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僕達を歓迎する宴も終わろうとした時。
人々の熱気にあてられた僕は、体と気持ちを冷ますために一人で集落の外れへと向かい、夜風に当たろうとした時だった。
「ん? あれなんだろ」
僕は人の気配を感じ、そちらへ歩いていく。
「あの子って……」
草を踏みしめながら、ほんの僅かな距離を歩いた先には、先程巫女の踊りでぎこちない動きをしていた少女と、大人の男の人が立って何かを話していた。
僕は二人が何を話しているか気になり、そっと聞き耳をたてた。
「神の使いの前で失敗とは、お前はどうしてそんなに駄目なんだ!」
「ご、ごめん……」
大人の男の人が少女に向かって激しく怒鳴っている。
会話の内容から、さっきの巫女の踊りが上手く出来なかった事が原因かな?
「今日の狩りも失敗したそうじゃないか! この穀潰しめ!」
「ひぎゃぁっ!」
遂には怒鳴るだけではなく、男の人は少女の頭を強く叩いた。
少女は情けない声をあげながら、拳をぐっと硬く握っている。
「本当にお前は何も出来ない! 我々一族の面汚しめ!」
「ううぅ……」
”一族の面汚し”
その言葉を聞いた時、僕の昔の記憶が蘇った。
そして気がつくと僕は、二人の前へ立っていた。
「……これはこれは、神の使いの従者殿。このような場所に何用で?」
「声が聞こえたから、来たんだ」
「それは申し訳ございません。すぐに終わりますので……」
大人の男の人は、僕に対しては冷静で紳士的な態度をとっている。
でも、どこかよそよそしい感じがした。
「いたいっ! ぎゃあっ!」
「この役立たず! 無能! クズめ!」
僕が見ているにもかかわらず、大人の男の人は頭を何度も叩き暴言を浴びせ続けた。
少女の体と声は震えていて、今にも大泣きしそうだ。
「もうやめなよ」
だから僕は、そんな見るに堪えない行為を止めるため、少女と大人の男の人の間に入った。
「従者殿、どういうつもりですかな?」
「そこまで責めなくたっていいじゃないか、この子だって好きで失敗しているわけじゃないんだ」
「ふむ、甘いですな。従者殿、そのような考えではここだと生きていけませんよ」
この時、大人の男の人がとても冷たい眼差しをしている事に気づいた。
僕は思わず、目線を逸らしてしまった。
「マーフィ、罰として道具の手入れを明日の朝までにやっておくように」
大人の男の人は、僕の態度を見て鼻で笑った後に、少女へそう言い残して集落の方へと去って行った。
「……大丈夫かな?」
「大丈夫、ありがとうな……」
あれだけぶたれたし、酷い言葉をたくさん言われたんだ。
この子は大丈夫と言っているがそんなわけがない。
「じゃあ、おいらは仕事があるから行くよ。はぁ……」
あの女の子に対して何かしてあげられないか?
もっと気の利いた優しい言葉をかけられないか?
僕は必死になって考えてた。
だけど結局何も思い浮かばず、傷心の少女を見送ってしまった……。
僕は一つため息をつくと、胸の中をもやもやさせながら、リリィお姉ちゃんが居る場所へと戻った。




