第九話 祭壇を作る村長
2016/11/22 若干修正。
夕食の時、ミオに話を通して、ゴーレムの魔法陣の材料を分けてもらった。石灰と黒ヤモリなので、街に自分で買いに行くか、探知の呪文で探せば良いのだが、面倒臭いし。ミオもゴーレム大量生産計画を練っているようで、大量に材料を仕入れていた。
「さて…」
翌日、セルン村に向かい、祭壇建設予定地の近くでゴーレムの魔法陣を自分で描く。
呼び出すレベルはMAXの37レベル。魔石は持っていなかったので、レーネにそのレベルの魔石を譲ってもらった。
色々、呪文をアレンジして格好良く呼び出したいところだが、魔石もこのクラスは貴重なので、ミオ師匠に教わった通りに呪文を唱える。
「出でよ!、ゴーレム!」
………がーん。
何も起きない。
俺の血じゃ、ダメみたいね。
「では、私の血を」
クレアも待機しててくれたので、ま、こうなるか。
「いえ、ユーイチ様、私の血を使って下さい」
クロが言うが。
「いや、クロ、クレアがもうやってくれるって言ってるし」
「でも…」
俺の役に立ちたいのだろうが、そこまで頑張らなくても、充分やってくれてると思うんだけどね?
「では、クロさんの血を使いましょうか」
クレアがそう言うので、頷く。
「では」
クロが魔法陣の近くに寄って、ウインドカッターを指の腹に自分で当てて、血を流す。すぐにクレアが治癒の魔法で回復してくれた。
よし、準備は整った。改めて。
「出でよ!、ゴーレム!」
「GHAAAAA!」
えっ、ちょっ! ぼ、暴走?
「く、クロ、離れてろ!」
「いえ、私も戦います!」
いやいやいや、前衛が今いないんだし。
三人に緊張が走ったが、咆哮したゴーレムは、動かない。
「…む。大丈夫か。右手上げて。左手上げて。右手下ろして、左手下ろさない。おお」
きちんと命令も聞いた。
「ああ、良かった。成功ですね」
「成功だが、なぜに咆えた…。強いレベルになるとああなるのか?」
もっとミオに詳しく聞いておけば良かった。心臓に悪い。今回はかなりの力が必要なので仕方なかったが、無駄に高レベルのゴーレムを作るのは止めておこう。
あと、ミオが作っていたゴーレムとは形がちょっと違う。俺の意識が反映されたのか、流線型の近未来的なフォルム。硬そうなので、指でつついてみたが、コンクリートのようにカチカチに固まっている。
強そうだ。
「なんだか、格好良いですね」
「おお、分かるか、クロ」
「はい」
じゃ、次だ。このゴーレムに土を掘らせても行けそうだが、時間が掛かりすぎるだろう。
俺とクロでアースウォールの呪文を使い、土をどけていく。
土を軟らかくしたり自在に動かしたり出来るこの呪文、役に立つなぁ。
「よし、もう良いだろう。行け、ゴーレム!」
石を掘り起こせと念じて、命令を下す。
「GHAAAAA!」
また咆えるし。一体では無理かと思ったが、自分と同じ大きさの大岩をボコォ! と両手で抜きやがった。
凄い力だな。
「よーし、ゆっくり、上がってこい。オーライ、オーライ」
岩を持たせたまま、穴から上がらせる。上手く行った。それを繰り返し、四つの大岩を全て掘り起こした。
「クロ、埋めておこう」
「あ、はい」
大穴は、誰か落っこちたら危険だからな。
アースウォールで埋めようとしたとき、クロが止めた。
「あの、ユーイチ様、待って下さい」
「ん? どうかしたか」
「はい。あの岩が、少し気になるのですが」
「んん? どれ?」
「あれです」
クロが指差すが、小さな岩がいくつかあって、どれかよく分からん。
「ううむ」
「じゃ、拾ってきますね」
「あー、待て待て! 危ないし、探知の呪文でやるから」
条件付けを『クロの気になるモノ』に限定して試してみる。
「あれか」
すぐに分かった。
「はい」
「じゃ、ゴーレム」
「GHAAAAA!」
「いちいち咆えなくて良いんだが」
はっきり言って、うるさい。
「GHA…」
むっ? コイツ、意思があるのか?
いや、まさかね。
魔法生物で、低い知能はあるが、命令を理解する程度だ。
…でも暴走したら怖いから、後で片付けておこう。
「なんか、卵みたいだな…」
ゴーレムが掘り起こしてきた岩は、卵形の楕円の石だった。大きさは縦四十センチ、横幅は二十五センチと言ったところか。
これが真っ白ですべすべなら、
卵だ! 怖いから埋めて戻しておこう!
と、なるんだが。
あちこちヒビが入ってるし、でこぼこだし、まあ、タダの岩だな。
「そうですね! 暖めたら、何か、孵ってきたりして」
「ええ?」
クロは何か可愛らしいひよこでも想像しているのかも知れないが、俺の方は、良い予感が全然しない。だって、こんな深いところに埋まってるんだぜ?
まあ、偶然、そんな形になった岩だろうけどね。河原の石と同じで、ぶつかって…いや、それだと、この辺の岩は全部、丸くなるんじゃ…?
………。
恐竜の卵の化石とか、あれだな、クーボの卵の化石とかだろう。うん!
「クレア様はどう思いますか?」
クロが聞く。
「うふふ、さあ、私には分かりませんね。ですが、不思議な力を感じます。微かに、ですけど」
「あ、じゃあ、私、暖めてみます!」
「ダメ」
言う。
「ええ? どうしてですか?」
「変なモノが孵ってきたら困るだろ。それに、これは卵じゃなくてもう化石だよ。石化してるから、死んでる」
「ああ…」
「もう、ユーイチさん、子供の夢を壊さないであげて下さい」
「いや、そう言われてもね…」
今日からクロが毎晩、この石ころをベッドで抱きしめて楽しみにしているのを考えると、それはちょっと…と思うもの。
「クロ、どうせなら、クーボの卵、買ってやるから」
「ホントですか! わぁ! 私、クーボ、飼ってみたいです」
この世界にいる二メートル近いひよこ。あれなら、多分、大丈夫だろ。あんまり可愛くはないが、荷車を引かせるのにも役立つし。
今度、街で売ってたら、買っておいてやろう。
「じゃ、穴を埋めるぞ」
「あ、はい」
アースウォールでまた埋めて、ふう、一仕事、終わった。
「ここからだが…」
岩をウインドカッターで削るのはおそらく不可能だ。一応、試してはみよう。
「風よ、刃となりて敵を切り裂け! ウインドカッター!」
おう、やっぱり傷一つ付いてないね。
「ダメですね…」
「フフフ、だがしかし、俺には奥の手がある! 柔らかきは硬く、硬きは柔らかなり。石よ、我に従え、ストーンウォール!」
ピラミッドの王が唱えていた古代魔法!
密かに小石で練習して、熟練度を育てておりました。
石を盛り上げるだけならそこまで難しくないが、祭壇の形に整形するとなると、熟練が必要になる。
「わあ」
クロが喜ぶ顔が良いね。
「クレア、こんなもんでどうかな?」
「はい。そうですね…ここの紋様をもう少し、くっきりお願いできますか?」
「お、おう」
注文、細かいな…。
予め、どんな祭壇の形が良いのか、クレアに紙に書いてもらったり、説明はしてもらったのだが。
もう一度、呪文を唱え、そこだけ整える。
「…はい! これで良いです」
じゃ、後は残りのポイントまで、ゴーレムに運ばせるか。結構、遠いんだよね…。
ポイントの近くで探して掘り返す方が早いかな? まあ、もう掘っちゃったし、面倒。
四つの祭壇を作り終える頃には、日が暮れて、疲れ果ててしまった。
「では、結界の儀式はまた明日と言うことで」
「うん…」
翌日、みんなや村の人間も集めて、少し、祭事っぽくする。
「ファルバスの神々よ、ここに謹んで願い奉り、聖なる土地ならんことを」
クレアが長い祈りを捧げ、最後にその言葉を告げると、祭壇から暖かな白い光が出た気がした。
「皆様、ありがとうございました。これで、儀式は無事、終了です」
振り返って笑顔を見せるクレア。
「ありがたや、ありがたや」
村の老婆が熱心に手を合わせているが、信心深い人のために、神殿とか作るのもいいかもね。




