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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十二章 大国の思惑

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第十七話 ケルベロス狩り

2016/10/1 若干修正。

 ハイランドから氷の魔剣を持ち帰り、これで全ての準備が整った。

 レベッカは玉座の間にいると言うので、俺達は報告を兼ねてそちらに向かった。


「まさか、お前がその魔剣を抜くとはな……凄く納得が行かんが、抜いたのは事実、認めねばならんのだろうな」


 アルカディア王国所有の魔剣デスブリンガー。

 勝手にリーファと名前付けちゃったけど、それは伏せておいた方がいいかもしれない。レベッカもちょっと不機嫌な感じだしね。


 正統なアルカディアの王で、剣も嗜んでいる彼女としては、異国の魔術士風情が魔剣を抜いたのは面白くないだろうし。


「陛下、その件については、また後ほどと言うことで。それで、ロフォール卿、魔剣は使える状態なのですか?」


 側近のミースが魔剣について聞く。作戦の要と言ってもいいのだから、確認は当然だろう。


「どうなの? ユーイチ」


「うーん……」


「カカッ、問題無い。この妾があの犬っころを斬り伏せてくれようぞ」


「む、誰だ?」


 レベッカが幼女の声に辺りを見回す。


「妾じゃ、妾。お主の目の前の黒き剣よ」


「何!?」


「そう言えば、デスブリンガーには魂が宿ると言い伝えがありました」


「それはいいが、子供か…」


「フン、声は幼きとも、妾はお主よりも何百倍も年を食っておるわ」


「分かった。では、魔剣デスブリンガーよ、ユーイチと共にケルベロスを討て!」


「ま、良かろう。ここはお主の作戦に乗ってやるとしよう」


 リーファが言ったのは俺のと言う意味だが、そこは王の手前、黙っておく。

 二振りの魔剣でどう戦うか、それが知恵の絞りどころだ。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「毒はさっぱり効かんかった。無効耐性があるみたいやね」


 城の廊下を進みながら、ミネアがここまでの作戦の結果を報告する。

 猫の実に混ぜたり、一緒に毒キノコを出したりしたようだが、そこはボス級、やはりダメだったか。


「ミオ、ユーイチが戻って来たで」


「ん。……」


 ミオは俺を見て何か言い掛けたが、その後ろ、レベッカも一緒に付いて来ているせいか、黙り込んだ。


「では、私は先に出るぞ」


「御意」


 その様子を察してか、単に外の様子が気になったか、レベッカは護衛を連れて先を急ぎ廊下を通り過ぎる。


「で、どんな感じだ、ミオ」


 ミオには大砲の作成を頼んでおいた。メモの呪文で簡単な設計図は渡したんだが。


「ん、改良の余地は残るけど、ほぼ実用レベル」


「おお、やるな」


「ん、任せて。でも、ケルベロスに有効かどうかは不明」


「ま、それは実際、試してみれば良いさ。火薬は足りてるのか?」


「大丈夫や。木炭と硝石と硫黄を混ぜればええだけやし。ただ、取り扱いは要注意や。すぐ火が付くしな」


 それにはミネアが答えた。この世界にはすでに火薬は知られた存在らしい。ただ、鉄砲や大砲は見た事無いな。なんでだろ?


「ん、気を付ける」


「ミオ、ゴーレムの方はどうなってる?」


 俺はもう一つの準備を聞く。


「クロに任せた。優秀な弟子」


「だろうな。分かった」


 城の外に出る。レベッカがそこで兵に何か指示しているのが見えた。


「ユーイチ!」


 リサがやってきた。


「どうだ?」


「配置は済んだわよ。いつでもいいわ」


「よし、じゃ、すぐに始めよう。ルフィーかアリシアに連絡を」


「ええ」


 リサが手を振って合図すると、兵が法螺貝を取り出して吹いた。ブオーンと大きな音が鳴る。


 さあ、作戦(オペレーション)開始(・スタート)だ。コードネームは『ワイド・スカイ・ウイング』


「申し上げます! 西門付近にて、ケルベロスを発見! アプリコット騎士団第三部隊が只今、交戦中!」


 伝令が馬で駆けつけ、レベッカに報告する。


「そうか」


 レベッカは野営用の簡素な椅子に座り、じっと待っている。俺もその近くで待つ。


 入れ替わりに次の伝令がやってきた。


「申し上げます! アプリコット騎士団第三部隊、ケルベロスの誘導に成功! 東門へ向かいました」


「よし」


 騎士団の被害が心配だが、猫の実を使っての誘導だから、そこまで酷いことにはならないはずだ。とにかく、一度東門へ動いてくれないと、罠が使えない。


「申し上げます! ケルベロスが第一ポイントに侵入。ゴーレム部隊と交戦を開始しました!」


 さて、どうなるか。さほどコレには期待していないんだけども、クロの作成したゴーレムだから、ひょっとすると結構なダメージを与えられるかも。


「申し上げます! ゴーレム六体が全壊、十三体が半壊。十一体が無事なるも、ケルベロスが第一ポイントより逃走! ケルベロスのダメージは軽傷!」


 やっぱりなぁ。ケルベロスはデカいし、力も有るし、スピードもある。ゴーレムは炎には強いが、ここはストーンゴーレムとかアイアンゴーレムを出したいところ。

 今度、研究してみるかな。致命的にトロいスピードはちょっとどうにも出来ない気もするが。


「ええい!」


 レベッカが悔しそうに地面を踏みつけるが、まだ作戦は始まったばかり。下手に声を掛けても余計怒らせるだろうから、俺は黙っておく。


「申し上げます! 王都守備隊が第一ポイント北二百メートルの地点にてケルベロスを発見! 第二ポイントへ誘導を開始しました!」

 

「第二ポイントは攻城兵器か。出来れば、城下では使いたくなかったのだが」


 レベッカがつぶやく。使用すればターゲット以外にも被害が出てしまう大型兵器。だが、威力はその分、期待できる。


「申し上げます! ケルベロスが第二ポイントに侵入! カタパルトによる攻撃を開始!」


 投石機か。どのような攻城兵器があるのかは機密のようで俺は教えられていない。ちょっと見てみたいが……下手に近づくと色々と危ないから止めておこう。


「申し上げます! カタパルトによる攻撃、全弾、命中せず! ケルベロスは北へ逃走!」


 うーん、当たらなかったか。照準を付けられるような感じの代物じゃないだろうしな。

 少ししてドン、ドンと、砲撃の音が聞こえてきた。


「申し上げます! 第三ポイントにて、大砲攻撃! 四発命中を確認!」


「へえ」

「おお、当たったか」


「はっ! ケルベロスは痛がり、血を流し、それなりのダメージを与えた模様」


 石の弾じゃなくて、鉄球や、炸薬を詰めた榴弾なんかを使えばもっと威力が出るんだろうが、期間も短かったからな。当てただけでも良しとすべきだ。


「血を流させるとは、良くやった、ユーイチ」


 レベッカが声を掛けてくる。


「は、恐縮にございます」


「フン、そう言いながら、ちっとも緊張しておらんように見えるがな」


 肩をすくめるしか無い。時間もそろそろだ。


「では、陛下、私は第五ポイントへ行って参ります」


「うむ。最後は任せたぞ、ユーイチ」


「はっ!」


 できれば、第四ポイントで決着を付けておいて欲しいが、厳しいだろうな。

 アレがまともに握れる剣なら、良かったんだが。


 俺が一人で第五ポイントへ向かっていると、ケルベロスと戦っているティーナ達の姿が見えた。

 空中にはイザベルが騎乗するワイバーンもいて、ホバリングしながら猫の実をポイポイ投下している。

 加勢したくなったが、作戦のことを思い出して自重する。俺が勝手な動きをすると、他の兵士達も参加しているので、混乱が生じかねない。


「カカ、何ともぬるい戦い方じゃな。あの犬っころも、戦闘の最中に猫の実に気を取られるなど、とんだバカ犬じゃ!」


「ま、そう言う弱点が無いと、無理ゲーだから」


 言う。


「いやいや、妾のようなチートウェポンが有ればクリア可能じゃ」


 自分で言ってるし。


「きゃっ! レーネ! 後はお願い!」


 ティーナがケルベロスに弾き飛ばされてヒヤリとしたが、何とか大丈夫そう。


「任せろ!」


 いよいよか。


 凍りかかったゴーレムが支えている石筒を、エリカが石壁(ストーンウォール)の無詠唱呪文により解放して、中に納められていたアイスファルシオンを剥き出しにする。


 たちどころに触れる全てを凍らせる魔剣―――。

 当然、それを手に握って戦うことなど出来はしない。


 ならばどうするか―――。


()けっ、剣は友達(トモダチ)ッ!」


 駆け込んだレーネが氷の魔剣(アイス・ファルシオン)蹴り出して(・・・・・)、ケルベロスに勢いよく当てた。


「キャイン!」


 お、効いたね。地獄の番犬も、魔剣の冷たさにはびっくりしたのだろう、情けない悲鳴を上げた。


「「 よし、そのまま凍れ! 」」


 俺とレーネがハモる。


 ケルベロスの腰の辺りに刺さったアイスファルシオンが猛烈な冷気を発し、ここからでも白いもやが見える。

 分厚い氷がみるみるうちにケルベロスの下半身を覆った。

 

 しめた! これで動きが鈍るぞ。


「ユーイチ、今よ!」


 ティーナに言われるまでも無く、俺は魔剣デスブリンガーを鞘から抜き放ち、ケルベロスに向かって駆け込む。


「うおおおおお!」


 だが、ケルベロスがこちらに気づき、チッ、炎を吐きやがった。


 ここはウインドボールだな。


「ぬっ!?」


 風玉を出そうとしたが、出ない。

 あれ? MP不足?


「ああ、そうじゃった、言うのを忘れておったが、本気モードの時は、妾の魔法防御が分厚い故に、魔術士の呪文はたいてい無効化じゃ」


「ちょっ! 味方の呪文はスルーでいいだろ!」


「そう言われてもの。レジストで防御しておるわけでもなし、それに―――」


 喋っている間に、炎がぶわっと目の前に!


「うおあっ!」


「ユーイチ!」


 ひい。

 焼けるぅううう………あれ? 焼けてないな?


「どうじゃ? 妾の魔法防御の威力は? カカカ、犬っころ程度の炎なぞ、この通り、綺麗さっぱりよ」


 なるほど、無効化か。しかも、あの炎を消すとか。


「おおー、凄いな、リーファ」


 俺の呪文まで消してしまうのは色々問題がありすぎるのだが、とにかく今は助かった。


「ふふん。もっと妾を褒め称えても良いのじゃぞ?」


 上機嫌な魔剣さん。


「ガルルル……」


 一方、ケルベロスは忌々しげに俺とリーファを睨むが、奴の下半身がアイスファルシオンによって氷漬けにされてしまっているため、動きが取れないままだ。


「んじゃ、これで!」


 大上段からの踏み込みの一撃。リーファが自分で剣を念動させたらしく、剣が凄い勢いでケルベロスの顔に入った。


 決まった!


「まだよ!」


 ティーナが叫ぶ。

 うえ、ケルベロスの真ん中の首を沈黙させたはいいが、左右の二つの首がまだ動いてるし。

 来る!

 

「「 ガウッ! 」」


 やばっ!?


「だからコイツとまともに斬り合うなって言ったろ?」


 おお、ザックがケルベロスの右の首をスパッと切り落としてくれた。さすがレベル52のデーモンキラー。


「油断するな、ユーイチ!」


 イザベルもワイバーンを低空飛行で操り、投擲槍(ジャベリン)でケルベロスを攻撃してくれた。


「はああああ! 七星閃光セブンス・シャイニング!」


 駆け込んできたティーナが残る左の首を攻撃。だが、レイピアの連打では、威力が厳しいか。


「次は私だ! 王都を荒らした凶犬、成敗してくれる! そいやぁっ!」


 ルフィーが横から気合いを込めてケルベロスに斬りかかる。


「まだです! 百花繚乱!」


 アリシアがこちらも華麗な連撃技を繰り出す。ケルベロスが無数の傷を負って押され気味になるが、まだ抵抗を止めない。

 その牙を剥く。


「ガウッ!」


「どけっ! 獅子落とし!」


 最後にレーネが低い姿勢から自分の大剣をケルベロスの口の中に突き刺し、これで完全に決まっただろう。


 凶犬の動きがぴたりと止まった。


 レーネが剣を引き抜くと、ケルベロスの巨体がズズンとその場に崩れ落ち、ボフンと黒い煙になって消えた。


「「「 やったー! 」」」


 ついにケルベロスを倒した。


 皆で飛び上がって喜ぼうとするが。


「ばっかもーん! 最後の一撃、一番美味しいところを他人に取られるとは、お主、何をやっておるのじゃ!?」


 魔剣リーファが怒りだしてしまった。


「ああ、別に良いだろ。誰が倒したってさ。力を合わせてってのもなかなか乙だぞ。これぞチームプレイってヤツだぜ?」


 俺は言う。

 外交を考えるなら最後はイザベルで決めて欲しかったが、彼女も一撃は入れてくれたし、何より、アイスファルシオンを運搬してくれた貢献度は大きい。

 凍り付かせて動きを止めていなければ、ケルベロスにトドメを刺す前に逃げられていたところだろう。

 一度ならずも二度までもとなれば、アルカディアもそれなりの礼儀をトリスタンに示さねば格好が付くまい。


 『大空(ワイドスカイ)(ウイング)』作戦、大成功!

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