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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十三章 黒き帝国

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第二話 善戦

2016/11/29 若干修正。

 おっと、俺はもう戦は何度か経験したが、クロは初めてだったな。


「クロ、前に言った通り、目潰し系や精神系で敵を混乱させるだけでいいからな」


「はいっ、分かっています」


 大鳥(クーボ)のマリアンヌに騎乗したクロは、緊張はしているようだが、気丈に返事をした。思ったよりは大丈夫そうだ。まあ、戦は初めてでも、モンスターとの戦闘は何度もこなしてるからか。


「それから、弓兵に狙われたら避けなさいよ、マリアンヌ」


 リサもアドバイスを送る。


「クエッ!」


 賢いひよこだ。


「さて、久方ぶりの馬上戦だな」


 レーネが大剣を片手で軽々と振り回して肩慣らしをするが、ま、コイツは心配要らないだろう。

 馬に乗っているパーティーメンバーは他にはミネアだけで、エリカ達は徒歩だ。少し遅れ気味で走って付いて来ている。

 馬の練習もやってもらった方がいいかもな。


 そうこうしているうちに、目と鼻の先までトレイダーの騎兵が近づいてきたので、俺は無詠唱でフラッシュの呪文を使う。


「うおっ!」

「何だ!?」

「目が見えぬっ!」


 くそ、十人まとめての範囲指定だったが、掛かったのはたった三人だけかよ。俺の今の状態では魔法の効きが悪いのか、それともトレイダーの騎兵部隊の魔法抵抗が強いのか。


「カカッ、そのようなつまらぬ小細工など要らぬわ。魔剣である妾さえいれば、お茶の子さいさいじゃ。さあ、抜くのじゃ、ユーイチ」


 俺の腰にぶら下がってる剣、リーファが喋るが。


「ヤダ」


 だいたい、お前が俺に取り憑いちゃったせいで俺の魔法が弱ってるんだし。


「なっ…フン。まあ、好きにするが良い。魔法使いなど、魔力が尽きてしまえばどのみち何も出来ぬからの」


 まぁ、(M)(P)が尽きれば、当然お世話になるつもりだが、コイツは呪われた魔剣、あまり頼りたくは無い。

 それに、俺のここでの勝利条件は、生き延びることと、ミッドランド軍の勝利であって、得点稼ぎや殺戮では無い。


「ほう? ただただ殺し尽くせば、簡単に勝てると思うがの」


 リーファは漆黒の魔剣らしく、俺の心を読んでそううそぶく(・・・・)が、彼女を用いたとしてもそう簡単ではあるまい。

 相手も生き延びようと必死に抵抗してくるから、いちいちまともに相手をしていたら、時間も掛かれば疲労もする。


 最小限の労力で、いかに多数の敵を混乱させ、無力化するか。

 それに味方との連携も活用しないとな。


「ケインッ! 前の敵は任せたぞ」


「了解!」


 俺の専属護衛をやってくれている騎士ケインを先行させ、道を作らせる。

 物理二重バリアはクロが掛けてくれた。

 後ろから俺の脇を電撃が飛んでいったが、エリカも味方を巻き込まない知恵が付いたようで成長したな。単に目標を外しただけじゃなきゃいいけど。


「左! 弓を持っとるよ!」


 ミネアが弓持ち騎兵にいち早く気づいて叫ぶ。


「任せて!」


 リサが左腕装備のボウガンで狙い撃ち、すぐに落馬させた。相変わらず、命中率がいいな。馬上で走らせながらなのに、大したもんだ。


「せいっ! 行ける!」


 なおも先頭を駆けるティーナは、真っ向からトレイダーの騎兵と交差するが、一度も剣を合わせることなく、相手をことごとく斬り捨てて行く。

 ティーナのレベルが高いから良いようなものの、後でお説教しておかないとな。領主は自分だけの命じゃないんだし。

 いや、今、言っておこう。


「ティーナッ、君だけの命じゃ無いんだ、少し下がれ、俺のために」


「え、ええ?」


「む、まずいぞ。左に回り込まれた」


 リックスが敵兵を斬りながら言う。左を見ると、騎兵の一部隊が弧を描くように回り込んでいた。今から向かっていっても、間に合わないか。

 後方を振り向いて確認すると、うちの歩兵部隊がそこにいる。少し離れすぎたな。


「ティーナッ! 速度を緩めろ! 歩兵部隊が付いて来れない。後ろが狙われてるぞ」


「もう…でも、みんななら大丈夫でしょ」


 速度は緩めたが、落ち着いているティーナ。ま、このレベルの相手なら、うちのパーティーメンバーが負けるはずも無い。



 回り込もうとしていたトレイダー騎兵の前に、突如、大きな炎の柱が立ち上る。あれを唱えたのはミオだな。


「うおおっ!?」


 慌てて避けようとする騎兵だが、勢いが付いていて避けきれない。


「ひい!」


 部隊が混乱し、バラけた。

 そこへリムが手斧を振り回して突っ込んで行き、うん、アレなら大丈夫だな。


 騎兵部隊の強みは、そのスピードと、隊列の衝突力にある。まともにぶつかれば歩兵や弓兵など簡単に蹴散らせる力。

 だが、その二つが崩れてしまえば、歩兵でも対応は可能だ。


 ただ、槍隊がいた方が良かったな。

 後でリックスに言って、作っておいてもらうか。


 そのままロフォール騎士団はトレイダーの騎兵部隊を蹴散らし、その後ろの歩兵部隊へ食い込んでいく。

 見ようによっては、左右を包囲された形なのだが、魔法使いが複数いるおかげか、不利になっていない。


「リックス! 深入りしすぎじゃないのか?」


 途中、不安に駆られたので聞いてみた。


「いや、これならば突破は可能だ。それに、後陣も控えているからな。我らは陣形を支えずとも、遊撃で良かろう」


 ふむ。ま、リックスがそう言うなら大丈夫か。


「分かった」


 それならば、このまま敵陣を真っ二つにして、崩していくか。


「ティーナ、真っ直ぐ奥へ突っ切れ」


 俺が指示を出す。


「分かった!」


 大軍は、一度陣形が乱れると、兵も自分の立ち位置が分からなくなるので、立て直しが遅れる。

 また、相手が少数だと、攻撃可能な者が限られ、兵の大半が遊んでしまうこととなる。

 敵の攻撃が集中する前に、常にこちらは移動して、相手の攻撃を思うように集中させない事。

 それが戦術ゲームにおけるセオリーだ。


「ユーイチ、後方から敵の騎兵部隊が突っ込んできてるわよ」


 リサが言うので後ろを見たが、少数の騎兵がかなりのスピードでうちの歩兵部隊に突っ込んでくるのが見えた。


「むむ」


 まるで意趣返しのように、ロフォールの歩兵部隊が真っ二つに切り裂かれていく。


「私が相手をするわ」


「ちょっ! ティーナ!」


 だからお館様はそう言うポジションじゃないでしょ!

 ああもう!


 ティーナが部隊も連れずに馬首を返して走って行ってしまうので、この場の指揮はリックスに任せて、俺も追いかける。




「どけどけっ! 我が前に立ち塞がることは許さんぞ! この虫けら共!」


 レーネほどでは無いものの、かなり大きめの剣を振るう騎士が、先頭で暴れている。

 黒い鎧に、ふさふさのファーをくっつけたその男は、殺戮を笑顔で楽しんでいるようにも見えた。


「させないっ!」


 ティーナが馬を飛ばし、レイピアで斬りつける。が、この戦で初めてティーナの剣が弾き返された。


「くっ!?」


 ティーナも相手の力量に気づいて戦慄する。


「ほう? 女か。つまらんな。男であれば一騎打ちも楽しめようが、女とは」


「それはどう言う意味かしら。私なら、手加減には及ばないけれど?」


「増長するなッ! 女は家畜、黙って男に従っていれば良いのだ!」


 うわぁ。男尊女卑と言うより、もう某掲示板で童貞をこじらせちゃった子みたいな放言だな。

 釣りじゃないところが痛々しいと言うか。


「はぁ?」


 ティーナも呆れ返って、すぐに反論が出来ない。

 ま、好都合だ。


 一騎打ちをやらないと向こうが言ったんだから、お望み通りにしてやんよ。


「四大精霊がサラマンダーの御名の下に、我がマナの供物をもって炎の壁となれ、ファイアウォール!」


 レベルは高そうだから、こちらも詠唱付きで、遠慮無く攻撃魔法を使う。


「むっ!」


 放言男はとっさに自らのファー付き黒マントで身を覆ったが、うえ、魔法をほとんど無効化しやがった。

 何やらとっても良さそうな魔法防御のアイテムだ。欲しいなー。


「貴様…! このオレをトレイダーの剣豪将軍、グレン=フォン=ザッハルト伯爵と知っての狼藉か!」


 いや、知らんし。 

 

「雨よ凍れ、嵐よ上がれ、雷神の鉄槌をもって天の裁きを示さん! 落ちよ! サンダーボルト!」


 今度はエリカが、上級の雷撃呪文を使った。雷が真上からザッハルト将軍に直撃。


「エルフぅううう! そこを動くな!」


 ダメージはほとんど行かなかったようだが、激昂したザッハルトは黒馬を走らせ、エリカに突っ込もうとする。


「ちょっと、私が相手をしようと思ったのに」


 ティーナが文句を言うが、それほど怒ってはいない。正式な一騎打ちというわけでも無かったからな。


 ミオが上級呪文のアイスジャベリンを無詠唱で使って飛ばしたが、ザッハルトはその氷の槍を剣で叩き落とした。


「ダメです。フラッシュが効きません」


 クロも駆けつけ、呪文を唱えてくれたが、ザッハルトの魔法防御はかなり高い。

 こりゃ、魔法チームはお手上げかもね。


 普通の攻撃呪文では、だけど。


「ふう、あかんかったか」


「小賢しい!」


 ミネアが投げナイフを斜め後ろから飛ばしたのだが、それも剣で叩き落とされてしまった。ザッハルトもよく気づいたな、今の。心眼スキルだろうか。


「エリカ、逃げなさい!」


 リサが叫ぶが、エリカはその場から動かずにまた呪文を唱えようとしているし。


 あのアホ。


 仕方ないので俺が土壁(アースウォール)の呪文で、下の地面をごっそり削って前方には文字通りの土壁を作ってやり、ザッハルトを馬ごと穴に落とす。


「なにぃ!?」


 さすがのザッハルトもこれには対応出来ずに、馬が悲鳴を上げて転倒する。


「貴様らぁ! 殺す!」


 穴の中でいきり立つザッハルトだが、フフフ、まだ終わりじゃないよん。


「ん、岩よ落ちよ、大地の精霊の怒りと知れ、ロックフォール!」


 ミオが落石の呪文を唱え、ザッハルトの頭上に岩を出す。


「その程度で! このオレ様が倒せるかぁ!」


 うお、岩を剣で真っ二つに切りやがった。コイツは相当レベルが高そうだ。


 でも、ここでストーンウォールのコンボだったり。


「なにっ?! くそっ、体が動かん!」


 岩にまとわりつかれて身動きが取れないザッハルト。


「カカ、ここでいよいよ、満を持して妾の出番と言うわけじゃな?」


 ブゥウウンと、俺の腰に差している漆黒の魔剣がオーラらしきモノを発してその気になっているが。


「いや、撤収!」


「な、なんじゃとー!?」


 だって、ブオー、ブオーと、退却の合図を報せる法螺貝が鳴ってるものね。

 うちが受け持った前列左翼は良い感じで攻めていたんだが、後ろの本陣で何かあったのか?

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