表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の闇軍師  作者: まさな
第十五章 大魔導師への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

265/287

第十八話 大神殿建築計画

2016/12/2 若干修正。

「そ、それで新作は」


 いくら神殿関係者とは言え、小太り男と二人きりって萎えるわー。一応、俺の護衛の兵士もちゃんとそこにいるけどね。

 男だらけって。今度ケインに女性の護衛兵士を回してもらうよう、頼んでおこう。うん、それがいい!


「オホン、オルタ殿、その前に、あなたは私に何か言うことがお有りになるのでは?」


「ん、んん? 新作?」


「いや、だから…私はあなたの異端審問の疑いを解くために、色々と手を打って差し上げたわけですが」


「あ、ああ、アレは助かりました。ありがとうございます。他にも、説法をした覚えも無いのに、信者も名乗り出てくれて…」


 例の踏み込まれたオークションの時間帯に偽のアリバイを作ってやり、異端審問会議の出席者に金を握らせて、オルタの失脚を阻止した。別にそこまでする必要もなかったのだが、盟友だからな。


「ええ、あなたにとって実に都合良く事が運んだ訳ですが、それもこれも盟友が助け合ったからです。分かりますね?」

 

「は、はい…」


「よろしい。では、今日は大神殿の話を少ししましょうか」


 事情を話す。


「ああ、それなら、トニーがいいかもしれません」


 オルタがすぐに思いついたように言った。


「んん? 有名な方なのですか?」


 俺は問うが。


「あ、いえ、若手で無名なのですが…彼の作る彫像は凄いですよ!」


 ううん、そっち系(・・・・)か…だが、オルタの彫像に対する熱意はちょっと尋常じゃないからな。手伝いの一人として候補に入れておいてもいいか。腕は確かなはずだ。


「じゃ、その作品を見せてもらいましょうか」


 俺も興味を覚えて言う。もちろん、あくまで大神殿の建築家候補を探すためだ。決して決して、オルタご推薦の美少女彫像が見たいわけでは無いのだ。


「ええ、では、王都へ向かいましょう」


 オルタが言う。


「ああ、王都。んー、いえ、やっぱり持って来て下さい」


 遠出は面倒臭い。


「はあ、分かりました。一番良いのはヨージスキー子爵家の据え置きの像なのですが」


 それだって遠いだろ。この世界じゃ電車も無いから、てくてく歩くか馬車でないと…。何日かかるやら。


「あ、そうか、飛空艇が有ったな」


 忘れていたが、アレなら楽だしスピードも出るし、そんなに時間は掛からないはず。


「飛空艇?」


 俺はさっそく飛空艇を少し改造して、飛空石を少し大きいモノと換装し、前方推進用の飛空石も搭載してさらにスピードが出るようにした。

 オルタと一緒に、ヨージスキー子爵の家に向かう。


「うわ、そ、空を飛んでいる…! コレ凄い凄い!」


 子供のようにはしゃぐオルタも、ふふ、まあ、初めて空を飛ぶ中世の人間はそんなもんだろうな。



「おお、これは、ミスターU!」


 家の玄関で出迎えたヨージスキー子爵に、俺は咳払いする。


「オホン、この場ではあくまでヒーラギ男爵ですので」


「おお、それは失敬。ささ、どうぞどうぞ、歓迎致しますぞ」


 同好の士だけに、突然の訪問でも歓迎してくれた。


「なるほど、大神殿の建築家ですか。ええ、確かにトニーの腕前は凄いモノがありますぞ」


 ヨージスキーもトニーを褒め称えるが、ま、自分の家の彫像をやってもらったんだしな。そりゃ褒めるだろう。


「是非、ご覧になって下さい」


「ええ、拝見させて頂きます」


 この家の奥の部屋にあると言うので、さっそく案内してもらった。


「むっ、こ、これは……!」


 あどけない少女が水浴びしている彫像。水しぶきが今にも飛んで来そうな彫刻に俺もビビる。

 しかもこの作者、チラリズムを分かっていやがる! それに少女の体をしたたる水滴がもうね!


「いかがですかな? この精緻な彫り込みと言い、完璧な曲線と言い、奥ゆかしさ(・・・・・)と言い、彼は一流と言っても良いくらいですぞ」


「ふうむ……オルタ殿、彼は今、どこに?」


「王都で街道の工事を手伝っています」


「街道の? 彫像か豪華な装飾でも付けるのかな?」


「いえ、彼は貧乏な平民なので、彫像の材料費や勉学の費用を稼ぐために仕事を何でもやっているんです」


「ああ。もったいないな」


 これほどの才能を、道路工事なんぞに使わせるなんて世界の損失と言ってもいい。 


「是非、彼のところへ」


「ええ、行きましょう」


 さっそく王都へ飛空艇で飛び、トニーを見つけた。まだ若い青年だ。


「ああ、司祭様。申し訳ないですが、この仕事が終わるまでは新作は出せないですよ」


 こちらを見るなりトニーはそう言ったが、オルタも足繁く通って急かしてるんだろうなぁ。


「いや、今日はヒーラギ男爵を紹介しようと思って来たんだ」


 オルタが言う。


「ああ、奴隷上がりの、おっと!」


「いや、事実なので気にしなくていいぞ。それより、トニー、君は神殿を建ててみたくはないか? それも世界一、ドでかいヤツを」


 俺が単刀直入に話を切り出す。貴族でも無い奴に駆け引きは不要だろう。


「神殿、ですか…それは、自由なモチーフでやらせてもらえるのでしょうか? 神殿となるとなかなか彫像は…」


 ヴァイネルンの大司祭が最近、表現の規制を強化しているから、トニーも気にしたようだ。


「いや、大丈夫だ。君が思うようにやってもらっても構わない。責任は俺、ヒーラギ男爵が全面的に持つ。君の身の安全も完全に保障するぞ」


「お、おお…や、やります! やらせて下さい!」


 決まりだな。

 トニーにも優れた建築家の名前を挙げさせ、彼らとも交渉する。統一感が微妙になるが、俺が生きてる間に作ってもらわないと意味ないからな。そこはスピードを重視して多人数で行くことにした。

 うちの専属大工ヴァネッサにも加わってもらった。彼女は石の彫像は手がけたことが無いそうだが、ま、良い経験になるだろうしな。仕切りや調整も上手いのでそこを期待している。


 一週間後、仕事を引き受けてくれた建築家達をセルン村の工房に集め、サンドイッチを配ってさっそく、設計図の話し合いに入る。

 中には高名で爵位まで持つ建築家もいるが、実務優先で、堅苦しい挨拶は一切無しだ。


「コンセプトは世界一の大神殿。そして自由奔放に、芸術的に」


 俺は皆を前にして言う。


「おお、世界一…だが、そんな資金が?」


「予算は三千万ゴールドを用意してあります。ただし、こちらにはゴーレムやストーンウォールの魔法など、使える武器がたくさん有ります。予算が足りないなら、工面も考えますので」


「ふむ、三千万か…少し足りない気もするが、ヴァイネルンの大神殿に迫るモノは作れる気がするな」


「やりましょう!」


「それで、大勢集めたようだが、誰が指揮を執るのかね?」


 爵位を持つ建築家が問う。


「そこは皆さんの話し合いで。各自、出来るだけ自由に作ってもらい、腕を競ってもらえればと考えております」


「だが、それでは建物の統一感がぐちゃぐちゃになるし、出来の悪い部分まで私の作品と扱われるのは容認できないぞ。少なくとも、無名の者はメンバーから外してもらいたい」


「まあ、そこは実際に作品を見てもらってですね…」


「ダメだダメだ。外さないというのであれば、私は参加しないぞ」


 うーん、やはり一流の建築家となるとプライドも高いし、扱いにくいな。それに、俺のコンセプトからも外れるか。


「分かりました。では、お引き取りを。ご足労頂いて申し訳ありませんでしたが、自宅までお送りします」


「なに? ふん、まあいい、勝手にしろ」


 ミオに頼んで、断った建築家を飛空艇で送ってもらい、残った建築家達であれやこれやと話し合う。


「屋根は、トリスティアーナの神殿の屋根を見習おう」


「いや、ハイランドの屋根も面白いぞ」


「ダメだ、あんな野暮ったいのはミッドランドにふさわしくない!」


「そうだ、装飾も全然ではないか」


 なかなかまとまらないが、専門家の忌憚の無い意見と、熱意の籠もった話し合いで、本人達も議論が楽しそうだ。

 そんな中、トニーは黙々と紙に鉛筆もどきで線を入れている。

 俺がそちらを覗いて見ると、神殿の屋根が細かく描かれていた。


「おお。皆さん、これを見て下さい」


 俺は皆に言う。


「ん? おお、これは!」


「なるほど、こう言う形があったか…!」


「いえ、トリスティアーナの神殿の良いところと、ハイランドの屋根の面白い部分を適当に組み合わせただけで」


 トニーは名だたる建築家達に囲まれて少し照れている。


「いや! コレで行くぞ! 反対する奴は帰らせろ!」

「そうだ。コレで行こう!」


 意外に、あっさりとまとまり、他もトニーが設計図のラフを描いて決まっていった。



 立地はクレアと俺で良さそうな場所を探し、何も無い平原にまずは足場として石畳を作る。


「おお! こ、これは!」


「信じられん、あっと言う間に」


 建築家達もストーンウォールの呪文を見たのは初めての様子で、驚きの声が次々と上がる。

 ま、彼らならコレの有用性も充分に理解しているだろう。


 設計図はメモリーの呪文を使い、建築家全員が3Dで把握できるようにした。

 それを同期させ、一人一人が設計図をつつくと、全員の設計図が自動的に書き換わる仕組みだ。拡大、縮小、回転、透過、マスキング、カラーリングも自由自在。

 これで統一感や全体像も掴みやすくなる。


「よし、ここはそれで行こう!」


 決まった部分からゴーレムが石の建材を運び込み、魔術チームが設計図に従い、ストーンウォールで大まかに変形させて組み上げて行く。

 さらにトニー達が金槌とのみ(・・)を使って石を削り出していく。


 壁画も画家達を各地から集めて工事と同時並行で描いていく。

 俺はそちらの様子も見に大神殿の中央広間に向かった。やってるやってる。


「ラウル、調子はどうだ?」


「はい、こんな感じでどうでしょうか?」


 足場の上で手を止めたラウルが、俺に聞いてくる。

 足場はストーンウォールでいくらでも高低差が調整できるので、画家も負担が少ないし安全性も確保できている。手すりも付けて落下事故は起こさせない。


「良いと思うぞ」


 俺も頷く。

 高い金を出して世界中から集めたカラフルな絵の具が、華麗な色合いを出してくれている。

 大神殿中央の広間の壁画はラウルに任せることにした。実力としては少し足りないかも知れないが、セルン大神殿の広間の画家という箔が付けば、俺もラウルも儲かるし。ヒヒ。

 ラウルをトリスティアーナ(イチ)の画家にしてやると、マリーと約束もしたからな。

 それに、ラウルは日々修行を怠らず、成長している。


「じゃ、安全第一で頼む」


 そう言い残して、後は皆に任せ、俺は別の事をやりに行く。



 邪神対策と領地対策だ。


 領地はまだもらっていないのだが、もらう前から準備していれば統治も楽になる。


 必要なのはまず、人である。


 優秀な人材が領地経営には不可欠だ。

 ティーナみたいにてんてこ舞いになるのは嫌だし。

 仕事は全部、部下にやらせる。俺の仕事は大まかな方針を出すことと彼らの監督だけだ。


 そのために俺は、冒険者ギルドに金を払ってクエストを出し、各地の優秀な人物や専門家を探している。

 ポイントは自薦ではなく他薦というところ。

 自分で売り込んでくる奴にろくなのはいないからな。


「ああ、ユーイチ様、ギルドからの手紙です」


 手紙を届けに来た冒険者だが、彼はこの仕事を専門にしたようで三回目の届けだな。

 伝書鳩も使ってはいるが、近場なら人の方が確実で早かったりもする。


「ご苦労さん」


 駄賃はクエストとしてギルドから受け取る仕組みなので、俺は代わりに受領証を彼に渡してやった。

 さっそく、工房で手紙を読む。


「ふむ、マーティーか。毎日(はかり)の上で暮らしてるって、また変わった奴がいるなあ」


 それアブナイ病気の人じゃないの? と思いながら報告書の続きを読んだが、彼は人間の食事の量と体重を厳密に調べているそうだ。

 こういうのが本物の学者なんだよな。

 誰かに言われてその研究に飛びつくのでは無く、自分で疑問や課題を見つけて黙々と取り組んでいく。


 採用!



「次、樽の中で犬みたいに暮らす奴か…うーん、役に立ちそうに無いな。不採用!」

 

 変わっていれば良いと言うもんでも無いし。



「次、ヴォルターか。実験で自分の家を爆発させちゃったかぁ。採用!」


 スゲえ危なそうだけど、コイツは何かやってくれそうな気がする。錬金術師の助手も欲しいし。



「次、マグス。ほう、薬草を集めまくってるのか…採用だな」


 目がとっても怖いそうだが、抜群の記憶力で歩く植物博士と来れば採用するしかない。  



「次、トーマス。色々、発明してるのか…採用だな」


 人体実験で失敗して問題を起こしているが、そこは禁止して他の事をやらせればいい。



「次、盲目の剣聖(ソードマスター)か。採用!」


 目が見えないのに剣士をやってる時点でタダもんじゃねえ。 



「次、画家で死体の解剖をやったり、自動糸巻き機を発明か、コイツ、スゲーな」


 なんか色々多才な奴。採用! 名前は…あれ? ピエールって大神殿の建築チームの中にいたような気がするな。ま、同姓同名の別人だろう。


 他にもギャンブル好きの医者やら色々いたが、詐欺師や犯罪者は不採用にしておく。

 嘘つきや犯罪者はいくら有能でも扱いにくいからな。

あとがき

ユーイチが集めている優秀な人材の一人は「サントーリオ・サントーリオ」という実在した中世の医師がモデルです。

wikiでググると絵にちょっとクスッと来たので採用しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ