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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十章 子爵家の家臣

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第四話 引っ捕らえられた

2016/11/24 若干修正。

 真のネコミミ、ニーナのためにも一刻を争う。

 なんだかやる気の無さそうな皆を、ひたすら鼓舞して、なだめすかし、最後に泣き落としで宿屋を出たまでは良かったのだが。


「あっ! あの黒いローブの男ですッ!」


「ん?」


 俺を指差して叫ぶ若い男。そして後ろから一斉に甲冑を着込んだ兵士達がザザッと包囲してきた。


「気を付けろっ! コイツは間違いない、魔法使いだ!」


「ああ、なんて禍々しいヤツなんだ。アサシンみたいな真っ黒なローブを着てやがる」


「抵抗しても無駄だ! 大人しく投降しろ!」


「こ、ここからは逃げられんぞ! 観念しろ」


 何が何やら事情はさっぱり分からんが、街の警備担当者である兵士が、俺に何らかの容疑を掛けて逮捕しようとしているようだ。

 思わず両手を挙げようとしたが。


「う、動くな!」


「これだけの数に囲まれて逃げられると思っているのか!」


 いや、思ってないし。

 とにかく落ち着きませんか? 

 

 腰が引けてる奴が多いし、緊張しまくってるようだから、下手すると暴発しかねん。

 ここは、まず声を掛けるのが普通だろうが、呪文と間違えられたら、斬りかかってくる気がする。


 困ったなあ……。


 仕方なく、黙って動かないでおく。動くなって指示されたし。


「くっ! 何をするつもりだ…?」


「今のうちにさっさと仕留めた方が」


「いや、待て、下手に刺激して刃向かってこられたら、まずいぞ」


 ううん、素人臭いなあ。

 ひとまず、ここは敵意が無いことをアピールすべきだろう。


 練習した営業用スマイル。

 パーティーメンバーにも見てもらって、合格点をもらった。

 熟練度もそれなりに溜まってるはずだ。


 にっこり。


「わ、笑ってやがるぞ! コイツッ!」


「信じられん…この状況で」


「逃げおおせる余裕でもあるってか? 上等じゃねえか、こんちくしょう!」


 あわわ。なぜだ…。どうして俺のスマイルは上手く行かないの? 

 ただしイケメンに限るってヤツなの?


「落ち着いて下さい。抵抗はしません」


 収拾が付きそうに無いので、もう喋ることにした。

 なるべく、穏やかに喋るが…。


「嘘だッ! 騙されるんじゃあ無いぞ!」


「油断するな!」


 だから、お前ら、どうしたいのよ。

 

「この騒ぎは何? 隊長、説明してもらうわよ」


 リサが出てきて、ふう、助かった。

 そうね、責任者を個別で指名して説明を求めるのが一番よね。

 参考になるわー。


「む。水路に毒を投げ込んだ不届き者がいるという一報が入った。調べてみたところ、そこの黒い男が排水溝に白い液体を投げ込んでいたという目撃証言も出た。ようやく宿泊している宿を突き止め、来てみれば、逃げようとしているコイツがいたという訳だ」


 ああ、あれかぁ。あの牛乳か羊乳か、まあどっちでもいいんだが、ニーナが壺を割ってこぼしたのを処理したのを見られていたわけか。

 凄い誤解だが、状況としては理解できたし、納得も行く。


 もちろん、俺は犯人じゃ無いけどね。


「ふう、ユーイチは私達のパーティーメンバーで、カルマは一桁のライトロウよ」


「むむ、お前も仲間だったか」


「む、だから…」


「僕が捨てていたのは、仲間が割ってしまった壺の乳です。毒ではありません。スイッフナーの主人が知っていますから、調べてみて下さい」


 言う。


「ふん、時間稼ぎのつもりか。とにかく、詰め所まで来てもらうぞ」


「ええ、分かりましたよ」


「ちょっと、ユーイチ」


 リサが咎めるが、ええ? そこで否定して見逃してくれるようなシステムなの?


「でも、行かないと収まらないんじゃないのか?」


「犯人でも無いのに、のこのこ行く道理が無いわ。カードを確かめようともしない無能では、犯人逮捕もおぼつかないわね」


「なんだと! ふん、では、冒険者カードをこっちに寄越せ。いや! そこに置いて下がれ。取りに行く」


 冒険者カードを地面に置いて、下がる。


「もっと下がれ!」


 危険物扱いだなあ。

 ま、下がる。


「よし、お前、取って来い」


「ええ? 隊長、自分でありますか!」


「他に誰がいる、さっさと行け。これは隊長命令だぞ!」


「くそっ」


 兵士がビクビクしながらカードを拾ってダッシュで隊長の下へ戻った。

 二人で見る。


「む」


「分かったでしょ。じゃ、さっさと包囲を解いて、騒がしくした謝罪をして帰りなさい」


「黙れ! 仲間の言うことなど、言いなりになって堪るか。この冒険者カードは偽物かもしれん」


「ええ?」


「その歳でレベル37と言うのは高すぎるだろう」


 そんな事言われてもね。


「ふん、私達は大盗賊ルゴーを捕らえ、オズワードの悪魔を倒し、ラジールの鬼退治もやってきたのよ。と言っても、アンタ達は知らないかしら」


「んんっ? 大盗賊ルゴーにオズワードの悪魔だと? どこかで…」


「ああっ! もしかして、白マントで天に代わってお仕置きよ! の仮面美少女では?」


「なに? 高笑いをして悪を倒して行くという、あの仮面美少女か!」


「スカートをひらめかせて、見せてはいけないところまで見せる、あの変態仮面だと?! 実在したとは…」


 うわあ。

 いけません。

 噂に尾ひれが付いてるのか、とにかく、ティーナに殺されそうだ。


「ちょっと。本人が聞いたら、発狂するわよ。そんな事はしてないから。それに、レベルの偽造を疑うなら、手合わせしてみれば?」


「む、よかろう。ただし、魔法無し、攻撃無しで、やらせてもらうぞ」


「おお、隊長」


 え? リサがやるんだよね?


「アンタがやるのよ」


「そんな」


「疑われてるの、アンタだし」


「むう」


「隊長、レベル26の実力、見せてやって下さいよ!」


 あ、勝てるわ。


「よし、受けて立つ!」


 樫の杖を握りしめ、まあ、回避だけでやってみるか。ヤバそうならパリィも使って、すぐ降参だ。


「行くぞ!」


「いつでもどうぞ」


 俺が言い終わる前に隊長が真上に剣を振りかぶり、大きく踏み込んで振り下ろしてくる。

 ふむ、隊長を務めるだけあって、振り慣れてる感じだね。

 だが、アーサーに比べると実力は相当下だ。


「フッ。ひらーり、ひらひら~」


「くっ、コイツ!」


 今度は隊長が横薙ぎを繰り出してくるが、いったんバックステップで躱して、すぐに間合いを詰めて踏み込みを阻止。


「隊長!」


「なんだアイツ。凄い動きだ」


「本当にレベル37なのか…?」


 次第に、兵士達も俺の実力に気づき始めた。そりゃそうだろう。強いはずの隊長が一撃も当てられずに肩で息をしてるんだし。


「ま、まだまだあ!」

 

「もういいでしょう。レベルが26より上だと認めるわね?」


 リサが止めた。


「ぐ。ふん、認めてやる。くそっ!」


 隊長は不機嫌そうに悪態をついたが、剣は収めた。やれやれ…。




 そのまま俺は詰め所に連行され、取り調べを受けた。


「ですから、その奴隷が壺を割ってしまったので、可哀想に思って主人に金を払ったんですよ」


「ふん、口から出任せを。壊れた壺など買っても、仕方ないだろう」


「いえ、その奴隷が可愛い子で、粋に思ってくれるかなという下心があったわけです」


 俺も元奴隷で、叱られるのに同情したと言うよりは、こっちの方が信憑性があるだろう、そう思ったのだが。


「どこで毒を手に入れた? 誰の命令で動いている? 素直に吐かないと、痛い目を見るぞ?」


 ますます容疑が深まった感じ。薬草や調合したポーションを持っていたのもまずかった。


「ええ? まず、どうして毒だと気づいたのか、状況を教えてもらえませんか?」


「聞いているのはこっちだ! 質問に答えろ!」


 バンッと机を叩いて、ダメだ~、捜査に協力的な方がいいだろうと思ったが、この世界の取り調べは『疑わしきは罰せず』なんて原則は無さそうだ。

 リサが自分から同行するのはよした方がいいと言うような態度だったが、その通りだな。

 迂闊。


「いいからどきなさい」


 声に振り向くと、ティーナが迎えに来てくれたようだ。助かった…。


「勝手に入られては困りますぞ」


「私達は犯人じゃ無いわ。これ以上、拘束して犯人扱いするなら、ラインシュバルト侯爵家に対する侮辱と受け取ります。外交問題にもなるでしょうね」


「ぬぅ」


「じゃ、行くわよ、ユーイチ」


 特権階級、さすがっス! もうここは、細かいことは抜きして、立ち去ってしまおう。


「はっ!」


「待たれよ!」


「おお、伯爵様」


 むむ、トリスタン側の貴族が出てきたか。しかも、うーん、女性だけど、鎧を着たムキムキタイプ。

 紫の髪の毛をベリーショートにした三十代の人。苛烈な性格な予感がします…。


「我が名はイザベル=フォン=ドンヴェルド伯爵。貴殿の名は?」


「私はミッドランドはラインシュバルト侯爵家の娘、ロフォール領を預かるティーナ=フォン=ロフォール子爵です」


「ふむ、子爵か。ならばその者を連れて行くことは私が許さん」


 子爵より伯爵が上か…。


「不当です。ユーイチは毒を入れるような人間ではありません」


「だが、目撃者もいると言うではないか」


「見間違いかもしれません」


「いや、ティーナ、目撃した人が見たのは、壺が割れて中に入っていた乳を俺がアイスウォールで掃除したところなんだ。ただし、毒では無いし、そのスイッフナーの主人に聞いてもらえれば容疑は晴れるはずだ」


「こう言っておりますが?」


「おい、そのスイッフナーはどうなっている?」


 ベリーショートの伯爵が兵士に問う。


「は、まだ…」


「馬鹿者! 今すぐ探してこい!」


「は、ははっ!」


 兵士達が慌てて出て行く。

 ふう、話も聞かないサディスティックなお姉さんかと思ったが、意外にまともそうだ。


「さて、待つ間、この者の取り調べと行くか」


 どかっと机の向こう側の椅子に座った伯爵は、すぐに解放してくれない感じだ。

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