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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十章 子爵家の家臣

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第十一話 封印

2016/11/25 若干修正。

「ねえ、それくらいでいいんじゃないの?」


 かなり掘ったところで、ティーナが上から穴を覗き込んで言う。だいたい、深さ二十メートルくらいに達しているだろうか。周辺部はストーンウォールを駆使して土をせき止め、なるべく垂直にしてある。這い上がられたら意味ないし。


「まあ、でも、もうちょっとだけ」


 穴の中で掘り続けている俺は言う。

 そう何度も掘りたくは無いし、一発で成功させたい。

 あと、こんなに大穴を掘ってると、なんか楽しいんだよな。


「ん、確実に仕留めるためには、もっと深く」


 ミオも手を止めずに賛成。


「そうね。ま、掘れるんだし、掘っちゃいなさいよ」


 俺に同意することは滅多に無いエリカも手を休めない。


「なんだか、楽しいです」


 クロが正直に言っちゃう。


「うん、面白いよ!」


 ピッケルで掘ってるミミも声を大にして。 


「ええ? ちょっと、みんな。分からなくはないけど…」


 ティーナもこういう大穴を見るのはちょっと楽しいらしく、叱り切れていない。

 ただ、人が落ちないように安全は確保しないとな。

 その役目はリサがやってるので、心配は無い。人通りも無い場所だ。


「時間切れよ。全員作業を中止して、上がってきなさい。アイツが来たわ」


 上から監視役のリサが言った。


「む」


 周辺部に作ってある作業用のらせんスロープを駆け上がって、地上に出る。


 すぐそこでは無いが、大亀が見えた。


「来たわね」


 火山灰ですすけたエリカが笑みを浮かべ、仁王立ちで腕組み。


「ん、じゃ、作業用スロープは破壊」


 ミオがスロープ下側の土をアースウォールで抜いて、一気に崩す。

 あ、くそう、俺がやりたかったのに。仕組みを考えたのはミオだ。コイツ、土木系の知識や熟練度、かなり高めてるだろう。

 ストーンウォールできっちり固めてあった周囲の外壁の方は崩れずに健在だ。結果、底が数メートルほど高くなったが、かなり深く掘ったので、あの形の大亀ではこれだけでもう抜け出すのは不可能だ。


 もちろん、亀が落ちたらストーンウォールでさらに固めちゃうけど。


「よし、じゃ、作戦通りに行くぞ!」


 昼寝でもしていたか、背中に火山灰を付けまくったレーネが、気合いを入れて肩を回す。


 作戦と言っても、まずは普通に俺達が戦闘するだけ。


 それで倒せれば、文句なしだ。まあ、せっかくの封印の穴は何だったのかと徒労感は出そうだが。


「じゃ、みんな、準備はええね?」


 戦える場所をいくつか見つけてきたミネアも、もうとっくに戻って来ている。


「もちろん!」

「バッチリニャ!」


 前衛チームの士気は高そうだ。他のメンバーも問題なし。


「行くわよ!」


 ブレスの間合いに入ってから、ティーナが駆け出す。

 俺は他の呪文は一切使わず、ウインドボールで大亀のブレスを撥ね返す役目に徹する作戦。呪文の消費量を減らし、かぶりやミスを少なくする意味もある。

 ダメージ量もきっちり計算しないとな。あと、確かめておくこともある。


「くっ! まだ倒れないの!」


 現在、53ターンを経過。ブレスをきっちり封じながら、タコ殴りにしたのだが、何度か首を引っ込めると言う場面があったものの、致命傷を与えた感じは無い。

 ティーナが声を荒げるのも無理は無いだろう。


「仕方ないわね。プランBに移行するわよ」


 リサが当初の予定通りに宣言。ま、倒せない可能性もしっかり俺達は考えていたからな。


「レーネ、どうだ?」


 その前に俺は確認しておく。


「ああ、回復してるぞ、コイツ。前に切った傷が小さくなってる」


 やはりか。

 俺の概算では、一ターンにつき平均550ポイントのダメージを与えて、それが53ターン、前日のダメージと合わせると四万を超えるダメージを与えている。それで倒せないのだから、自然回復も可能性はあった。


「じゃ、やっぱり無理そうね」


 リサが淡泊に言う。


「むぅ、こんな敵がいるなんて……!」


 ティーナが拳を握りしめて険しい顔。


 自然回復するモンスターは、一ターンに一定量以上のダメージを与えられないと、永遠に倒せない。

 これが逃げられない場所や、こちらも致命傷を負うような相手だったら、今頃俺達は全滅していただろう。

 ティーナも、その辺の判断の甘さを悔いて、拳を握りしめたようだ。

 俺も甘かったね。


「じゃ、私が誘導するから、みんなは先に反対側へ回り込んで」


「リサ、ゴーレムにやらせた方が」


 心配なので言う。しんがりとなれば、ブレスのダメージを覚悟しなければならない。


「トロいゴーレムじゃ、いざと言うときに融通が利かないでしょ」


「分かったよ」


 作戦の失敗は許されない。ここで仕留め損なうと、MPの回復や落とし穴の作成で一日はかかるし、落とし穴に上手く誘導できるかどうかも当てが無い。

 街に入られでもしたら最悪だ。


 リサなら上手くやってくれると信じて、穴の反対側へ走る。


「リサ、もういいわ!」


 ティーナが言い、リサも、振り向いて一気に穴の(へり)を回ってくる。大亀の方は、顔こそリサを追って横に向けたが、すぐにまた正面に歩き始めた。

 穴の方はカモフラージュの呪文ですぐには分からないようにしてある。さすがにパーティーメンバーまで落っこちたらしゃれにならないので、ロープを周りに垂らして目印にはして有ったが。


 さて、正念場だ。


「じゃ、私が合図を出すから、合わせなさいよ」


 リサが言い、魔術チームが頷く。


 ズシン、ズシンと歩いてきた大亀は右足を穴の中に進めようとして、よろけた。


「今!」


 アースウォールの呪文で、大亀のいる場所を崩す。

 これで後ろに逃げられたら、この作戦は失敗だが。


「行ける!」


 大亀はのろのろとした動きで後退しようとしたが、それよりも穴の手前が崩れる方が早かった。

 一気に大亀が滑り落ちた。


 ズズゥーン、という地鳴りと揺れを起こすと、大亀が地上から消える。


「やった!」


「まだよ!」


 喜んでいる暇は無い。二度と這い上がって来れないように、ストーンウォールで大亀の周囲を固めまくる。

 が、MPが足りない。

 戦闘を長引かせすぎたな…。


「くそ、限界だ」


「でも大丈夫そうね。じゃ、ここで野宿して、明日、完璧にしてから帰りましょう」


 ティーナが言う。

 夜中に這い上がってきたらどうしようかと心配だったが、大亀は動きが取れない様子で出てこなかった。


 翌日。回復したMPで徹底的に大亀の周囲を固め、念のために、上にも盛り土してゴーレムに運ばせた大岩を載せておく。


「まあ、こんなもんだろう。ミオ、もういいぞ。これ以上積み上げても、崩れると危ない」


 俺が言う。


「ん。でも、伝説はここから始まる」


 外側の盛り土をデカくして話を盛ろうという魂胆か。まあ、それはそれで面白いかもしれんが…。


「まだ言ってるの? じゃ、クレア、それっぽい石碑の形と碑文を考えてよ」


 ティーナがむっとした顔で言うと、クレアに頼んだ。


「そうですね。実際、危険なモンスターですし、定型にそって、真面目にやっておきましょうか。うふふ」


 最後の笑いが、ノリノリだなあと思いつつ、正式な聖職者にお任せしておく。


 石碑は良さそうな硬めの石をストーンウォールで加工して、クレアが考えてくれた文言を刻んでおく。



『ここに凶悪なる大亀の魔物を封ず。

 その姿、大岩の(ごと)し。

 ミスリルの剣でも倒せず、古代魔法を用いても倒せず、

 幾万の体力を持つ魔物なり。

 ゆめゆめ、力無き者は封印を破るべからず。

 必ずや街を滅ぼす災いとなろう。


 聖暦 246年 12月 17日

 フランジェが司祭、クレア=ド=アーベル伯爵が記す』



「「 あなた、伯爵だったの!? 」」


 皆が少し驚く。

 貴族っぽいなあとは思ってたんだが。聖職者はこんなもんかという思い込みもあった。

 出家してるとか言ってた気がするが、領主の地位のままかよ。


「んー、お名前をお借りしただけ、と言うことにしておいて下さい。ここにいるのは平民のクレアです。うふっ」


 にこっと笑うクレアだが。


「いや、アンタね…」


 ツッコミ役のリサも呆れ気味だ。


「クレア、あなたの目的はなんなの? やたら、ユーイチを気に入ってるみたいだけど」


 ティーナが聞く。


「ええ、純粋に、お慕い申し上げているだけで、本来の目的は巡礼です」


 凄くストレートに言ってくるクレアだが、どうにも、そこが信じ切れないんだよなあ。

 モテない俺としてはね。


「む…」


「じゃ、さっさと巡礼に戻りなさいよ」


 リサが言う。


「ええ。でも、私がいたから、ここでの封印が正式な物となり、安全性が増したと思いませんか?」


「そんなの、後で街の司祭に頼んだっていいんだから」


「いいえ、私の名の方が、効果があると思います。うふふ」


「それ、自分が大物だという宣言に等しいわよね?」


 腕組みしてリサが問い詰める。


「さあ、それはどうでしょうか。人は見る人によっても変わっていきますから」


 ふわっとした金髪の美人が、ミステリアスな笑顔を見せるとそれだけで意味深に聞こえてくるが。

 結局ははぐらかしただけだ。


「相っ変わらず、食えない女ね。グレートヒールにしても、あなたフランジェの大司祭じゃないの?」


 リサがクレアが使っていた癒やしの魔法について問う。

 スレイダーンの護衛騎士は大司祭級とビビってたしなあ。


「いいえ、違います。調べてみれば分かりますよ」


「そうね。ま、そうさせてもらうわ」


 今ひとつ分からないクレアの行動はリサに調べてもらうとして、だ。


「じゃ、街に戻りましょうか」


 ティーナもクレアについては棚上げするようで、言う。


「はい。早くお風呂に入らないと」


 クロがローブを気にしながら言う。

 みんな火山灰まみれだもんなあ。


「ふふっ、そうね」


 ティーナが笑い、自然とみんなから笑みがこぼれる。

 さて、ロフォールに帰るか。

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