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進軍を始めて二日が経った。
その間、敵は余程の自信があるのか、罠や待ち伏せといった妨害を受ける事無く、敵の西方軍が陣を布いている平原に到着した。
目の前に広がる五千の味方と、三千の敵。
味方はほぼ人間だけど、敵は遠目から見た感じ人だったり、元人間だったり、元々人間じゃなかったり……。
混成部隊って印象が強い。
でも、そんなの関係なく、これからこの大人数で命のやり取りを行う。
勝てば未来への道が続き、負ければ何かもが終わってしまう。
そんな大事な一戦のせいなのか、あるいは戦場のピリピリした雰囲気にあてられたのか、ドキドキが止まらない。
「タロ君、大丈夫?」
「うん」
当初僕は、ミャオの近くに居る予定だった。
だが、ミャオの部隊とアドルフの部隊が第一陣に決まったため、なるべく危険の少ないリリィお姉ちゃんの部隊へ移った。
「私も緊張しているよ。ミャオちゃんの口添えでここにいるけれど、戦略とか戦術は素人だからね」
僕と遅めに合流したまふにゃんとお姉ちゃんは、クス子やミャオのように活躍した戦歴も経歴も無い。
ただ、ミャオと同じ僕の仲間という理由だけで一軍の将となった。
そんな事は本来ならまずありえない。
だけど僕はその事よりも、ぱっと出のまふにゃんやお姉ちゃんを重用しなければならない程の人材不足が気になった。
「大丈夫ですよリリーシアさん!」
「俺らが支えますから!」
「一緒に戦いましょう」
ただ、僕の予想とは逆に、リリィお姉ちゃんは兵士からの人気はあったので、指揮が滞り戦線が崩壊するという事はなさそうだった。
それを示すかのように、近くに居た兵士は笑顔でそう告げてきた。
「童共! よぅ来たな!」
そんな乾いた戦場に訪れた僅かな和みも、前方から津波のように襲い掛かってくる音圧にかき消されてしまう。
な、なんだこの大声。
僕の居る後衛部隊まで聞こえるぞ……!
「妾はミルイ! 轟槍使いのミルイじゃ!」
敵軍の将の声……か?
女の人っぽいけれど、ドスのきいた声だし、かなり強いのかな……。
てか、関西弁!?
「さあ! さっさと始めようや! そして楽しもうや、命のやり取りをな!」
「第一陣、突撃ぃぃーーー!!!」
敵の声を遮るかのように、アドルフの突撃命令が下されると、地響きがなるくらいの勢いで前線の兵士たちは敵陣へと突っ込んでいった!




