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「タロ、問題はないぞ」
僕の気持ちをなだめたのは、リリィお姉ちゃんではなくミャオだった。
そういえば、会議が始まってからお姉ちゃんは一言も喋っていない。
ふと、お姉ちゃんの方が見た。
……どこか遠い目をしている、何か考え事でもあるのかな?
そう思っていると、リリィお姉ちゃんはこちらに気づき、僕へ微笑み返してきた。
僕は思わず目線をそらした。
「そのミルイがどの程度の手慣れかは分からぬが、余やにゃー、クスや姉殿がそう容易く負けるとも思えん」
ミャオの言う通り、みんなはとても強い。
マキナの操る機兵にも打ち勝つ事が出来たんだ。
たとえどんな猛将だとしても、ミャオが言った四人ならきっと……。
四人……?
僕はまた部外者……?
「ぼ、僕も行くよ!」
とてつもない疎外感が不快感に変わるのにそう時間はかからず、その負の感情を振り払うように僕は一緒に行く事を大声で告げた。
「……今回の戦は、未だかつてない程の規模だ。余でも何が起こるか予想出来ない」
今までのミャオだったら、僕と一緒に戦おうと言ってきた。
けど、今回はそれを言っていないという事は、暗に彼女も不安がっているという事なのかもしれない。
「だが、その心意義や天晴。そこまでの覚悟があるならば、余は止める事はしない」
「ミャオ……」
「……余達の傍から離れないで欲しい。頼む」
「うん、分かった」
僕はぎゅっと拳を握った。
「大丈夫だよ、大丈夫だから……」
その直後、リリィお姉ちゃんは僕へと覆いかぶさるように後ろから抱きしめてくれた。
この時僕は、お姉ちゃんの体が震えている事に気づいた。
それからしばらく何もない平穏な時が続き……。
いよいよ聖裁戦の初戦となる西方軍攻略の日。
街はずれの広場には、今回の戦闘に参加する兵士五千が集まっていた。
兵士五千は、六つの部隊に分かれる。
各々の大まかな役割はアドルフ、ミャオ、マリーさん、ユリウスらが千人単位、残り千をまふにゃんとリリィお姉ちゃんが半々で指揮をする。
クス子は後方の支援部隊を手伝い、おじいちゃん将軍は町の守備のため残留となる。
「さあマリアンナ殿、お願いしますよ」
部隊長兼総参謀役を務めるユリウスは、木組みの物見台から兵士全員が揃ったのを確認した後、横に居たマリーさんと場所を入れかわった。
「みなさん。この戦いに、我々の未来全てがかかっています」
今回の出兵で、マリーさんは総大将の役目も兼ねている。
こういう役回りは男の人が多いのに、やっぱあの人ってすごいんだなぁ……。
「今までよりも辛く厳しい戦いになるでしょう。諦め、挫折するかもしれません……、恐怖で逃げ出してしまうかもしれません……」
「だからこそ信じてください。自らの光を、心の光を!」
この時僕は、マリーさんが過去にユリウスに光の高貴士と言われている事を思い出した。
「国や家族の明るい未来は目の前です。さあ、私と共に光ある未来へ進みましょう!」
『うおー!』
マリーさんの言葉に、兵士たちの士気が高揚していく。
これから危ない場所へ行くのに、まるで真夏の熱風を受けたように体が熱くて、胸がとても高鳴るのはどうしてだろう?




