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目が覚めると、そこには何故か別れたはずのお姉ちゃんが居た。
「ん……」
「おはよう」
お姉ちゃんは怪しい業界の人になって、散々玩ばれたはず。
どうして、あの時と同じ笑顔を見せてくれるの?
「ユリ……お姉ちゃん?」
僕は寝ぼけながら、お姉ちゃんの名前を言った。
「どうしたの?」
それに対してお姉ちゃんは、どこか不思議そうな表情をしている。
僕は、何か間違った事を言ったのかな?
そう思うと、眠気でまどろむ意識が次第に覚醒していき……。
「はっ! こ、ここは……? 夢……、だったのか?」
そうだ、僕は異世界に転生したんだった。
大陸で異端審問官に追われ、捕まってしまい流刑にされて、今別の大陸へ向かおうとしている最中だった。
漂流中に寝ちゃうなんて……。
「タロ君大丈夫?」
「う、うん……」
どうしてあんな夢を見たのか?
その理由は分からない。
今分かっている事は、リリィお姉ちゃんが僕のことを心配しているということだ。
「ねえタロ君、ユリって誰のことかな?」
「えっ、そ、その……」
げげ、なんでお姉ちゃんが僕の昔の事を知ってるの!?
どうしよう、どうしよう……。
「修道院の時も言ってたよね?」
「うん……」
この時僕は、リリィお姉ちゃんにこれ以上心配をかけさせないよう、どうにか誤魔化そうとも考えた。
だが僕は隠す事を止めて、過去にあった出来事を全てリリィお姉ちゃんに話した。
「そうだったんだ……」
僕が全てを話し終えた時、リリィお姉ちゃんは悲しそうな表情をしていた。
「私って、その人に似ている?」
「うん」
お姉ちゃんの質問に対し、僕は嘘をつくことなく率直に答えた。
ユリお姉ちゃんとリリィお姉ちゃん。
二人は見た目こそ違えど、温かくて穏やかで優しい感じは、まるで同一人物かと思わせるくらいだ。
「でも、リリィお姉ちゃんはリリィお姉ちゃんだよ」
結局、ユリお姉ちゃんがどうなったかは分からない。
僕の過去は、もう変わらない……。
だからこそ、今この時を大切にしたい。
僕の事を好きでいてくれている、リリィお姉ちゃんを大切にしたい。
その思いを胸にしながら、そう伝えた。
「ふふ、ありがとうね」
そんな考えが伝わったのか、リリィお姉ちゃんはいつもの笑顔を見せながら、お礼を言うと……。
「よし、じゃあそんなタロ君にいいものを見せてあげよう」
両手をぱんっと胸の前で合わせた。
「どうしたの?」
「いい事を思いついたの。上手くいけば次の大陸まですぐに行けるよ」
「本当!?」
今までの話の流れからは想像もつかない言葉に、僕は戸惑ってしまった。
「船にしっかりつかまっていてね」
「うん」
そして言われるまま、一つ頷くと船の縁をぎゅっと強く握ると……。




