表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の闇軍師  作者: まさな
第十章 子爵家の家臣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/287

第九話 マグマタートル

2016/11/25 若干修正。

 翌日、街で装備を追加して、サラマン山に挑む。


 ブレス対策に難燃性のマント、それに炎属性の攻撃を若干和らげるお守り。

 こういうのを俺も作ってみたいが、レシピがさっぱりわからん。教えてくれと言っても、企業秘密だろうしなあ。

 ま、今は買えばいい。俺もそれくらいは買える金を持ってるし。


 道中、火喰い鳥、レッドリザード、レッドモール、顔面岩が出てきたが、顔面岩以外はそれほど苦戦しなかった。顔面岩は剣が効かないので、氷系の呪文で仕留めねばならず、HPも結構高めでデスも効かない。

 転がりから繰り出す体当たり攻撃もダメージがデカいし、爆発したらどうしようとヒヤヒヤだったが、爆発はしないようだった。


「思ったより呪文の減りが早いわね。魔法チームは顔面岩以外は呪文、節約で」


 リサが指示して、その方針で先を行く。

 アクアには戦わせたくなかったのだが、ミミが大金槌を振り回して戦ってしまうので、自然と飼い竜のアクアも同じ事をやり始めるし。

 アクアの方は大して強くないが、ミミの方は割と会心の一撃が多いので強かった。


 二回、野宿で夜を過ごし、いよいよ、頂上付近。

 途中で、高山病対策として登ったり降りたりを繰り返したので、本当に二度と来たくない。

 温泉も無かった……。


「そろそろ頂上だから、気を抜かないように」


 リサが注意を促す。


「ええ」


 うろうろ歩き回って、顔面岩で消耗させられるのも嫌なので、探知の呪文でお目当てのマグマタートルを探す。

 割とすぐに反応があった。


「この先だ」


「行きましょう」


 岩山を歩いて行く。


「いたわ」


 すぐには見分けられなかったが、岩みたいな甲羅を担いだ亀がのろのろと歩いていた。大きさは思ったより小さく、五十センチくらいか。体長は一メートル。


「思ったより、小さいわね」


「とにかく、一匹狩ってみましょう。それで癖も分かるわ」


 リサが言うが、うえ、やっぱり何匹も戦って良い溶鉱炉になりそうな甲羅を選ぶつもりかよ…。ミミとはそんな約束を、一番大きいヤツにしてねとは言われているが。


「じゃ、作戦通り、散開!」


 ブレスを持つ相手なので、密集していると一度に多数がダメージを受けてしまって面倒になる。クレアが範囲回復魔法を持っているが、食らわないに越したことは無い。


 こちらに気づいたマグマタートルは、ゆっくりと左右を見回して、大きく息を吸い始めた。

 うわ、来そうだな。


「チッ、いきなりブレスか!」


 レーネが面白く無さそうに言い、それでも正面から大剣を持って突っ込む。


「ちょっと!」


 リサが咎めるが、まあ、一撃で死ぬ事は無いだろう。このメンバーでは一番強いし。

 その間に俺はマジックバリアを唱え、味方全員の魔法防御を上げておく。本音を言えば、ブレスを防ぐバリアの魔法が欲しかったのだが、未だに開発できていない。

 まあ、純粋な火炎ではないだろうし、魔法防御でなんとかなるだろう。

 もちろん、もう一つ、切り札も用意してきた。 


「氷の精霊よ、集まりて壁となれ、アイスウォール!」


 マグマタートルがブレスを吐こうとした瞬間、口の前に氷の壁を出してやる。

 こうすれば、ブレスは前に来ない。

 完璧なブレスバリアだ。


 思った通りに決まると、気分いいね。


「よし! 行けるわね」


 リサもそう言って距離を詰める。


「これでも食らえ!」


 レーネが大剣を上から思い切り振り下ろす。スパッとは行かなかったが、ざっくりと言う感じで亀の首にダメージを与えた。


 だが、それがマズかったか、亀は首を引っ込めてしまう。


「あ、くそ」


 仕方ないのでレーネは今度は足を狙うが、足も引っ込める。


「むぅ、これって」


 ティーナが反対側の足を攻撃し、これも引っ込めさせてしまった。


「か、硬いニャー」


 リムが甲羅を攻撃したが、そりゃそうだろう。岩みたいな甲羅だし。


「リム、溶鉱炉に使えなくなるから、甲羅を狙うのは禁止って言ったでしょ」


「ああ、うん、ごめんニャ。ついニャ」


「だが、どうする? ティーナの細剣(レイピア)なら、穴に刺すのもできそうだが」


 レーネの大剣では、甲羅の穴には入らない。


「そうね、やってみる」


「さっさと電撃で片付ければいいのよ」


 エリカがそう言って、電撃を甲羅にぶつけているが、ダメージはどんなもんだろうね。

 おっと、ブレス防御を意識しすぎて、分析(アナライズ)を忘れてた。

 唱える。



 マグマタートル Lv 32 HP 354/ 739


【弱点】 氷

【耐性】 炎、窒息、石化、即死

【状態】 通常

【解説】 活火山に住まう岩の甲羅を持つ亀。

     性格は凶暴で、

     人間に対してアクティブ。

     攻撃を受けると甲羅に籠もってしまうので、

     氷の呪文で倒すのが良い。

     動きが遅いため、ブレスを主に使ってくる。



 あ、大したこと無いや。

 俺達のレベルは37だし。


「レベル32、体力残り半分だ。氷の呪文しか効かないぞ。ブレスだけ注意!」


 必要なことをかいつまんで言う。


「なんだ、雑魚じゃない」


 リサが言うが、そこまで弱くは無いぞと思ってしまう。

 剣が効かず、戦い方が面倒になるから、コイツで金稼ぎやレベル上げをしたいとも思わないし。 


「せいっ! むぅ、攻撃しにくい」


 ティーナが穴を突き刺しているが、低い姿勢の上に、どうしても甲羅が邪魔になるようで、難しげに攻撃している。皮膚も普通に硬そうだ。


 なら、ここはやっぱり呪文だよね。


 クロやミオがすでにアイスアローで攻撃しているが、

 俺はアイスウォールの呪文を唱えて、甲羅の腹側を中心に凍り付かせてみる。


 お、ダメージが入って、HPが流れるように減った。


 ボフンと、赤い煙が出て、甲羅がドロップアイテムとして残る。


「クリア! じゃ、ミネアは周囲警戒。ミミ、それでいいかどうか、目利きしなさい。アンタが使うんだし」


 リサがミミに言う。


「うん! でも、コレはちょっと小さいよ! もっと大きいのがいい!」


「だそうよ。ま、弱いし、もう少し探してみましょ」


「そうね」


「分かった」


 探知の呪文で探す。すぐに二匹目も見つかった。

 今度は甲羅は一メートル弱か。やや小さいかも知れないが、充分だろう。


 同じようにアイスウォールで氷漬けにして倒し、ミミに空になった甲羅を見させる。 


「んー、悪くないけど、ちょっと小さいし、もう一匹お願い!」


「じゃ、それはアクアに担がせて。いいのが見つかれば捨てるなり売るなりするとして」


 リサが言い、ロープでくくってアクアに甲羅を背負わせる。ロドル(大トカゲ)も連れてきているのだが、アクアは俺達の役に立てたのが嬉しかったのか意気込んでいるように見える。


「次は上だ」


 探知の呪文で三匹目を見つけた。

 火口まで上がり、その内側に入る。マグマは吹き出していないが、あんまり長居したい場所じゃないね。熱いし。


「ユーイチ、本当にここなの?」


 リサが確認するが。


「ああ、反応はあったんだが…?」


 おかしいな。周りは岩と火山灰だけだ。もう一度、探知(ディテクト)


「そこの岩の影だ」


「分かった。私が調べるわ」


 リサが走って、そちらに向かい、慎重に岩の向こうを覗く。見回して、渋い顔で振り向いた。


「いないわよ?」


「ええ?」


「ん、間違いなく、そこにいる。何か変」


 ミオも探知の呪文を唱えて、警鐘を鳴らす。


 何だろう、この嫌ーな予感。


「なあ、別のところにもいるから、ここは撤退しないか? ここはヤバい気がする」


「ふっ、ユーイチがそう言うからには、ここには大物がいそうだな!」


 レーネが楽しそうに周囲を見回し始めるし。ああもう。


「気になるし、戦わないにしても、見つけてからにしない?」


 ティーナも賛同しちゃうし。


「じゃ、先にロドルは上に連れて行くわよ」


 リサがそう言って、荷を引かせた大トカゲ(ロドル)を避難させておく。 


「ねえ、お姉ちゃん、この岩、なんか甲羅に見えない?」


 と、ミミが言い出すので、見ると…。


「マジか…」


 十メートルはあろうかという大岩。これがマグマタートルですか?


「む。そうかもね。でも、穴が無いわ」


「でも、この辺がへこんでるし、ほら、崩れるよ?」


 止めなさい! とミミを止めようとしたが、その前に金槌で崩しちゃってるし。

 次の瞬間、へこんでいた部分からゴボォッと足が出てきやがった!


「危ない!」


 とっさに近くにいたミミをティーナが抱きかかえて引き離す。


「ユーイチ、レベルは!」


 リサが聞く。


「お、おう。ちょっと待ってくれ」


 レベル次第では戦うつもりなのかね。

 とにかく分析(アナライズ)を唱えるが―――


「ダメだ、無効化された! レベルは37オーバー!」


「上等!」


「面白そうニャ!」


 レーネとリムが、ティーナやリサの判断を待たずに攻撃し始めるし。


「ティーナ、コイツと戦う意味は無いぞ!」


 リーダーに振り向いて言う。


「でも、ここまで来たんだし、ボスっぽくない?」


「ええ?」


「ん、最後にピンチになるのはお約束」


 いや、ミオ、そんなのはリアルには要らねえっての。


「まあでも、ブレスだけなんやろ? 動きも遅いし、前に出なければ、なんとかなるんちゃう?」


 ミネアが言うので、俺も気づく。


「そうだ! 首の前に出るなよ! 炎が来るぞ!」


 すでに、口を開けたら俺も飲み込めるんじゃないかという大きさの頭を出した亀は、ゆっくりとこちらを窺っている。

 なんだろ? やけに鈍いね。


「攻撃の意思がないのでしょうか…?」


 クロが言うが、いやいや、こいつ、明らかにモンスターだし、形はマグマタートルだ。


「あ、そうか! 起きたばかりで動きが鈍いんだ。倒すなら、今がチャンスだぞ!」


 言う。


「よし、じゃ、攻撃で!」


 ティーナが決断し、様子見していた魔法チームも攻撃の態勢に入る。


「雨よ凍れ、嵐よ上がれ、雷神の鉄槌をもって天の裁きを示さん! 落ちよ! サンダーボルト!」


 エリカが雷の上級呪文を唱え、空から派手に雷が落ちた。迫力のある音だなあ。分かってても思わずビクッとなるね。


 俺とクロとミオは氷の壁(アイスウォール)の呪文。

 多分、これが一番、効率がいい。


「むっ! 動いた!」


 リサが言い、それまでとは違う動きで、大亀がズシンズシンと前に歩き始める。

 チッ、その場にいてくれれば、持続範囲魔法で良い感じにダメージが行くんだがなあ。


「まずい、ブレス、来るよ!」


 ミネアが言い、うえ、長い首を上手く使って、斜めに向いてくるし。こ、こっち見んな!


 慌てて上に向けて氷の壁(アイスウォール)を使ったが、ぶわっと回り込んでくる火炎の風(ブレス)には効果が乏しい。


「あっつ! ひい!」


 慌ててブレスから一目散に逃げるが、HPがすーっと減るし、これは避けにくいタイプの攻撃だ。

 分かっちゃいたけどね。

 薬草を三枚ほど食べつつ、みんなのHPをチェック。リムとクロもちょっとダメージを受けてしまったな。


「いえ、自分のがありますから」


 クロも薬草を持っているので、そちらは任せ、リムを呼ぶ。


「リム、回復してやるから、ちょっと下がれ」


「まだかすり傷ニャ。平気ニャ」


 むう、常に満タンにしておかないと、クリティカルとか、怖いんだぞ?


「またブレス!」


 ミネアが警告し、皆が身構える。俺はアイスウォールを出す準備。

 あ、向こうを向きやがった。


「くっ!」


 レーネが炎をもろに食らったようで、HPが100近くも減った。おいおい…。


「レーネの回復は私がやるわ!」


 リサが宣言。これをやっておかないと、回復がかぶっちゃう時があるからな。

 しかも、今は、大きな敵を相手に散開して囲んでいるので、味方との距離がある。


「いいか、炎を浴びてる間は、息を止めてろ! 忘れてたが、喉と肺を焼かれるぞ」


 レーネが言うが、前にそんな炎を吐く敵とやり合ったことがあるような言い方だなあ。


「ブレス、またや」


 おいぃ。はえーよ。そんなに連続してブレスって吐けるもんなの?

 これじゃ、一度に多数が食らったら、回復、間に合わなくなるんじゃないのか。


「きゃっ! あっつ!」

「ニャー、来たニャー、熱いニャー!」

「くっ!」


 うわ、今度はミミとリムとティーナが一度に食らうし。


「ミミ! お前は戦闘員じゃないだろ! 下がってろ!」


 駆け寄りつつ怒鳴る。

 ここは厳しく言っておかないと。ドワーフだからそれなりに体力はあるんだが、レベルが低いからな。

 HPが120も減ったが、二回連続で食らうと完全にアウトだ。

 ミミのダメージが大きめなのは、魔法防御の低さが影響してるんだろう。


「ほら、ハイポーションだ。飲め」


「ありがと。ふう、生き返った」


「リムも」


「うん」


 ティーナはクレアが回復させたので、これでひとまず安心。

 このブレス、上級呪文ほどのダメージは出てないが、中級呪文よりも威力があるし、何より、範囲が広い。


「またや!」


 くっそ。だから、はえーっての。

 そのままやられて回復作業に追われるのも癪なので、ウインドボールの呪文を無詠唱でぶつけて炎の向きを変えてやった。


「よっしゃあっ!」


「ナイス!」


 敵の攻撃を妨害できるのはリアルの強みだな。ま、強制キャンセルがあるゲームもあるにはあるが。


 自分の顔に炎をぶつけてやったにも関わらず、特に嫌がる風も無くまた息を大きく吸い込み始める大亀。


「来るよ!」


 来いやぁ。何度でも撥ね返してやる!


 ブレスを吐いてきたので、またウインドボールで炎の向きを変えた。


「よし!」


「ううん、どうしたの、ユーイチ、いつもと感じが違うんだけど」


 ティーナが聞いてくるが。


「んん?」


「ほら、びくびくしながら、後ろの方で戦うのがあなたのスタイルじゃない」


「ああ、そりゃ、今回はミミとアクアがいるからな。下がれないだろ」


 ウインドボールの唱えやすい位置にいないと、という理由もあるのだが、第一はそれだ。


「ああ。うん、そうよね。あの子達は守らないとね」


「それに強敵だけど、戦えない感じの敵じゃ無いからな」


「ええ、そうね」


 相手はブレスを多用してくるものの、それさえ封じれば、動きが遅く、危険を感じない。

 大きさから来る威圧感は半端じゃないし、ブレスも見た目は派手なんだけど。


 だが、30ターンを経過しても、仕留められない。相手の防御力とHPが大きすぎて、こちらの火力不足は否めない。


「ティーナ、引きましょう。エリカのMPが尽きたわ。切り上げ時よ」


 リサが言う。


「ええ。仕方ないわね。引き上げよ!」


 先にロドルやミミ達を逃がし、次に魔法チーム、最後に前衛チームが離脱した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ