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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十四章 貴族でおじゃる

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第十九話 軍備増強

2016/12/1 若干修正。

 『少数の軍隊を強くするにはどうすべきか?』


 この課題に俺はまず、装備を充実させることを思いついた。

 大軍を用意したくても、人口と糧食の関係で、兵を募るのも、それを運用するのも難しいからな。

 人数をただただ増やしても訓練しないと烏合の衆だろうし、ごろつき集団になってもらっても困るから。


 中世の装備と言えば、やはり武田信玄の『赤備え』であろう。

 真っ赤な鎧はとにかく目立つ。

 武田家では精鋭部隊がこの鎧を着たというが、武田信玄亡き後も、大坂夏の陣において、家臣 真田幸村が徳川家康 本陣に少数で斬り込み、あと一歩のところまで追い詰めた話も有名だ。

 重要文化財に指定されている『大坂夏の陣図屏風(じんずびょうぶ)』にも真田部隊の赤備えが描かれている。


 これで敵味方の識別が容易になるから、思い切った攻撃や魔法支援も可能になる。ただ、敵もこちらを識別しやすいので、単純に有利になるかどうかは別だ。

 制服には、仲間意識を高め、職務に対してその気分にさせたり、心理的な効果があると言われるが、それも狙っている。

 『赤備え』がこちらの世界でも精鋭だと評判となればいいな。


 本当は黒色が良かったのだが、トレイダー帝国兵の鎧が基本黒色みたいなので、それは避けることにした。

 ミッドランド人はトレイダー帝国は嫌いだし。ま、度々戦争をして、街を焼き払われたりすれば当然だろう。


 鉱物から採れる塗料を鎧に塗って温度を上げてやるとしっかりと固着するので、それを用いた。

 鎧のタイプは転んでも自力で起き上がれる軽鎧だ。機動力を重視し、これで統一する。

 


 次に、旗。

 これも敵と味方の識別や、隊列を作る時に役立つのだが、やはり、味方の旗があちこちではためいていれば士気が上がる。

 それに、ヒーラギ男爵の軍は立派だと思わせるには、こういう飾りモノが有効だろう。

 絹仕立てはさすがに贅沢すぎるし、すぐボロボロになりそうなので、丈夫な木綿で作った。

 染料はルビア草という草の根を煮ると綺麗な緋色が採れるのでそれを用いた。なぜかあの虫好きのファーベル侯爵がその方法を本に記していて、幅広く活躍する研究者のようだ。


 図柄は遠くからでも識別可能なように、紋章のそれよりシンプルに簡略化した物を使う。俺のは四つ葉、ティーナのは白竜の頭だ。


 旗は大中小のサイズを用意し、大は三メートル×二メートル。さすがにこれだけの大きさとなると、棒を竹や木製にしても五キロを超えてしまう。

 さらに風が吹くと支えるのにかなりの力が必要になり、とても片手で持てるような物ではない。

 隊でも一番の力持ちにその名誉を与え、旗を持たせることとした。


 大旗持ちの兵には専属の護衛兵を二人付ける。旗が簡単に奪われたりしたら、何のための物なのか分からんし。

 小さいサイズの旗は、鎧の背中の部分に棒を差し込めるようにして、縦長のミニ(のぼり)とし、両手に武器も持てるようにした。



 次に、武器。

 扱いやすいショートソードを基本とし、後は個人のお好みで。

 予備としてサバイバルナイフ。

 日本では規制されている長さの35センチ、刃にギザギザが付いてるヤツだ。

 これは殺傷力を高めるという意味もあるのだが、俺の軍隊ではサバイバルや工作用に、木を切るためのノコギリの意味合いが強い。

 こちらの世界の騎士もナイフは普通に持っていて、転ばせたフルプレートの敵の鎧の間を狙うときはそれを使うそうだ。ギザギザは付いてないけど。

 現代では柄の裏にコンパスが付いていたり、柄の中空部分に薬など収納できるタイプもあるが、全員分は製造が面倒で難しいので、隊長クラスにコンパス付きサバイバルナイフを支給する予定。


 槍隊の武器は長槍で統一。

 対騎馬隊で威力を発揮する部隊だ。


 織田信長が採用した長槍隊の槍の長さは三間半に及ぶと言われ、なんと6.4メートルもある。

 長えよ!

 ここまで長いと、もう振り回すのは無理で、持って前に突っ込むか、地面に支えて斜めに持って待ち構えるかのどちらかしかない。

 実際に作ってみたが、たゆんたゆんで、自然にたわむ。ヤジロベーみたいな感じだ。


 槍で両手が塞がっているので、横から敵に斬りかかられたら、もう対処不可能。凄く脆い。

 折れたりもするので、腰にはやはりショートソードを予備で持たせた。


 だが、実際に騎兵として槍隊と対峙したことが有る俺には分かる。

 槍隊が槍をこちらに向けて待っているだけでも、騎兵にとっては脅威。

 一本や二本なら簡単に避けたり弾いたりできるが、密集して何本も前に突き出されていると、なかなか突っ込めるものではない。



 織田信長の凄みは、これを雑兵に持たせたことにある。



 腕っ節の弱い新兵が、熟練(ベテラン)の騎兵を相手に互角に戦えるようになるのだ。

 戦力の飛躍的な向上に繋がるのは言うまでも無い。

 常識破りのあの発想は、好奇心旺盛な新しいモノ好きの性格と、物事の目的を見極めて、要らない物はバッサリ切り捨てられる非情さが兼ね備わっていたからだろう。

 

 槍隊にもショートソードだけの護衛兵を左右と後ろに配置して付けた。ま、槍隊を護衛部隊無しの単独で運用することは、まず無いと思うけど。

 横や後ろからの攻撃には弱いので、とにかく包囲されないようにしないとな。


 あと、弓隊。

 離れた敵を間接攻撃できると言うのは軍事において非常に意味が大きい。

 ショートソードの部隊同士がぶつかれば、勝利したとしても、反撃を受けて自軍の損害がほぼ確実に発生する。

 ところが、間接攻撃は、敵の射程外(アウトレンジ)であれば、ノーダメで相手を倒せてしまう。

 損害(ダメージ)が少なければ、攻撃力も落ちず、長く戦える。

 長く戦えると言うことは、それだけ敵を多く倒せると言うことでもある。


 弓隊の上位版である鉄砲隊は、やめておく。だって、火薬って危ないものね。

 現代の銃ですら暴発事故で何人も死んでるんだから、俺が設計して、素人の指導で編成した鉄砲隊だと、事故で死人が出るのはほぼ確実だ。 

 情報が敵に漏れて、相手が鉄砲隊を持ち始めたらと思うと、それもねぇ?


 鉄砲は雑兵でも簡単に敵を倒せるが、それは数を多く揃えた方が勝ちという競争になる。

 結局、それは国民皆兵制へと繋がっていく。徴兵や総力戦で国力を大きく削ぎ、人類の生産力や幸福を落とす発明は遅ければ遅いほど良いのだ。


 ……などとちょっと格好付けて言ってみたが、本当は撃鉄と薬莢の仕組みがよく分からないので、作れないんだ。うん。

 火縄銃ならストーンウォールの筒で行けるかな……。


 大砲は攻城兵器としても役立つし、もうミオが作っちゃったから、改良を加えて運用するつもりだ。

 この世界では魔法使いがいるので、さほど敵をビビらせられないが、それでもドゥン!と大きな音を出して鉄や石の塊を飛ばす武器があれば、俺みたいな臆病者は戦意が落ちる。

 敵が大砲を持ってたら、俺なら逃げるね。当たったら即死だもん。


 投石機(カタパルト)は、ラインシュバルト侯爵が所有している物を十基ほど譲り受けた。

 ノビール草という(ツタ)()り合わせた物を使い、その驚きの伸縮力で石を飛ばす。

 車輪が付いており、移動も可能。

 だが、トロいし、火矢に弱いので、運用には注意が必要だ。

 現地で木を切って組み上げるやり方もあるのでそちらの方が良いかもしれない。


 そしてゴーレム投石部隊。

 ―――なんてのも作れるかも、と思って試してみたが、ゴーレムのスピードの遅さで石が飛ばなかった……。



 干し野葡萄を常備させ、その夜目が利く効能で暗視装置とする。

 敵の視界が確保出来ない時に襲撃を掛けられるアドバンテージは大きい。

 フラッシュやダークネスの呪文と同等の威力を発揮してくれることだろう。


 また現代のC4Iシステムを参考に、メモリーとマッパーの呪文を組み合わせ、リアルタイムで味方兵士の座標をカラー表示し、それを兵士達もウインドウで確認できる呪文を開発した。

 ちょうど空の鷲の視点で地上が俯瞰(ふかん)的に把握出来るので、イーグルアイと名付けることにする。

 C4Iとは軍の情報システムのことで、"Command Control Communication Computer Intelligence system"の略である。


 Command(指揮)

 Control (統制)

 Communication(通信)

 Computer (コンピューター)

 Intelligence(情報)


 四つのCの頭文字にIを加えたものだ。

 古来より伝令兵や法螺貝などで指揮と統制は行われていたが、無線通信の発達と半導体の登場により情報処理は高度に自動化され、より複雑な機構となっていく。

 しかし情報を的確に握る側が勝利する方向性は常に不変である。



 階級とは別に、敵将や敵兵の撃破数に応じて鎧に星マークをマーキングしてやり、作戦に特に功績が有った者に対しては、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、クリスタル、フェニックスと、称号を与える。

 表彰制度だ。キルマークと撃墜王だ。

 お金以外にもモチベーションが有った方がいいよね。



 部隊編成は、十人を一部隊とし、その内の一人を小隊長とする。

 小隊が十個集まれば、一個中隊となり、その内の一人を中隊長とする。

 中隊が十個で一個大隊、千人の部隊を予定している。


 この十進編成方式の利点は、部隊規模の把握が容易であることだ。糧食の管理運営でも役立つ。

 再編成が素早く行える点もメリットだ。

 部隊は必ず戦闘の度に死傷者が出て損耗していくから、そのままでは火力が落ちてしまう。

 補充や入れ替えでユニットの個別の戦力を維持するのは大○略では当然のセオリー。


 ただ、現時点では騎兵は五十足らず、歩兵三百しかいないんだけども。

 いきなり大部隊は運用も難しいから仕方ない。規律の取れていない軍隊など、ごろつき集団でしかないからな。

 増やすのは、先に隊長候補を育てて、ある程度の組織運用が確認できてからだ。


 その規律は、総隊長のケインともよく話し合い、基本的にはそこそこ厳しいモノとした。

 上官の命令は絶対というアレだ。

 殺し合いをやるのだから、俺みたいな臆病者は常に逃げる機会(チャンス)を窺っている。

 一人が逃げ出してしまえば、俺も俺もと続いて、最後には軍が崩壊する。戦わずして敗北だ。

 この世界においても、俺の軍隊の規律においても、敵前逃亡は死罪である。

 ※俺は除く。


 ただ、いつも怒鳴ってばかり、罰してばかりでは、ブラック企業と変わらない。

 最低限のルールは明確にして、それ以外ではあまりうるさく言わない方針とした。



 孫子曰く『(シバシバ)賞スルハ、(クル)シムナリ。

      (シバシバ)罰スルハ、クルシムナリ。

      先に(ボウ)にして後にその衆を(オソ)ルルハ、

      不精(フセイ)ノ至リナリ』


「褒賞を連発していれば、もらったときのありがたみが薄れるし、予算も足りなくなって悩み出す。

 かといって罰してばかりでも、無気力になったり反感を買ってやはり困ったことになる。

 先にガミガミ叱っておいて、後で部下の機嫌を心配するようでは罰にならず間抜けである」


 ムム、猫の実は与えすぎてはダメかも。


 

『卒、(イマ)親附(シンプ)セザルニ(シカ)モ コレヲ罰スレバ、(スナワ)チ服セズ。

 服セザレバ(スナワ)(モチ)イ難キナリ。

 卒、(スデ)親附(シンプ)セルニ(シカ)モ罰行ナワザレバ、(スナワ)(モチ)イベカラザルナリ』


「新入り兵士と親しくなっていないのに、いきなり罰すれば兵士の方も将軍を尊敬しない。

 敬意を払わない兵士は扱いにくい。

 兵士と親しくなったからと言って、なあなあで罰しないのも、兵士として扱えなくなってしまう」


 ネルロとベリルには厳しく!



(ユエ)ニ、(コレ)(レイ)スルニ文ヲ(モッ)テシ、(コレ)ヲを(トトノ)ウルニ武ヲ(モッ)テス』


「だから、兵士には思いやりを持って指導してやり、厳格な規律によって統制する」


 エルちゃんに手取り足取り…ウホッ!



『令、(モト)ヨリ行ナワレテ、(モッ)テ ソノ(タミ)(オシ)ウレバ、(スナワ)(タミ)(フク)ス。

 令、(モト)ヨリ行ナワレズシテ、(モッ)テ ソノ(タミ)ヲ教ウレバ、(スナワ)(タミ)(フク)セズ。

 令、(モト)ヨリ行ナワルル者ハ、衆ト相得ルナリ』


「普段から規律がしっかりしていて、それが身についていれば、部下は命令に従う。

 普段から規律がいい加減で、それが身についてしまえば、部下は命令に従わない。

 規律を普段から徹底されていれば、上司も部下も互いに信頼が生まれて上手く行く」


 頑張れ、ケイン! 頼んだぞ、ケイン! 君なら出来る!




俺様用メモ


レッドストーン 

 天然に存在する真っ赤な鉱石。見たまんま。

 色は綺麗だが、体に悪そう。陶器や鎧の着色に。


ルビア草 

 根の煮汁を布の染色に使う。緋色。 

 安心の天然植物由来。


ノビール草

 伸縮性のある丈夫な(ツタ)

 太いのでパンツのゴムには向かない。


ビニール草

 茎がふにゃふにゃと曲がり、それでいて丈夫。

 水を外側に通さないのでホースのように使える。


バニラ草

 甘い香りのする白い花で蔓状。

 この世界では希少では無い。


カカオの木

 高さ十メートルほどの木に、

 三十センチくらいの瓜状の果実を実らせる。

 その中に小さなカカオ豆が入っている。

 高カロリーで半分は脂肪のため、

 食べるとニキビが出来やすい。

             

あとがき


赤備えは染料に鉱物の辰砂(硫化水銀)を使ったと言われます。当時は高価で精鋭の証。

『昆虫記』で有名なファーブルですが、赤色染料のアリザリンの製法も発見しています。

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