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異世界の闇軍師  作者: まさな
最終章 宮廷魔術師

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第五話 トレーニング用ダンジョンを建造する

 装備は整った。

 後は使う人間のレベルと熟練度の底上げだ。


 俺は高レベル冒険者に一定レベル毎の高額褒賞を出し、熟練度システムの秘密も開示して教えてやった。


 これで後は勝手にレベルアップしてくれるだろうと思っていたのだが。



「くそっ、また死んじゃったか…。有望な奴だったのに」


 割と死亡率が高い。レベル50の奴でも結構死ぬ。

 より危険な冒険に出て、より強いモンスターと戦うのだから、仕方のない面もあるのだが、引き際を心得ていなかったり、単純な罠にやられたりするのを見ると歯がゆいと言うかなんと言うか。

 雑魚敵を倒しても効率が悪いし、この世界のダンジョンの宝箱は俺の代わりに(・・・・・・)全部開けてもらう方針だから、冒険を止めろとも言えない。


 『冒険者としての技量』を高めてやる必要性がある。


 そう痛感した俺は、冒険者学校ならぬ、初心者用ダンジョンを作ってみた。

 ウォール系呪文を駆使し通路を作る。罠も作る。定番の罠から下の階層に行くほどだんだんと嫌らしい罠にして、練習用とする。致命傷にはならないが、結構痛い罠にした。じゃないと誰も真剣にやらないものね。

 モンスターも頑張ってその辺で捕まえたり、魔法生物を召喚したりゴーレムを改良して、ダンジョンに設置。

 ご褒美のアイテムやゴールドも宝箱にちゃんと入れておく。


 引退したベテランの冒険者も雇って先生役として付けてやり、懇切丁寧な指導が好評を得て、各地から冒険者が集まってくるようになった。


 ダンジョンの手引き書も作り、各地のダンジョンの適正レベルやマップも公開。

 冒険者ギルドや神殿とも交渉し、パーティーメンバーの編成を推奨し、必ず一人は回復役(ヒーラー)を入れるようにした。

 薬草も品種改良を加えたモノを各地のダンジョンに植えたり、精製してポーションにしてやって安値で道具屋に卸し、いつでも高度な回復アイテムが手に入るようにした。

 品種改良の方法や精製や調合の方法は『薬草のすすめ』という本に記して各国に無料配布してやった。


 これにより、死亡率は大幅に下げることに成功した。



 だが、これだけでは足りない。

 もっと効率の良いレベルアップを考えなければ。



 この世界のレベルアップは、イベントクリアでも上がるようだが、やはりモンスター退治、経験値稼ぎが中心だ。


 その経験値が大量に入るモンスターを養殖できれば、大量レベルアップ間違い無しだ。ウハウハだ。

 レベルを上げた後でダンジョンを攻略すれば楽勝だし。


 俺はずーっと前からメタリックスライムの情報を集めていたのだが、残念ながらレアモンスターのようで目撃例もほとんど無い。生態も未だに謎だ。


 だが、アレは、ミスリルの鉱山にいたし、ミスリルを食ったスライムが突然変異したと考えられるんだよな。



 そこで俺はスライムを捕まえてきて、金属を食べさせ、実験してみた。


 鉄の粉末をスライムに摂取させると、色が変わり、どす黒いブラックスライムが出来上がった。

 元のスライムよりも防御力と攻撃力がぐっと上昇している。


 次にミスリルの粉末を摂取させたが、どうしてかメタリックスライムになってくれない。

 なぜだ…。

 仕方ないので、他のモノを色々試してみることにする。


 薬草を大量に食べさせると濃緑色のグリーンスライムとなり、HPが異様に上がり、自動回復のスキルも発生した。

 これは練習用モンスターとして最適だと思ったので、ダンジョンに放流しておく。


 トマトを食べさせると赤くなりレッドスライムとなった。性格が攻撃的になった。

 じゃ、他の赤いモノ、レッドペッパーが入った腕力ポーションを与えたらどうなるのかと試してみたら、攻撃力も上がった。


 これも練習用モンスターとしてダンジョン下層に放流しておく。


 青銅の粉末を食わせたら、ブルースライム。防御力が高め。

 黄銅を食わせたらイエロースライム。気まぐれな性格だった。

 レモンを食わせたらレモンスライム。爽やかな香りが漂うが、強酸を飛ばしてきて結構危なかった。

 オレンジを食わせたらオレンジスライム。レモンと同じ感じ。

 野葡萄を食わせたらパープルスライム。夜目が利くかとも思ったが、スライムには元々目が無いので意味が無いようだ。

 猫の実を食わせたらアップルスライム。芳醇な甘い香りで、ついつい食べたくなるが、いかんダメだ、コイツはスライムだ。危険だと判断したので俺はすぐにソレを処分した。

 ホワイトキノコは……止めておく。増えたら困るし。


 色々な色のスライム同士を合体させ、掛け合わせて新品種も作ってみた。

 三身合体とか、楽しー!



「ユーイチ、うわ、またスライムを作ってたの?」


「ああ、ティーナ、ちょうど良いところに。見てくれ。ついにゴールドスライムが出来たぞ!」


「ええ? 本当に金色ね…なんか気持ち悪い」


「えー? かなり苦労したんだぞ。普通に金粉を食べさせてもダメなんだ。別の鉱物と薬草を媒体にして――」


「それより、このスライムは何の役に立つの?」


「んっ? え?」


「んん? えぇ?」


 考えてなかった……。てか、なんで俺、ゴールドスライムをこんなに必死に作ってたんだろう?


「ちょっと…ユーイチ」


「ああ、そうだ、待て、思い出した。ミスリルからメタリックスライムを作るつもりだったんだ」


 俺は初心を思い出した。


「ああ、あの銀色のミスリルスライムね」


「……うん、まあ、そうとも言うが」


 ティーナは『メタリックスライム』の名称はお気に召さない様子。


「オリハルコンは試してみたの?」


 ティーナが言うが。


「えっ? おお、それはまだだったな。じゃ、さっそく」


 オリハルコンは貴重で武器の材料だと言う先入観があったね。

 虹色の鉱石はたくさん採れるので分量は気にする必要が無い。

 魔法で粉末に加工して摂取させてみたが―――。


「おお、虹色になったな」


「綺麗……」


 ブルブルと震えたオリハルコン・スライムは……逃げ出した!


「あっ! 捕まえろ」


「ええ? せいっ! あっ、速い!」


 うえ、しまったな、やたら強いスライムが誕生したようだ。

 慌てて俺は非常召集を掛け、城の全員でスライムを追っかけ回した。


「倒したニャー!」


 リムが倒してくれたが、高レベル冒険者用の練習モンスターには最適だ。

 経験値も百万ポイントという、べらぼーな量が入ると判明したので、俺はオリハルコン・スライムの大量生産に取り組んだ。


 もちろん、ただ単に増やしたのでは芸が無い。


 究極魔道具『求めの天秤』を使い、また新たな魔法文字(ルーン)も用いて、さらにさらに各地の禁書も閲覧収拾し、もっと大量の経験値が入るスライムの研究に没頭した。


「ふむふむ、こうすれば、デカくなるのか。キング・オリハルコン・スライムだな!」


 経験値はなんと一億ポイント。普通に十匹のオリハルコン・スライムを倒すよりも、合体させた方が断然お得だ。

 やたらHPが上がって強くなるが、レベル80以上の冒険者なら何とか倒せる。ちなみに今の俺のレベルは99になっている。

 これ以上は上がらないようで、この世界の総合レベルの最高は99だと判明した。


 だが、まだだ!

 まだ上を目指す。

 俺のレベルを上げるのはもう不可能だが、経験値を大量に持つモンスターは開発の余地がある。


 百億ポイントくらいのスライムを作って、レベル1の冒険者にラストキルを取らせて99レベルの勇者を一日で作ってやる!


 俺は何かに取り憑かれたように実験に没頭した。


 しかし、究極のスライムの開発は困難を極めた。

 それもそのはずだ。すでにありとあらゆる材料を試し、魔法文字(ルーン)も思いつく限りを試し、この世界の禁書も全て読みあさった。

 それでも届かない領域。


「ユーイチ、スライムの研究はその辺で構いません。すでに勇者の数は足りています」


 などと女神ミルスが言うが、彼女はあくまで確率的に未来を予知できるだけだ。

 絶対の未来は不可知なのである。


 現時点の戦力で邪神に勝てるかも知れないし、勝てないかも知れない。

 それは本当のところ、誰にも判らない。


 戦いも不確定要素が常につきまとう。それがクラウゼヴィッツの言うところの『戦場の霧』である。

 では、どうしたらいいか――


『算多キハ勝チ、算少ナキハ勝タズ。(シカ)ルヲ(イワン)ヤ算ナキニ()イテヤ』


「勝算が多いほど戦に勝ち、少ないと負ける。ましてや勝算が無ければ言うまでも無い」


 孫子のあの言葉。

 勝つか負けるかははっきりしないが、勝算が多い方が良いに決まっている。

 勝算を増やすには、準備が必要だ。

 邪神との決戦において、ラッキーな会心の一撃で勝ちを拾うこともあるかもしれない。

 だが、いざ本番でそれに頼らないと勝てない状況だと、戦略の準備不足だったと言わざるを得ない。


『戦略は戦術に(まさ)る』


 試験勉強を怠っていながら、テスト本番でどんなに気合いを入れても遅いのだ。

 サッカー部や野球部も強豪校は練習に練習を重ねる。

 ピアノだって一日で上達したりはしない。 

 ブラウザゲーのギルド戦も、普段のIN率が高いチームがランキング上位を占める。


 普段の積み重ねが大事なのは誰しも分かっていることなのだ。

 だが、面倒だから出来ない。他にやりたいこともあるから出来ない。

 

 世界は(よこしま)で甘美な誘惑に満ちており、人の意志は驚くほどに弱い。 


 つまり、戦略面において、すでに邪神との戦いは始まっていると言って良い。

 だからこそ、俺も真剣に意固地になる。


「まだだっ! まだ!」


「もう、女神様もいいって言ってるんでしょう?」


「ほっときなさい、ティーナ。どうせしばらくしたら飽きるんだから。それより、ダンジョンから逃げ出したキング・オリハルコン・スライムの退治に行くわよ」


「ううん…分かった」


 リサは飽きると言ったが、ここで諦めて堪るか。

 何せ俺には熟練度システムという頼れる味方が存在する。

 研究をやればやるほど、研究スキルレベルが上昇するのだ。


 そして俺はついに、無限の高エネルギーを媒体にして魔法陣で召喚すれば強力なモンスターが呼び出せることに気づいた。


「行けるッ! コレだ!」


 ありとあらゆる材料を触媒とし、ありとあらゆる術式を試し、ひたすら召喚レベルも上げていく。


「ユーイチさん、これ以上は危険だと思うのですが…」


「何を言う、クロ。ここで諦めたら試合終了だよ?」


「はあ。ですが、経験値が目的なんですよね?」


「ああ、その通りだ。究極の経験値ポイントを吐き出す最強の魔物を呼び出すんだ」


「最強…? ええと、それは危険では?」


「大丈夫。俺達のレベルなら余裕だっての。それに最強と言ってもスライムだから」


「はあ…ううん…」


 クロは渋っていたが、俺に従ってくれた。


 だが、どうしてもキング・オリハルコン・スライムを超えるモノが呼び出せない。

 一定以上の魔力量を投入すると、違う種のモンスターが出てきてしまい、スライムにならないのだ。

 別にスライムで無くても経験値は稼げるのだが、簡単に倒せるからこそ意義がある。



「くそっ! いったい、どうすれば良いんだッ!」


 万策尽きた俺は、それまで書き込んでいたメモ用紙をバッと投げ出して、椅子に座り込む。


 だが、何か、何か方法はあるはずだ。


 スライムを強くする方法。

 召喚では、条件を厳しくすると、スライムとは別種のモンスターが出てきてしまう。


 『アジ・ダカーハ』という邪竜の幼生が出てきたときには俺とクロでは対処しきれず、パーティーメンバーを非常召集する羽目になり、ティーナに結構怒られた。

 三つの頭のキング○ドラみたいなドラゴンで、闇色。

 分析(アナライズ)が一部だけ成功し、レベルと名前だけは把握できた。アナライザーさんも日々レベルアップしてるのだ。

 邪竜のレベルは120であり、人間が99でカンストしてしまうのに、なんだか不公平である。

 しかもソイツの身体を切ると、そこから蛇の分身が誕生するという面倒臭い奴だったが、いったん氷系最強呪文、絶対(アブソリュート)零度(ゼロ)を使い、氷を砕いた直後に禁呪アシッドクラウドを使い、最後にクレアの最強呪文『ホーリー・コメット』を食らわせたら余裕だった。

 『ホーリー・コメット』はトリスタンの大神殿が持つ秘伝の聖魔法だったが、ブンバルト大司祭とアイネちゃんを説得して開示させた。邪神の前には人類は協力し合わねばならないのだ。人類愛である。

 しかしアイネちゃんをお茶を誘ったが素っ気なく断られている。

 ……。


 『ファフニール』という巨竜が出てきたときにも天空の城の一部が壊れるという騒ぎになってしまったが、こちらは駆けつけたレーネが『大剣グラム』を使うとあっさり倒せた。

 正座させられてティーナに叱られたが、実験は今後、天空の城の外、安全な場所でやるという条件で続行を許してもらった。

 総人類計画に不可欠な実験である。経験値が大量に稼げるボーナスモンスターはRPGにおいて必須である。


 『ウロボロス』というレベル150のモンスターが出てきたときもちょっと焦ったが、そいつは自分のしっぽを飲み込んでいるだけの蛇で、すぐに俺とクロで倒せた。

 よく分からないモンスターだったが、経験値は美味しかった。俺のレベルはもう上がらないんだけども。


 『フェンリル』というオオカミのモンスターが出てきたときには俺は右腕を噛まれてしまった。重傷を負ったのだが、新開発の網を使ってその素早い動きを封じ、後は楽に勝てた。

 伝説にちなんで『グレイプニル・ネット』と名付けよう。俺の作った材料はオリハルコンとビッグシルクワームの合成糸なので伝説とは異なるんだけども。


 『ロキ』という悪魔が出てきたときは戦闘にはならず、交渉し金を渡して帰ってもらった。その際、彼は『ミョルニル』という小さめの槌を売ってくれた。その槌は高熱を発し赤くなっているので、そのままでは持てない。オリハルコンの糸で編んだ手袋が必要になるが、攻撃力はやたら高かった。ミミが欲しがったので彼女に使ってもらう事にする。ハンマーなので鍛冶にも使える優れものだ。


 レベル255の『ルシファー』という堕天使が出てきたときは、こりゃダメだと思って俺は必死にゴマをすり、この世界の神様にならないかと持ちかけた。が、彼は意外に謙虚で申し出を断って元世界に帰ってしまった。

 ティーナにバレなければ大丈夫と思ったが、女神ミルスにはバレバレで、彼女からお説教を食らってしまった。

 

「これ以上召喚を続けるのなら、もう回復はしませんよ」とHP回復を司る女神様に言われてしまっては、召喚術は諦めざるを得ない。


 だが、俺は別の方法を編み出した。

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