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僕とリリィお姉ちゃんの平穏なひと時は、そう長くは続かなかった。
「居たぞ!」
「あそこだ!」
僕達は、その声のする方を振り向いた。
そこには修道院に火を放ち、僕達を葬ろうとした異端審問官達が居た。
真っ先に反応したのはお姉ちゃんの方だった。
お姉ちゃんは何も言わず僕の手を引き、異端審問官達から逃げようと試みた。
「きゃあっ!」
「お姉ちゃん! ぐぅっ!」
しかし、今回は逃げられなかった。
待ち伏せしていた他の審問官達に捕まってしまった。
「ようやく捕まえたぞ、悪魔の子とその随伴者よ。もう逃げられんぞ」
腕を後ろにやられ、手首を大人の男の力で押さえつけているせいか、まるで動けない。
「は、はなせ……」
僕はもがいたが、びくりともしなかった。
「中々手間取らせてくれたが、お前達は本当に都合がいい」
「どういう事……?」
「お前達を罰する場所は、この海岸の近くだからな」
「えっ……」
「うそ……」
さらに僕は、即座に命を奪われてしまう事が分かると、さらに暴れて抵抗を試みた。
「く、くそおぉ……」
「うぅっ、手が押さえられてたら、魔法が使えない……」
だが、それでも逃げ出す事は出来なかった。
お姉ちゃんも魔法の力を使おうとしてたみたいだけど、どうやらそれも駄目なようだ。
「お前が不思議な力を使うのは、事前に調べがついている」
「そ、そんな……」
「これ以上逃げられては、我々異端審問官の名に傷がついてしまうからな」
こうして僕達は、長い逃避行の末に捕まってしまった。
僕とお姉ちゃんの手首は縄で固定されると、処刑する場所へと無理矢理連れられて行く。
そしてその場所に到着した時、僕は目を疑った。
「えっ、まさか海へ……」
桟橋に木製の小船が一隻が繋がれている。
これってもしかして、流刑……?
「察しのいいガキだな。面倒な説明が省けて助かるよ」
最初に出会った時は、僕達を燃える修道院の中へ入れようとしていた。
悪いものを炎で浄化するから火刑なのかと、内心納得していた。
それがどうして流刑になったのか?
確かにさっきは、罪を罰する場所が近いとしか言ってなかったけど……。
その事が気にはなったが、今ここで余計な事を言ってしまい、彼らの気分が変わったら元も子も無いと思った僕は、何も言わず歯を食いしばった。
「ぐあっ」
「いたいっ」
僕が考えている最中でも、異端審問官達は僕達を無理矢理桟橋へと進ませて、船の中へ突き落とした。
あまりにも乱暴だったため、僕とお姉ちゃんは二人とも体勢を崩してしまい、乗船した途端倒れてしまう。
「じゃあな、二度と帰ってくるなよ」
僕達が船へと乗った事を確認すると、異端審問官の一人は船と桟橋を繋いでいたロープを、手持ちのナイフで切った。
船はみるみると海岸から離れていく。
結果や形はどうあれ、僕達は追っ手からの逃走に成功したのであった。




