表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/433

33

 僕達を歓迎する宴も終わろうとした時。

 人々の熱気にあてられた僕は、体と気持ちを冷ますために一人で集落の外れへと向かい、夜風に当たろうとした時だった。


「ん? あれなんだろ」

 僕は人の気配を感じ、そちらへ歩いていく。


「あの子って……」

 草を踏みしめながら、ほんの僅かな距離を歩いた先には、先程巫女の踊りでぎこちない動きをしていた少女と、大人の男の人が立って何かを話していた。

 僕は二人が何を話しているか気になり、そっと聞き耳をたてた。


「神の使いの前で失敗とは、お前はどうしてそんなに駄目なんだ!」

「ご、ごめん……」

 大人の男の人が少女に向かって激しく怒鳴っている。

 会話の内容から、さっきの巫女の踊りが上手く出来なかった事が原因かな?


「今日の狩りも失敗したそうじゃないか! この穀潰しめ!」

「ひぎゃぁっ!」

 遂には怒鳴るだけではなく、男の人は少女の頭を強く叩いた。

 少女は情けない声をあげながら、拳をぐっと硬く握っている。


「本当にお前は何も出来ない! 我々一族の面汚しめ!」

「ううぅ……」

 ”一族の面汚し”

 その言葉を聞いた時、僕の昔の記憶が蘇った。


 そして気がつくと僕は、二人の前へ立っていた。


「……これはこれは、神の使いの従者殿。このような場所に何用で?」

「声が聞こえたから、来たんだ」

「それは申し訳ございません。すぐに終わりますので……」

 大人の男の人は、僕に対しては冷静で紳士的な態度をとっている。

 でも、どこかよそよそしい感じがした。


「いたいっ! ぎゃあっ!」

「この役立たず! 無能! クズめ!」

 僕が見ているにもかかわらず、大人の男の人は頭を何度も叩き暴言を浴びせ続けた。

 少女の体と声は震えていて、今にも大泣きしそうだ。


「もうやめなよ」

 だから僕は、そんな見るに堪えない行為を止めるため、少女と大人の男の人の間に入った。


「従者殿、どういうつもりですかな?」

「そこまで責めなくたっていいじゃないか、この子だって好きで失敗しているわけじゃないんだ」

「ふむ、甘いですな。従者殿、そのような考えではここだと生きていけませんよ」

 この時、大人の男の人がとても冷たい眼差しをしている事に気づいた。

 僕は思わず、目線を逸らしてしまった。


「マーフィ、罰として道具の手入れを明日の朝までにやっておくように」

 大人の男の人は、僕の態度を見て鼻で笑った後に、少女へそう言い残して集落の方へと去って行った。


「……大丈夫かな?」

「大丈夫、ありがとうな……」

 あれだけぶたれたし、酷い言葉をたくさん言われたんだ。

 この子は大丈夫と言っているがそんなわけがない。


「じゃあ、おいらは仕事があるから行くよ。はぁ……」

 あの女の子に対して何かしてあげられないか?

 もっと気の利いた優しい言葉をかけられないか?

 僕は必死になって考えてた。


 だけど結局何も思い浮かばず、傷心の少女を見送ってしまった……。

 僕は一つため息をつくと、胸の中をもやもやさせながら、リリィお姉ちゃんが居る場所へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ