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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十五章 大魔導師への道

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第六話 海底に行くには…?

2016/12/1 若干修正。

 第七の使徒、セイレーンは割とあっさりと倒した。

 村人達には事情をきちんと話し、もう敵は倒したので安心するように言い聞かせた。


「なんと、爺様の話が本当だったとは」

「あたしゃてっきり、寝ぼけてたんだと思ってたよ」


 驚いてはいるが、魔物はすでに倒しているので皆落ち着いたものだ。

 モンスターが当たり前にいる世界だしな。使徒はそうじゃないんだが、まあ、あえて不安を煽る必要も無いだろう。


「これで片付いたわね」


「そうだな」


 ティーナが言い、俺も頷く。


「みんな、おっはようニャー!」


 約一名、何も知らずに、しかも昨日はずっと最初から最後まで脳天気に寝ていたリム。


「ええ、ふふ、お早う」


「使徒を倒したぞ、リム」


「ニャ?」


 ま、コイツは三つ以上のルールなんて覚えきれるはずも無いからな。

 別の時に頑張ってもらうとしよう。


「じゃ、忘れ物の無いように」


 出発の準備を始め、ロフォールへ戻ろうとしていた俺達だったが。


『まだ使徒がここにいます。海底へ向かいなさい』


 などとミルスが神託を寄越すし。


「くっそ!」


「どうしたの、ユーイチ」


「まだ、ここの海底に使徒がいるんだってさ。そこへ向かえと言われた」


「ええ?」


「それ、むう、本当みたいね……でも、海底って、どうやって行くつもりなの?」


 リサが聞くのも当然だが。


「まあ、考えるさ。そこはな」


 俺はそう言って、その場にどかっと座り、策を練った。



 まず、海底に行くとして、素潜りは無理だ。

 アプネアと呼ばれる潜水競技での最高記録は200メートルを超えるらしいが、俺達は素人だから。

 俺は三メートルも潜れない気がする。


 無呼吸の世界記録は20分を超えるというが、これも素人には無理。

 一分も止められば良い方だし、歩いたり使徒相手の戦闘もこなさなきゃならないんだから、20分ではとても足りない。


 そして海底ともなると、その水圧が問題となる。

 海水の重さで10メートル深くなる(ごと)に一気圧が加算されていくので、一万メートル級の深海になると、現代の潜水艦でも潰れてしまうほどだ。


 日本が誇る有人探査船『しんかい6500』はその名の通り、6500メートルを限界とし、速度は2.7ノット(時速約5km)、9時間の運用が可能だ。

 全長9.7メートル、空中重量は26.7トン。

 キャビンを守る耐圧殻はチタン合金が使用され、73.5ミリの厚さが有り、約68MPaの水圧に耐えられる。

 また、耐圧を高めるため、ほぼ真球の形となっており、その誤差はなんと0.5ミリ以内である。


 世界でもトップクラスの深度を誇り、地震や海底資源の調査に使われている。


 一般の潜水艦との大きな違いは浮上方法にある。

 圧縮空気を用いたバラストタンクでは高圧すぎて排水が不可能なため、深海探査艇では固形の重りが用いられ、それをそのまま捨てて海上に浮上する。


 古代では大きな吊り鐘の中に人が入り、空気を送って潜ったと言うが、これも深い海底では圧力が問題となるし、海底がなだらかに降りているなら良いが、海溝のような垂直だと上からの吊り上げができないと移動が不可能になる。


「じゃあ、その『しんかい6500』ってのを作ってみたらどう?」


 ティーナがさらっと言ってくれるが。


「いや、無理。確かに俺の故郷の国のモノだけど、設計や組み立てとかはちゃんとした技術者がやってるし、俺にそんな技術や知識は無い。詳しいのはスペックだけだ」


「使えないわね。目を輝かせて嬉々としてうんちくを語るから、出来るのかと思ったら、ホントにこの男は…」


 リサが小馬鹿にしてくるが、いいじゃないか。こう言うモノは少年の憧れだものね!


「他に方法は、魔法はどうなん?」


 ミネアが聞いてくるが。俺はその方法はあまり採りたくないんだよな。もちろん、魔法はどのみち開発するつもりなんだけども。


「それもこれから魔法文字(ルーン)と術式を探すが、これだと魔法チームが戦闘不能になって魔法の効果が切れたときに問題が起きる」


 前衛チームと斥候チームは海底で魔法が切れたらそこで終わり。ジエンドだ。


「ああ…」


「ま、でも、どのみちその時は全滅ってことでしょ。アンタ達の魔法で良いわよ」


 リサが肝の据わったことを言うが、戦闘も必ず有ると分かっているので、もう少し慎重に行きたいところだ。


「決まりだな。何か手伝う事が出来たら、その時に言え。ティーナ、手合わせをやるぞ」


 レーネは話は終わったとばかりに立ち上がってティーナを剣の稽古に誘う。


「ああ、うん…」


 ティーナは何か手伝えないかと俺の方を気にして見やったが、俺は頷いて行かせることにした。

 時間は有効に使わないとな。


「じゃ、うちは何か使えるモノがないか、村人に聞いてみるな」


 ミネアも立ち上がって言う。


「ああ、頼んだ」


「私は海を見張ってることにするわ」


 リサも立ち上がって外へ出て行く。

 リムはもうどこかに出かけていて不在なので、残りはクレアも含めた魔法チームだけ。


「で、どうするのよ?」


 エリカが聞いてくるが、お前も少しは考えろと。


「じゃ、チーム分けするか。俺とミオは潜水艇の作成に取りかかる。残りは呪文開発を頼むぞ」


「分かった」

「「 分かりました 」」


「クレアは別のことをしてても良いぞ」


 回復系をメインとする司祭には深海に潜る魔法というのは荷が重い気がする。


「いえ、この村に神殿はありませんし、説法や相談はまた今度でもいいでしょうから」


「そう。じゃ、頼んだ」


「はい」


 エリカとクロが呪文を試し始めたので、ここでは気が散って設計は出来ない。


「ミオ、ちょっと別の家に行こう」


「ん、了解」


 別の家を借りてそこでアイスウォールで氷を出し、そよ風の呪文も使って、涼みながら考える。

 サザ村の人達は、リムの冒険仲間でもあり、子爵でもあり、おまけに村を襲ってきたセイレーンを退治したとあって、俺達には二つ返事で全面協力してくれている。邪魔も入らない。

 何か頼めば、材料もすぐに用意してくれるだろう。


「じゃ、まずはストーンウォールかなぁ」


「ん。ただ、水圧に耐えられるかどうか、疑問がある。よほど固い石を見つけないと」


「うん。出来れば鉄が、ああ、そう言えば、鉄は出せるようになったんだ」


 無詠唱で鉄球をその場に出す。アクアと遊んでる時…じゃなかった、金山を探す過程で見つけた呪文だ。他の魔術部部員にも教えてある。部員はもちろん、クロ、ミオ、エリカだ。


「ん、後はコレの加工」


「まずは形状か…まあ、真球だろうな。十人乗りとなると、結構、大きめに作る必要があるが」


「ん、でも、大きくすると、耐圧が難しくなる」


「うん。お前、本当に賢いな」


「伊達に鋼の賢者の弟子はやってない。それに、闇のお師匠には負ける」


 ミオの言う闇の師匠とは俺のことだな。


「いやいや。じゃ、居住スペースは何とか寝泊まり出来る最低限の大きさ、三方を三段ベッドにして、真ん中は折りたたみ式なら、直径は四メートルも有ればいいか」


「ん、妥当」


 記憶(メモリー)の呪文も使って、精巧な設計図を、ああでも無い、こうでも無いとミオと話し合って決めていく。


「じゃ、居住スペースはこんな感じで良いかな。あとは動力部と武器だが」


「ん、電気モーターは?」


「却下。ゴーレム駆動だと、重さとスペースが無駄になる。バッテリーも開発できれば良いんだが…アレは実用レベルだと難しそうだ」


「ん。じゃ、無難に魔法で」


「そうなるよなあ。手動じゃ疲れるし。まあ、非常用で手動もくっつけておくが」


「あまり機構を複雑にすると、耐圧性が落ちる」


「まあ、そうなんだが、非常時に動けないってのはまずいぞ?」


「ん、理解」


 次に武器。


「まずは当然、魚雷だな」


「ん、魚雷は定番、外せない」


 ミオも勢いよくコクコクと頷くが、お前は魚雷なんて絶対知らねえだろと。

 中世に魚雷を撃てる潜水艦があるなんて聞いたことねえよ。


 説明しておく。


「魚雷ってのは、水中の爆弾に推進装置を付けたモノだ。アルカディアで大砲を作ってもらったから、ミオはもう、火薬の扱いは慣れただろ?」


「ん、バッチリ。…と言いたいけど、アレはムズい」


「だろうな。ま、取扱厳重注意で。余裕で危険物だし」


「ん」


 爆弾は止めにして、銛とかにした方がいいのかもしれない。ま、それは複数の装備ということで。


「バネの力で発射できる銛があれば良いと思うんだが」


 銛と言うことで、発射方法を考えたが、圧縮空気かバネか、どっちかだろう。


「ん、グッドアイディア。それにエリカの電撃を当てれば、さらに良い感じ」


「ふむ。電気ウナギとか、いるもんなあ。採用!」


「ん」


「他に何か無いかな……おっ! そうだ、どうせなら、ゴーレムを引き連れて行くか。あいつらなら、海の底でも息しなくてもへっちゃらだろうし、この際だ、ストーンゴーレムやアイアンゴーレムを作ってしまおうぜ」


「おお…天才」


「そこまででもないだろう。ハーハッハッハッ!」


 アイアンゴーレム辺りだと、浮きを付けないと移動も出来ないと思うが、主砲の目処は付いた。


 ミオにはゴーレムを担当してもらうことにした。アイアンゴーレムやストーンゴーレムの開発が上手く行かなくても、フツーの粘土のゴーレムに樹脂か何かを染みこませて海中で溶けないようにすれば良い。腕の一部にカバーを付けて、『なんちゃってストーンゴーレム』や『なんちゃってアイアンゴーレム』はすでに開発済みだ。


 俺の方は、潜水艇の作成に取りかかる。


「なんだべ、あの黒いのは」

「さあ?」


 野外の砂浜で作っているので、村人達も気になった様子。


「おい、アレって、鉄じゃないのか?」


「なに? そんなもん、ど、どうやって…」


 フフフ。自分、錬金術師(アルケミスト)ですから。

 ファサッ、シュバッ、ババッ! キュピーン!

 …決まった!


「キモ」


「くっ」


 金髪のネコミミがボソッと言って立ち去るが、さて、真面目にやるかな。


「我は求む。固き光沢の塊を。()は、曲がるものなり!」


 鉄を出す基本の呪文を詠唱して使い、ここから考えていく。

 ま、鉄が自由に出せるんだから、もうアイアンウォールの呪文は目前だ。

 あとはコレの形を出した後で(・・・・・)変える魔法文字(ルーン)を探し出せば良い。今までの術式や魔法文字(ルーン)の蓄積もあるから、そう苦労はしないはずだ。

 

「我は求む。固き光沢の塊を。()は、常に曲がるものなり!」


 俺の姿をした鉄を出してみた。鉄の像だ。


「おお、柔らかい柔らかい、面白いな、コレ」


 腕を掴んでぐにっとしてみると、ぐにゃりと曲がる。鉛よりもさらに柔らかい感じだ。


「…あ、ダメだ」


 ついつい、遊んでポーズを色々取らせてしまったが、こうも柔らかいと、鉄の利点が全くない。

 少なくとも、コレで潜水艇を作ろうモノなら、十メートルも行かないうちに潰れてお終いだ。


「我は求む。固き光沢の塊を。()は、固くて曲がるものなり」


 不発。

 ……と言うか、毎回鉄の塊を新規で出す必要は無いんだよな。そこにある鉄を変形させれば良いだけで。

 危ねえ…ここにはアクアがいないから、出しまくったら、片付けに困るところだった。

 早めに気づいて良かったわー。


「固き光沢の塊よ、()は、変幻自在の不動なり! アイアンウォール!」


 不発。しかし、それっぽいね。俺の勘は惜しいと出た。


「固き光沢の塊よ、()は、変幻自在にして不動なり! アイアンウォール!」


 発動!


「うしっ! 魔法チーム、集合~!」


 魔法チームを集め、今し方発見したアイアンウォールの魔法文字(ルーン)を実演して教えておく。


「さすがお師匠。お師匠ならやれると思ってた」


 ミオは頷くが、お前の後ろで動いてるの、ストーンゴーレムだろう。開発するの早いな。


「凄いです! ユーイチさんは、希代の大魔導師ですね!」


 クロがキラキラした目で褒めてくれるが、うーん、いいね、大魔導師って響きがさ。

 宮廷魔術師の座、俺が頂いちゃおうかしらん? フヒヒ。


「くっ、人族にまたしても先を越されるなんて……まぁ、ユーイチとミオなら、仕方ないか…」


 悔しがってはいるが、慣れて耐性が出来たのか、そこまででも無いエリカ。



 再び、潜水艇の作成に戻る。

 外殻は万一に備えて二重構造とする。

 外殻部分はアイアンウォールで簡単に作れたが、このままだと船内から外が覗けない。

 外の様子が見えないのは安全上から考えても酷く都合が悪い。


 なので、ガラス窓を作ることにする。


 分析(アナライズ)と魔道具『求めの天秤』を使い、透明ガラスに適した石を集め、それをフレアの呪文で溶かし、ストーンウォールの呪文で整形する。

 ガラス製品もストーンウォールで行けると分かったのは大きな発見だ。

 窓ガラスは十センチの厚みを持たせ、魔法で強化しておく。永続型の強化呪文(エンハンス)として、増強(リーンフォース)の呪文も新たに開発した。

 モノによって強化できる度合いが違うようだが、外殻や俺達の装備も含め、掛けられるモノは片っ端から全て強化しておく。

 また、ガラスを外殻の鉄の層の間に挟み込んで絶縁体のバリアにしておく。

 絶縁効果については実際に電撃(ライトニング)の呪文で確認した。

 ガラスは電気を通さない。


 外殻部分を作り上げ、毛布や食料を積み込んで完成。


 推力は魔法に頼ることにした。

 超高水圧の水中で動く電気モーターはちょっと無理。俺には作れない気がする。

 高性能バッテリーも無いし。


「コイツの名前はUボートだ。異論があれば聞く」


 ユーイチ製作の潜水艇だからな。他意は無い。


「別に好きにすれば?」

「ユーイチさんの船ですね!」

「ん、問題無い」


「じゃ、さっそく、テストだな」


 試運転もせずに作ってすぐに潜るとかあり得んわ!

 最低でも安全性の確認に一年は掛けないと。

 三年間はテストをやるつもりだ。

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