第十三話 発電機を作る村長
モーターを作る描写が稚拙で分かりにくいので、例の◇◆のマークで囲んであります。この部分を適当に読み飛ばしてもシナリオは把握できると思います。
2016/10/3 若干修正。
「ミミはもう一人前の大人だ!」
ティーナやみんなとの夕食で、俺は声を大にして宣言する。
「は?」
「お、お兄ちゃん、そんな、恥ずかしいよ…」
ミミが照れるが、お前は凄い奴だ、胸を張って良いぞ。
「ドワーフの幼女にまで手を出すとは、オーク真っ青の鬼畜ですね」
メイドのメリッサが澄まし顔で言った。
「ファッ?」
「ユーイチ、どういうことか、きちんと説明して」
ティーナがこちらをじっと見て言う。
「お、おう、ご、誤解するなよ? 鍛冶職人として一人前と言っただけだから。手は出してないよ」
一同が顔を見合わせて、ほっとした表情を見せる。
いやいや、待ってくれ、そんな俺は危険人物に見えてたの?!
仲間の信頼の無さが悲しいです……。
「それなら、そんなに力んで宣言する必要無いでしょ」
リサが言うが。
「いや、今日、竃を作ってやって、炭掴みを叩いてもらったんだが、きちんとできたし、ミミは凄いんだよ」
「へえ、やっぱり鍛冶屋の娘なのね」
ティーナはすぐに納得してくれた。ふう。
「それ、壊れた鍋とか、直せるってこと?」
リサがミミに聞く。
「うん! ホントは溶鉱炉が欲しいけど、くず鉄があれば、鍋も直せるよ!」
「へえ、凄いな。じゃあ、うちの行ってる村から、いくつか、直して欲しいもんがあるんやけど、ミミちゃんに打ってもらおうか」
ミネアが言うと、ミミがすぐに頷いた。
「いいよ!」
「ニャ! 私は魚を焼く網を作って欲しいニャ!」
「いいよ!」
「じゃあ、私は剣でも…」
レーネが言い掛けるが。
「待て待て、さすがに剣はまだ無理だろう。それに、いっぺんに仕事をやらせるのもキツイから、順にな」
ミミがポンポン引き受けているので釘を刺しておく。
「そうね。でも、色々直してくれるとなると、心強いわね」
ティーナが言う。
「任せてよ、お姉ちゃん!」
頼もしい限りだ。
翌日、俺も負けてはいられないと、魔道具の天秤と、探知の呪文を使って、磁石を探してみた。クロも一緒だ。
電気モーターを作ろうと思ったん!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「割とあるもんだな」
手のひらほどの、大きめの磁石。一度くっついてしまうと、ゴーレムの力で無いと外せないくらい、やたら強力だ。
これを二つ、ストーンウォールの魔法で変形させ、同じ湾曲した平べったい形の磁石にする。手のひらで喩えると、手の甲がN極、手のひら側がS極だ。
次に、コイルの導線。ミミに頼んで、銅鍋を一つ叩いて潰し、極細の針金を作ってもらった。
軽く丈夫な石を見つけてそれを呪文で変形させ、三つ又に分かれたコイルの土台を作り、それに導線を巻いていく。
巻く方向はよく分からないので、適当に。上手く行かなかったら、まき直しだ。
モーターの外殻部分は、ストーンウォールを使い、モーターの軸はミミに鉄棒を作ってもらった。
ベアリングも欲しかったが、さすがにそれはミミもすぐには無理だという。
モーターの外側に永久磁石を二つ置いて、磁場を作っておけば、フレミングの左手の法則で、引き合う磁力と、反発する磁力の方向が分かる。
ま、現物のモーターを分解して見た事があれば余裕だよね!
小学校の頃にミニ四駆を改造して遊んだ俺の手に掛かれば、どうと言うことは無い。
ストーンウォールでクランク式ハンドルも作り、モーターの軸に直結させておく。
コイルの両端は円形の筒を真っ二つに切ったような電気のスイッチ部分として、回転すればコイルの電流の向きが変わる仕組みだ。
スイッチ部分の一方は細い導線を束ねて刷毛のようにしておく。ブラシだ。
………。
一応、電気モーターっぽい物が完成した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さて…うおりゃあああああ!」
ハンドルを回してみる。良い感じの抵抗感があるんだが、成功してるかな?
「じゃ、クロ、その導線をくっつけてみてくれ」
「は、はい」
クロには原理は説明したが、顔には?マークがいっぱいという感じで、まあ、実物を見てもらった方が早い。
「何も起きませんけど…」
「むむ?」
おかしいな。ひょっとしてこの世界は電気が使えないとか?
いやいや、待て待て。
多分、コイルの巻き方を失敗してるんだろう。
そう思って銅線を巻き直そうと触ったが、外側の一部が熱い。
「あちち、んん? これは…」
電気が発生して、だが、短絡したのか?
「あ! この銅線、タダの銅だよな」
包む絶縁体やカバーも何も無いため、導線としての役割を果たしていないのだ。
迂闊。
「じゃ、絶縁体になるモノを…、絶縁体って材料はなんだっけ?」
分からん。セラミックやゴムやプラスチック系だろうとは思うが。
そこでクロにも手伝ってもらい、手っ取り早く樹液を使ってみた。樹脂ってそれのことだろ? 違ったかな?
「じゃ、もう一度…うおりゃあああああ!」
「うっ、何か、臭いです。焦げるような…」
「むむ、げげ、煙が」
回転を止める。煙が出るようなモーターなんて危なくて使えたもんじゃない。
「ううむ…」
きちんと絶縁してくれて耐熱性も高いモノが必要だ。
「思い出せん…」
仕方ないので頼れる魔道具『求めの天秤』を使う。
適当に街で使えそうなモノを集めてその辺に置いて、左辺に想像で絶縁体をセット。
すると。
「うおっ?!」
後ろから大きめの壺が飛んできて天秤の右辺に乗っかった。
「いや、それはちょっと、違うんじゃね? まあ、絶縁は陶器で行けるってことなのかな。あっ!」
光沢のある陶器は、表面に何かが塗ってある。
コレだ。
ぴーんときたので、その壺の表面をヤスリで削って、その粉を分析。
【名称】 琺瑯(エナメル)
【種別】 うわぐすり
【材質】 粘土
【耐久】 10 / 100
【重量】 1
【総合評価】 CC
【解説】 陶器のうわぐすり。
色や光沢を加える為に使う。
高温で熱する必要がある。
ああ、エナメル線とか有ったな、そう言えば。
ただ、普通にやったら、加工は難しそうだ。均一に細い銅線に塗って高温で焼き上げるのは。
「だが、しかーし、俺にはストーンウォールが有るッ!」
街で焼き上げ済みの壺をいくつも買い、それにストーンウォールの呪文を使うと…。
透明な琺瑯は水飴のように移動して銅線に伸びていく。
「完成!」
さっそくもう一度、クロに導線を持ってもらって、モーターを回す。
「いいぞ、クロ、先端をくっつけてみてくれ」
「はい、あっ! ひ、火花が出ます」
「よし! それが電気だ」
「電気…えっと、電撃の呪文の火花と一緒ですか?」
「うん。まあ、呪文の方が遥かに簡単だけどな」
ひょっとすると、この世界の人も、すでにこういう仕組みは知っているのかもしれない。
魔法の方が便利だから、魔法ばかり発達してるのかも。
でも、電気モーターの電気は、上手く使えば魔法と同じくらい役立つからね。
ストーンウォールの呪文で、モーターを解体し、コイルの導線を一部、逆方向にまき直してみる。
組み立てて、ハンドルを回す。
「あ、火花がさっきより弱いです」
「逆かぁ」
また組み直して、試行錯誤を重ね、火花が一番強くなる位置や巻き方を見つけた。
「そして! ここからがユーイチ式永久機関の神髄!」
ゴーレムにハンドルを回させます。
「GHAAAAA!」
バキッ!
うえ、ハンドルを折りやがった!
「力の加減が分かってないなあ。くそ、モーターの軸が曲がってなきゃいいが」
幸い、石のハンドル部分が折れただけだった。
ハンドルを太くして、ゴーレムが回しやすいよう、大きくする。
「あんまり力を入れずに、こう、回転させて回すんだぞ」
「GHA…」
くそ、知能の限界か!
「まあいい、ゆっくり回せ」
「GHA!」
ゴーレムの腕に手を添えて、力の加減を調節。
「よし、その感覚でスピードを上げろ」
「GHAAAAA!」
「お、行けるか。んじゃ、分析!」
【名称】 電撃発生器
【種別】 魔道器
【材質】 石、鉄、銅、エナメル
【耐久】 1500 / 1500
【重量】 20
【総合評価】 CCC
【解説】 錬金術師ユーイチが作った魔道器。
魔力の無い者でも電撃を作れるようになる。
ただし、攻撃範囲は銅線の届くところまで。
銅線も自分で動かす必要がある。
うーん、そう言う評価ですか…。
あくまで攻撃用として見るんだね。
Sクラスの永久機関として認定されるかも、と期待した分、がっかりだぜ、アナライザーさんよ。
「確かに、使い勝手の改良が必要かと思います」
クロも攻撃用と勘違いしてるし。
「いや、これはこれでいいんだ。別の使い方をするからね」
「はあ」
電気の使い道として真っ先に思いつくのは明かりだが、これはライトの呪文があるために、ほとんど意味が無いし、俺にはLEDなんて作れないと思うので、むしろ劣化する。
光、熱、動力、冷却、コンピューター。
コンピューターも無理だと思うので、やるとしたら熱と動力と冷却だよね。
そして、最も簡単なのが熱だ!
電気抵抗の強い金属に電流を流せば、熱に変わる。
「次はクロムを探すか」
天秤を使ってみたが、引き寄せられなかったので、諦めて探知の呪文で探す。
「うーん、見つからない…」
クロムって産出する国が偏ってるから、この近くには無いのかもしれない。
「電気を通しにくい金属???」
ミミにも聞いてみたが、電気の概念が無いために、向こうもちんぷんかんぷんだ。俺もクロムについて詳しく知っている訳では無いので、黒色かなあ?と言うことくらいしか伝えられない。
「困ったな…」
「お役に立てなくて、申し訳ないです…」
「いやいやいや、クロは役に立ってくれてるし、気にするなよ。次は鉱山を探してみるから」
「あ、金属と言えば鉱山ですものね」
「そうだな」
さて、この地方で物知りな人と言えば…。
「ジーナおババ様、これを献上に参りました」
サロン草だ。腰が悪いと言ってたし。
「で、あたしに何を聞きたいんだい?」
さすが年の功、話が早い。
「は、電気を通しにくい金属を探しているのですが、珍しい金属が採れる鉱山ってこの近くにありませんか?」
「電気というのがよく分からんが、珍しい金属の鉱山なら、砦の東の山に、鉱山跡があるぞえ。あそこは鉄鉱石が採れると、一時期賑わったが、質が悪いと言うてすぐに閉山したからの」
「ありがとうございます」
クロムが混ざった鉄鉱石って、むしろ質が良くなるはずなんだが、まあいい、鉱山がこの近くにあるんなら、行ってみるか。
翌日、ミミとクロと俺、それに護衛のケイン達を連れて、ロフォール砦の東に向かう。ロフォール砦は現在、ティーナの支配下に有り、ラインシュバルト家から派遣された騎士団が駐在しているので、危険性は全くない。
「ここだな」
山道に入っていく。モンスターを警戒したが、スライムやそれに毛が生えた程度で、余裕だ。
「ここですね」
先頭を行くケインが見つけた。人の手が加えられた鉱山跡。
明かりの呪文など、必要な物を唱え、探知の呪文を使っていく。
「むっ! 有った!」
「ホント!?」
強い反応があり、そこをミミにツルハシで掘ってもらう。
ここ掘れワンワン!
「あー、これは、赤邪鉄だね、お兄ちゃん」
赤邪鉄?
赤黒い、ちょっと透明感のある鉱石。
「どんな鉄なんだ? ミミ」
「それが、これが混ざってると、錆びないけど、なかなか溶けないし、硬いから加工も難しいんだよ! ドワーフ泣かせの鉄」
「ほほう。これを針金にしてくれって言ったら、怒る?」
「えっ、まさかこの前の極細の?」
「いや、あれより太くて良い。むしろ、丈夫な方が良いから、俺のローブを作った時のミスリル線くらいで」
「あ、なら、やれると思う」
「よし。じゃあ、それを持って帰ろう」
ロドルの荷台に載せて、村に戻る。
薪と石炭とファイアスターターの枝を突っ込んで、火力最大で熱し、ミミとゴーレムに叩かせる。
鉄くずの時はあっという間に加工したミミだったが、今回はやはりドワーフ泣かせの鉄とあってか、なかなか伸びてくれない。
「ミミ、今日中で無くていいんだからな」
「大丈夫! ゴーレムがいればすぐだよ!」
ミスリルの大金槌を振るうLv37のゴーレム。疲労もせず、熱さも物ともせず、技術や知識は無いが、アシスタントとしてはなかなかだろう。
「できたー!」
五時間かけて、針金にしてもらった。赤黒い針金。
「ご苦労様。ほれ、猫の実」
「わーい」
翌日、それを電気モーターの銅線に繋いで、ゴーレムを起動。
「おっ! 光ってきた!」
「あ、そうですね!」
手を近づけてみると、充分な熱が感じられた。
「よし、ヒーターの完成だ」
これを使えば、ミミの竃をパワーアップできるかも。他にもドライヤーが作れるはず。
大きめの電気モーターをもう一つ作り、ヒーター部分をミミの竃の内側の石の中に埋め込んでみた。
「あ、ホントだ。熱さが上がってる」
これで薪の不足分を補えるだろう。
後はドライヤー。
完成はしたが、ゴーレムが向こうでハンドルを回し、発電機を一度通し、モーターでまた回転運動という何とも無駄の多い機構だ。
まあいい。使えれば、見た目はどうでも良いよな?
ついでに、電気湯沸かし器付きのお風呂を、石で作ってみた。
「あー…良いわあ」
湯船に肩まで浸かって、極楽、極楽。
たらいの上で体を洗うより、ずっと良い。
ティーナの屋敷にも設置してみたが、女性陣の評判はすこぶる良かった。
「体が洗いやすいし、ドライヤーも良いわね!」
ま、本物のドライヤーを知らないとそんな感想だろうな。
小型化が課題です…。
【名称】 湯沸かし器付き風呂場
【種別】 魔道器
【材質】 石、赤邪鉄、銅、エナメル
【耐久】 3000 / 3000
【重量】 1200
【総合評価】 A
【解説】 錬金術師ユーイチが作った魔道器。
魔力の無い者でもお湯を作れるようになる。
ゆったりとお湯につかれる設計で、
極楽気分を味わえる。
【名称】 温風器
【種別】 魔道器
【材質】 石、赤邪鉄、銅、エナメル
【耐久】 1000 / 1000
【重量】 50
【総合評価】 BB
【解説】 錬金術師ユーイチが作った魔道器。
魔力の無い者でも温風を作れるようになる。
髪を乾かしたり、洗濯物を乾かすのに最適。
髪を乾かすときは、丈夫な台の上に置いて使う。
発電機の登場は1821年、ドライヤーの発明は1905年、小型化されたのは1921年くらいのようです。発電機はあまり注目されなかったそうですが、電気を利用する便利器具が出てこないと一般人にはその真価が分からないですよね。
追記。紀元前1425年には琺瑯(エナメル)が存在していたようです。




