぱり僕は、この子に何もしてあげられないのか?

 同じ”期待はずれの子供”で、彼女の痛みも苦しみも分かるのに、見る事しか出来ないのか?


 そう思っていた時だった。


「うわぁっ!」

 突然、マーフィちゃんの着ていた服が強く光り輝きだす。


「これって!」

 この現象、間違いない。

 リリィお姉ちゃんの修道服が、今の女神のドレスに変わったのと同じだ。

 まさか、マーフィちゃんにも同じ現象が……?


 そう思いながら彼女を見守り続けた。

 そして光がおさまると、僕の予想通りマーフィちゃんの服装はがらりと変わっていた。


「な、なにこれ……」

「その格好!」

 素肌にフィットした紺色の衣装……というかスク水!?

 それに猫耳カチューシャ、スク水と同じ色の半透明なケープ、マーフィちゃんの首をすっぽり覆うくらいベルト部が太い首輪、猫の顔がついているニーハイソックス。


「うぅー……、なんかぴちぴちしてて気持ち悪いぞ……」

 間違いない、僕が転生前の世界で人気があったアニメ”猫猫拳夢にゃんにゃん・カンフードリーム”内に出てくる白昼猫(まひるにゃん)が着ている衣装そのものだ。


 僕はその作品もそのキャラクターも好きで、アニメのブルーレイを全巻揃えていて何度も見返しているくらいだ。


 それにしても、何でこの時代にスク水なんだろう?

 世界観に合わなさすぎるような……。

 やっぱり、僕に与えられた史上最強のスキルは”女の子の衣装を自由に変える能力”だった?


「でも、よく分からないけどやれそうな気がするっ!」

 僕がいろいろと考えている時。

 マーフィちゃんはそう言いながら、父親の制止を振り切りケガレへと向かって行く。


 確かに白昼猫は拳法の達人で、拳に力を溜めて放つ通称”居合い突き”が得意なキャラクターだ。

 でも、服装が同じであったとしても、能力まで同じなわけはない。

 このままじゃ、マーフィちゃんが危ない!


「マーフィ!!」

 マーフィちゃんの父親も、当然僕と同じ考えだった。

 突進する娘に対して、周りに敵が居ても構わず大声を出して止させようとした。


 それでも彼女はケガレへ向かう事を止めず、躊躇わず。

 拳をぐっと握って大きく振りかぶり、ケガレへと殴りかかった!


「ていやー!!」

 少女の気合の篭った声と共に放った一撃が、ケガレの肉体に衝突すると、瞬間的に空間が歪み……。


「ギャアアアアアアアアアッッッ!!!!!」

 ケガレと呼ばれる謎の生命体は甲高い悲鳴をあげながら、粉々に砕けてしまった。


「お、おおお!!! おいらケガレを倒したぞ!」

「お前……!」

 まさか、アニメどおりの一撃必殺・居合い突きをやるなんて!

 すげえ……、すげえよ!


 あれ、そういえば……。

 リリィお姉ちゃんも魔法が使えるようになってた……。


「とーちゃん! おいらも戦えるんだ!」

「……何だか分からんが、あっちにもケガレが来ている。行くぞマーフィ!」

「おう!」

 僕が授かった史上最強のスキルって、もしかして……。

 ”僕が好意を抱いた異性を、僕が知っているフィクション上の登場人物と同じ能力、格好にさせる”ことなの?


 だとしたら、やばいぞ!

 滅茶苦茶じゃないか!!


 マーフィちゃんとその父親、リリィお姉ちゃんが次々とケガレを倒している中。

 僕は自分の能力に打ち震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ