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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十四章 貴族でおじゃる

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第二十話 ヒーラギ騎士団の方針

2017/8/2 若干修正。

 ヒーラギ騎士団の兵士達を前にして、俺は皆に説明する。


「オホン、当騎士団では、五十歳を定年とし、それを超えても働きたい方は一年ごとの延長契約とします。

 退団する場合には、退団金を与えます。この退団金は勤続年数が長ければ長いほど多くなります。

 また、退団後も、金額は落ちますが恩給を毎月与えます。

 病気や怪我になった場合でも、休みと給金を生活できる分は毎月与えます。

 年々、基本給はわずかながらですがアップします」


 終身雇用と年功序列だ。

 敗戦国日本が先進経済大国へと躍進した原動力の一つである。

 将来の収入の不安が無いので安心して消費が出来て、企業への忠誠心も篤い。


 孫子曰く

『卒ヲ()ルコト嬰児(エイジ)(ゴト)シ、(ユエ)ニ コレト深谿(シンケイ)(オモ)ムクベシ。

 卒ヲ()ルコト愛子(ゴト)シ、(ユエ)ニ コレト死スベシ』


「兵士は赤ん坊や我が子と同じように可愛がってこそ、生死を共にしてくれるようになる」



 そしてこれを軍隊に当てはめると言うことは常備軍を創設する事に他ならない。

 農民の徴兵では、農繁期に支障が出る。

 日々、訓練をやることにより、練度も高い精鋭部隊となるのだ。


 また、一時的な兵士の増員が必要なときは、冒険者ギルドを通じて募集することとした。

 早い話が傭兵だ。

 ごろつき…オホン、冒険者を雇って規律を叩き込めば、治安も不思議と良くなっちゃうね! やったね!



「んん? いつでもお金がもらえるのはありがたいですが、それだと兵士も怠けるのでは?」


 下級騎士の一人が疑問を述べるが、さすが幹部候補生、頭が回るな。


 

「それについては心配要りません。

 活躍に応じて月給が少しは変動します。

 さらに半年ごとに最も活躍のあったMVPの人にはボーナスを与えます。

 ランキングを定期的に公表し、見所のある人は出世が早くなります」



 成果主義もある程度は取り入れる。

 大事な点はノルマでは無く、プラスで積み上げる肯定的評価という点だ。

 怠け者でも最低限の仕事をやれば、最低限の給料を与える。

 最低の質の兵士で勝てる作戦を立てるのが参謀や将(トップリーダー)の役割であり、組織の戦略なのだ。

 全員で無理してノルマを達成したとしても、いずれは疲労して破綻する。



「よし、では、騎士団の待遇について理解してもらったところで、お館様直々にご指導頂く訓練に入るぞ」


 ケインが言う。


「おお、お館様が?」


「魔術を教えてもらえるのだろうか?」


 フフフ。期待してる、期待してる。


「では、諸君、コレとコレを見ろ。こちらはアロエ草、こちらはヨモギ草だ。ま、見た事くらいはあるよな?」


 街の一般人でもよく使う薬草。

 兵士達が頷く。


「今から、この薬草を集めてもらう。短時間でいかに多く集められるか、それがポイントだ。最も多く集めた者には、銀貨一枚をくれてやろう」


「おお!」


 やる気になってくれたようで何より。


「では、始め!」


 ケインが号令を出し、わっと兵士達が野に散らばる。


「いいか、探すときは、必ずそこにあると信じて探せ! ほら、お前、すぐ目の前にあるぞ」


「え? え?」


 フフフ。熟練度が低い内はなかなか見つけられないからな。


「いえ、無いと思いますが……」


「これでも、か?」


 スッと手に取って見せてやった。


「なっ!」

「おお、凄い、いったいどこから」


 ふふーん。


「日々、練習を重ねていけば、必ず上達する。お前達も俺と同じレベルにきっとなれるから、精進するように」


「ははっ!」


 うん、良い訓示になったね。

 


「あの、いっスか?」


 薬草を一つだけ集めた兵士が俺に聞いてくる。


「うん? なんだ、言ってみろ」


 どうもやる気の無さそうな奴だが、最低限のことはやっているから、叱るほどでも無い。


「これ、何の意味があるんスかね?」


 ふむ、訓練に疑問を持ったか。ま、普通の軍隊じゃ、まずやらないからな。


「薬草集めの方法を学び、怪我を自分で治せるようにするためだ」

 

 俺は答える。

 最終的には、総員衛生兵制度(オールヒーラー)を目的としている。

 衛生兵は止血や治療、後方への怪我人の運搬が主な任務であるが、激戦となるとその数が圧倒的に不足する。

 治療が間に合わなくなり、戦力が落ち、さらにダメージを受ける悪循環だ。

 衛生兵が真っ先にやられてしまえば、回復が出来ないという事態も起こり得る。


 それに対して、全員が回復役(ヒーラー)であれば、どうなるか。

 傷ついた回復役(ヒーラー)を別の回復役(ヒーラー)が回復し、ダメージに極めて強靱な軍隊が誕生する。

 負傷兵は、搬送や治療の手間を必要とするために、必ず、一人以上の戦線離脱を連鎖的に発生させ、戦力低下をもたらす。

 地雷などで足を失った子供達の話がよくあるが、アレは、わざと生かさず殺さずで敵戦力の低下を狙っていると思われる。

 建前上は敵の進軍を止めたり、戦車を防ぐ為だ、なんて言うけどね。


 『長く戦える兵士は、より多くの敵兵を倒す』by ユーイチ

 『 「衛生兵ッ! 衛生兵はどこだッ!」と必死に叫ばぬ軍隊は強い』by ユーイチ



「ふーん。でも、薬草は道具屋から買っておけば足りるんじゃないっスかね?」


「戦場に道具屋は無いぞ。それに、売り切れる時だってある」


「それは戦場に行く前に買っておけばいいし、常備品(ストック)があれば売り切れても関係ないんじゃないですかねぇ?」


「ムムム…」


 確かにそうかも。アレ?

 この訓練はひょっとして無駄なのか?


「おい! マシュー、屁理屈ばかりこねてるんじゃ無い。お館様がせっかく忙しい中、実技指導をして下さってるんだぞ」


 別の兵士が叱る。


「いや、忙しいなら、そっちの仕事をやられてた方がいいんじゃないっスかね? はは」


「貴様!」


 兵士が怒ってマシューの胸ぐらを掴む。うお、力あるなあ。片手で鎧ごと掴んで持ち上げやがった。

 だが、マシューはうんざりしたような顔はしたが、アレでビビッてはいない様子。

 不敵な感じだな。


「おい、よせ。マシューも態度が悪いぞ」


 他の兵士が仲裁に入るが、ちょっと浮いた感じの兵士だよな。ニヒルというかなんと言うか。


「そのくらいにして、訓練を続けろ」


 ケインが指示して、収拾が付いた。



「よし、よくやった!」


 三十分後、薬草を22枚集めた兵士が優勝。約束通り、銀貨をくれてやる。

 ま、この短時間で22枚も集めたなら大したもんだ。最初の頃は俺も一日がかりで30枚とか、そんなレベルだったし。

 俺も兵士に混ざってのんびり集めたが、410枚を集めている。真のチャンピオンは俺だ。まぁ、あまりレベルの違いを見せつけてやってもやる気を失いかねないので、黙っているけど。フフン。

 スキルレベルも『採取 Lv240』で、三桁突入だ。


 他にも『薬草発見確率50%UP』『薬草品質確率30%UP』『薬草の勘』『採取疲労低減』『薬草引き寄せ』『植物博士』『薬草収納術』『綺麗に抜ける(薬草)』『両手取り(採取)』『恋人は薬草』『薬草の鬼』『高速採取』『薬草仙人』『薬草早食い王』『居合い抜き(薬草)』『うっちゃり(薬草)』『背負い投げ(薬草)』『三角絞め(薬草)』『ゴッドハンド(薬草)』『次元抜き(薬草)』『光速採取』『シード覚醒』など、大量に薬草スキルを手に入れている。


 ちょっと…集めすぎた気もするが。


 だが、ここで天狗になっていてはダメだ。

 上には上がいる。

 凄いと俺が思っている事は、実は大した事では無いんだ。

 例えばネトゲの猛者たちは、やれるデイリーミッションは全て消化し、上げられる能力値はすべてMAXにするのがフツー(・・・)だ。

 今こうしている間にも、薬草の猛者が寝る暇を惜しんで薬草を集めまくっているかもしれない。

 俺だって負けてはいられない。

 スキルレベル 999のマックスを目指して、俺は必ず薬草界の頂点に立つ!


 そしていつか薬草コンテストで優勝するんだ。

 コンテストの開催も情報も、未だに耳にしたことは無いが……。


 うん、俺も領主になったら、領地で毎年開催してやろう。もちろん、俺も参加者の側でだけど。

 別に良いよね?


 マシューが俺を凄い胡散臭そうな目で睨んでたが、気にすまい。



「じゃ、次の訓練に移るぞ!」


 ケインが言う。


「はっ!」


「では、お館様、どうぞ」


「うむ。次の訓練は、機動力を高める訓練を行う。この目的は、少数の兵士でも、多数の敵と戦えるようにするのが目的だ」


 広島カ○プが掲げる伝統の機動力野球。

 予算の少ない球団はどうしても大型選手が少なく、攻撃力に迫力が欠ける。

 だが、ポテンヒットでも、盗塁で二塁に進めば、それは二塁打の長打を打ったのと同じである。

 エラーやフォアボールで出塁し、盗塁と送りバントで三塁に走者を進め、犠牲フライで一点を取れば、ノーヒットでの得点も可能。


『火力不足を機動力でカバーする』わけだ。


 機動力とは、何か?

 戦術レベルにおいては、回避率のUPや、攻撃の速さである。

 戦略レベルにおいては、現在地点から目的地点までの行軍の速さになる。


 また、少数部隊は、大軍よりも、小回りが利く。


 ベルサイユ条約で巨額の賠償金を背負い軍備も制限されていたドイツが打って出るために求め出した答え。


 それは『電撃戦』という新しい戦闘教義(ドクトリン)であり、機甲部隊と航空支援を用い、敵をスピードで圧倒するというものであった。


 敵の火力をこちらに集中させず、味方の火力を敵に集中させる。

 常に有利な場面を作り出し、主導権を握る。


 その方が戦闘力が高くなる―――ランチェスターの集中の法則だ。(第十二章 第十五話『オペレーションズ・リサーチに基づく、ハイランド行き意思決定』で説明)


 武装が同じなら、攻撃の集中、部隊の集中が重要になる。

 そして大軍相手に部隊集中の優位を保つためには奇襲や機動力で相手を上回るしか無いのだ。

 クラウゼヴィッツは機動力により包囲作戦で敵の退路も断てると主張した。 


 実際の戦場においては、天候、地形、指揮官の調子や能力、兵員の調子や能力、装備の状況、運など、様々な要因が重なるので、机上の単純な計算通りに行かないのは当然の事だが、より有利に戦うには、やはり機動力なのだ。



「…と言うわけだ。理解出来たか?」


「………」


 むう、ランチェスターの法則はともかく、機動力野球は分かるだろ? え? ダメ?


「お館様は、スピードが大事だと説いておられる。理解したな?」


「はいっ!」


 ケインが一言でまとめてしまったが、まあいい。

 習うより慣れろ、実際の戦術を覚えてもらった方が早い。




「フハハハ! さあ、どうした小童(こわっぱ)共! それでこの私に追いついたつもりか?」


 俺は杖を持って兵士達全員と、鬼ごっこしながらの手合わせ。

 無論、レベル70台の俺が全力を出したらとても手合わせにならないので、手加減はしている。


「くっ! 全然追いつかん!」


「なんだあの速さは」


「アレで魔術士だと…?!」


 早くも愕然とし、肩で息をし始めた兵士達。


「いいか、もう少し頭を使え。連携して包囲するくらい、やっても良いんだぞ?」


「む、そうか、よしっ、囲めっ!」


「フハハハ! それで包囲したつもりか、そこに穴があるぞ、ほれっ!」


「あっ! 逃げられた、くそっ」


「フハハハ! フハ――ぐおっ!? いって!」


 足になんか引っかかった。高速移動が災いして思い切り転ぶ俺。あと、油断してたなぁ。


「今だっ!」


「ぐえっ!」


 ショートショードを容赦無く振るわれ、一撃を食らってしまった。

 ひんひん、痛いん……モグモグ。


「やった!」

「化け物を倒したぞ!」

「よくやった! マシュー!」

「やるなぁ」


 兵士達がマシューを讃える。ま、運も実力の内だからな。ここは褒めてやらないと。


「よくやった、マシュー」


「どうも。でも、スピードより、罠の方が使えるみたいっスね」


「む? ああ、お前が仕掛けた草罠(トラップ)か…」


 地面をよく見ると、草と草を結んで、足を引っかける罠があちこちに。


「おい、それは卑怯だぞ。この訓練は―――」


 ケインが言うが。俺は彼を手で制して止めた。


「いや、知恵を使ってあっぱれである。戦場では柔軟な発想も求められる。勝つためにはどうするか、自分の頭でも考えるように」


「「 はっ 」」


「じゃ、ケイン、後は任せた」


「了解です」


「「「 ありがとうございましたっ! 」」」


 うん、いいね、ちゃんと礼儀が出来る集団だ。


 よし、次は空軍を作るか。

wikiで以下を参考にしました。

『機動戦』

『ランチェスターの法則』

『内線および外線作戦』

『マラトンの戦い』

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