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異世界の闇軍師  作者: まさな
第八章 村長だべさ

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第一話 ティーナをなだめる村長

2016/11/22 若干修正。

 謁見が終わり、座ったまま呆然としているティーナに手を貸してやり、一緒に広間を出る。

 ティーナの顔色が悪いが、そんなに厳しい状況なのかね?

 敵に領地を取り返されたら取り返されたで、諦めてお父様の城へ戻ればいいじゃん、と思ってしまうのだが。

 その辺はどうなのか、後で聞こう。


 王宮の廊下を歩いていると、ようやくティーナの思考が戻ったようだ。


「どうしよう。お父様に叱られる…」


「ええ? 君は抗弁しようとしたけど、認められなかったわけだろ? 不可抗力だから、仕方ないよ」


「でも、私があなたを王宮直属の騎士にしたり、他にもあそこでオズワード領を素直にもらっておけば、こんなことには…」


 それはあるかもね。


「ふむ、でも、オズワード領をもらっても、宰相の言っていた感じだと、統治に苦労するんじゃないの?」


「どうかしら。あそこの騎士団はともかく、領民はそんなに反発しないと思うんだけど」


「なぜ?」


「なぜって、平民が貴族に反発するってよっぽどの事よ?」


「ああ、まあ、力で押さえつければ、ぐうの音も出ないか」


「む、そうだろうけど…」


「ともかく、宿に戻って、君のお父さんにも報告だね」


「ええ。そうだ、すぐ出発しましょう。いったん、ラインシュバルトへ帰るわ」


「ふむ。まあ、すぐにロフォールに行っても、どうしようもないか」


「当然でしょ。先にお触れを出しておいてもらわないと領主として認められないだろうし、最低でも騎士団を連れて行かないと、むう、ラインシュバルトの力を削ぐのが目的なのかしら」


 可能性は有ると思うが、ティーナと俺が仲が良いと言うのは国王も知っているので、領地を与えずに金品で済ます方が、確実だろう。俺の後見人に別の貴族を当てる事もできたんだし。とは言え、ラインシュバルトを後見人に指名しないと、ラインシュバルトの騎士団は出てこないわな。

 やれやれ…。


「一度、国王陛下とラインシュバルトの関係とか、貴族関係もしっかり聞いておかないとな」


「ええ。次は、あなた一人で謁見するかも知れないし、その辺も伝えておかないとね」


「うん」


「あっ。どうしよう? みんな付いて来てくれるかな?」


 ティーナが心配するが。


「多分、みんな付いて来ると思うぞ。それに、領主になっても、休暇くらい取れるだろ。その時に冒険なりすればいいし」


「あ、うん。代官を置けば、大丈夫!」


 なるほど、その手が有ったか。


 だが、その手は、宿屋でリサにダメ出しされてしまった。


「ダメよ。敵が取り戻そうとする領地を、他人に任せて領主が遊ぶなんて、そんな余裕有るわけないじゃない。統治が落ち着くまでは、冒険は禁止ね」


「そ、そんな…」


「いや、大丈夫だと思うぞ? 領主と言っても、遊んでばかりのもいるだろう」


 レーネが言うが、お前のことだよな?


「まあ、その辺は実際に領主をやってみてからやないかな? みんなは、ティーナに付いていくつもりなん?」


 ミネアが聞く。


「当然ニャ! リーダーはティーナなんだから、どこにでも行くニャー」


「わ、リム、ありがとう!」


 完全に餌付けされてるもんな。俺もだけど。


「私も、アンタ達が心配だから、付いてってあげるわよ」


「ありがとう、リサ」


「ユーイチ様も、ロフォールに行かれるんですよね? なら、私も行きます」


 クロは俺に付いてくる様子。行き先は敵国との国境付近、心配だが、ラインシュバルトでお留守番させるのもちょっと可哀想かな。


「私も、二人について行きますね。うふふ」


 クレアは、巡礼とかはいいのかね? まあ、俺の村でしばらく司祭をやってもらうのも良さそうだが。


「ん、師匠について行く」


 いつの間に俺はミオの師匠になったのやら。魔法は教えてもらう立場なんだけど、まあいいや。


「もちろん、私も付いていくぞ。面白そうだからな」


 レーネも決定。あなたの故郷が多少心配なんですが、まあいいか。


「む…じゃ、私もティーナに付いていくから」


 俺を見ながら、そう言うエリカ。俺は別の場所には行かないんだけど…。


「良かった。みんな一緒だね。ありがとう」


 ティーナが笑顔で礼を言う。偉ぶらない貴族ってカッコイイ。


「じゃ、すぐに出発しましょう。荷物をさっさとまとめてチェックアウトよ」


 リサがてきぱきと指示して、うん、こいつは俺たちが領主や村長になっても、上手く動いてくれそう。


「あ、ついでに馬車にしましょう。その方が早いし。頼んでくる」


 ティーナが馬車を手配し、四人乗りの三台に分乗して、一路ラインシュバルト領へ。


 一台目は俺、ティーナ、リサ、クロの四人。二台目はレーネ、ミネア、リム。三台目はエリカ、ミオ、クレアとなった。

 喧嘩が起きるようなら席替えもと思ったのだが、杞憂だった。


 道中、主立った貴族の名前と特徴、どことどこが仲が悪くて、どこがラインシュバルト派閥なのかをティーナに教えてもらい、とても一度では覚えられないので、記憶(メモリー)の魔法でメモっておく。

 

「あの税務大臣、ディープシュガー侯爵は、ラインシュバルト、ライオネル、エクセルロット、アーロン、どことも仲が悪いけど、取り巻きが多いから注意が必要ね。あと、宰相のオーバルト侯爵も大貴族の一人だけど、あそこは王家に近くて、他はどことも距離を置いて中立って感じだから」


「ええと、悪代官に、ティーナに、アーサーに、縦ドリルに、大将軍、宰相か。アーサーの家はどうなんだ?」


「そうね、うちとは懇意にしてるし、縦ドリ…? おほん、縦ロールのアンジェの家とも仲が良いわ。大将軍の家とも親しいんじゃなかったかしら」


「アンジェの家は?」


「ディープシュガーとアーロンとは仲が悪いわね。エクセルロットは財務大臣で、街道の整備を司ってるから、軍事予算を取りたいアーロンとどうしても衝突しちゃうのよ」


 財務省(-国税庁)+経産省+国交省 vs 防衛省か。

 縦ドリル強えな。


「ふうん。ああ、街の整備は、各領主の分担なわけだね?」


「うん、そうなんだけど、ユーイチって飲み込みがやたら早いわね…感心する。うん、ホントに凄い」


「さすがですね、ユーイチ様」


「確かにそうね」


 ティーナ達に尊敬の眼差しで見られてしまったが、向こうでそれなりに教育は受けてきてるからなあ。

 wiki先生やググれ先生もいるし。



 ミッドランドには、日本の省庁に当たる大まかな役職が十二ほどあり、

 

 人事、税務、財務、整備、軍務、軍備、造幣、王宮、魔術、宝物、外務、監査


 となっている。

 王宮とは王城の整備や親衛隊の維持、貴族の接待などの事だ。



 割り振りはこんな感じ。


 国王   造幣、人事(領地)(外交)

 宰相   王宮、人事、宝物   …… 式部とも呼ばれる

 悪代官  税務(測量)     …… 民部 以下同様

 縦ドリル 財務、整備      …… 商部

 アーサー 外務(交易)     …… 接部

 アーロン 軍務、軍備      …… 兵部

 ティーナ 軍務、監査      …… 探部

 バルシアン 魔術        …… 星部

  

 祭事は神殿(教皇)が受け持つため、予算も権限も別だ。

 軍備と司法は領主各自がやるのだが、軍閥のアーロン侯爵は装備や攻城兵器などの管理も国家予算付きで行う。

 


 なぜ宰相が宝物の管理をしてるのか、ちょっと俺には疑問なんだけど。国宝って王様の私物とはちょっと違うみたいね。


 役職がかぶってるところや、二重予算もあるので、スッキリしないが、俺やティーナに関係してくるところだけ気にしておけば良いだろう。

 

 ・税務調査を行う、悪代官(ディープシュガー)

 ・街道の整備をやってくれる、おほほ縦ドリル。

 ・貿易で発展させてくれそうな、アーサー。 

 ・サボりや横領を見張る、ティーナ(の、お父様)


 

 特に悪代官には注意が必要だ。

 一年目は無税だが、二年目から税を取られると思っていた方が良い。

 小麦が十トンしか取れないのに「ここは二十トンは取れる!」なんて報告されてしまうと、きちんと王宮に納税しても横領だのなんだのと、いちゃもん付けられること間違い無しだ。

  

 謁見の場でもティーナに当てつけを言っていたが、ラインシュバルト家と仲が悪いと言うのが嫌な予感しかしない…。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「そうか…ふうむ」


 ラインシュバルトの城に到着して、執務室でその件を二人で報告したが、やはりティーナの父も渋い顔だ。


「ごめんなさい。あの場では、とても物言いが付けられる雰囲気じゃなくて」


「それは仕方ないが、その前、オズワード領を(たまわ)りそうになった時に物言いを付けていなければ、という気もするがな」


「はい…」


「ま、二人とも叱責せねばならない失態を演じたわけでも無い。昇格したわけだからな。おめでとう」


 笑顔でおとがめ無しのようだ。良かったな、ティーナ。俺もだけど。


「あ…」


「ありがとうございます」


 すかさず礼を言っておく。


「ありがとう、お父様」


「うむ。だが、陛下のご期待はかなりハードルが高い。あるいは、ラインシュバルトを削りにかかったのかもしれん」


「そ、それは、どうするの?」


「削らせてやれば良い。少々削れたところで、我が家がお取り潰しになるわけでもないからな」


 あっさり言うティーナの父。さすがは名門の大貴族、余裕が違う。


「だから、いざと言うときにはお前は体よく脱出して、ここに戻って来るのだ。いいね、ティーナ」


「はい。ユーイチも、連れて来るけど…」


「騎士ならば主を守ってしんがりをやれと言いたいところだが、その顔だとそんな命令をしようものなら、出奔か」


「ええ、もちろん」


 ティーナが言う。


「なら、仕方ない。ユーイチ、どんなことがあっても、ティーナを無事に連れ帰れ。それ以外でここに来ることは許さん。いいな?」


「はい、必ず」


「む、お父様、私に万一のことがあっても、ユーイチを責めないで」


「むう」


「ティーナ、君に万一のことがあったら、僕がここに戻って来る意味は無いよ」


「でも…」


「それより、ロフォールの統治を成功させることを考えるべきだ。準備は入念にしておかないと」


 ヌール子爵邸に押し入った時のような体たらくはやってはいけない。


「そうね」


「ふむ、なるほど、やはりタダの奴隷では無いな。どこの落とし(だね)か密偵かは知らぬが、よかろう。私も全面協力と行こう。その代わり、ティーナをしっかり支えるように」


「はい、お約束します」


「あの、そこ、私が後見人なんだけど?」


「ふふ、そうだったな。役立たずの後見人などと陰口を叩かれないよう、まあ、頑張りなさい」


 笑うティーナの父は、そうなるとは全く思っていない様子。


「ちょっと…何でお父様は、私がユーイチより下みたいな言い方をするのかしら?」


「そうは言っていないが、領主としての心構えと判断力、お前も少し反省して、ユーイチから学べるものがないか、よく見ておきなさい」


「屈辱だわ…良いでしょう。ユーイチ、あなたの直轄の村と、私の直轄の村で、どちらがより繁栄するか、勝負しましょう」


「ええ? そんな無意味な勝負で、村人をこき使うつもりなのか、君は」


「むっ。別に、村人をこき使わなくたって、村を大きく出来るわよ」


「そりゃまあ、お父様に泣きついて、金をどんどん落とせば良いだろうけどさあ」


「だ、誰が泣きつくと言ってるのよ」


「いや、まあそこは言葉の綾だけど、はっきり言っておくぞ。最優先事項は、ロフォール領の維持だ。平和条約が切れる三年以内に領地を掌握し、敵の襲撃を撃退するだけの戦力も確保する必要がある」


「む…ま、待って。三年で敵が攻め込んでくるみたいな言い方をしてるけど、条約の延長だって出来るだろうし、攻めてくると決まってるわけじゃ…」


「ああ、攻めてこない場合ももちろんあるが、その時は何もしなくていいんだ。だが、攻められて防衛もろくに出来ない状態なら、君の命にも関わってくるから、本当に後が無くなるよ。それに、王子の身柄で有利に交渉が運んだけど、王子が戻った今なら、向こうは約束なんて重視せずに、必死にロフォール砦を取り戻しに来る。王子の名誉のためにもね」


「む、むぅ…」


 渋い顔のティーナ。ラインシュバルト侯爵も頷く。


「そうだな。場合によっては、三年と経たぬうちに攻め入ってこよう。村の競争は是非やってみればいいが、防衛は決して怠るな」


「「はい!」」


 防衛を最優先にしつつ、村の競争か。まあ、切磋琢磨できればベストなんだろうけど、良いアイディアが共有できないから、微妙だよなあ。

 まあ、俺だけ反対してもここじゃ通らないし。


「じゃ、村の繁栄をどう判定するか、人口か、税収の多さか、建造物の多さか、ティーナ、指標を今、決めておいてくれないか」


 俺は言う。


「え? ああ、そ、そうね…。むう、じゃ、分かりやすく人口で」


「待ちなさい。それだと、三年後に金で集めた浮民や冒険者で埋め尽くされて、その後が困ることになるだろう」


「いや、お父様、私、そんな変な手はしませんけど」


「あ、ごめん、俺がやるかも」


「ええ? あなたね…」


「ふふ、それくらいの奇手が使えぬようでは領主は務まらんぞ。だが、後のことも考えて、税収の多さと建造物の大きさで勝負しなさい。それと軍備、兵士のレベル合計だな」


「分かりました。じゃ、お父様、それで私がユーイチに圧勝したら、この場での侮辱は正式に謝罪して頂きますから」


「分かった分かった。では、騎士団を分けてお前達に付けよう。リックスとギブソンを回す」


「それはありがたいけど、こっちが手薄にならない?」


「ならんよ。前線から離れたここは攻められるはずもないし、有事となれば、リックスを戻す。それから、派遣する騎士団の数は騎兵二百、歩兵二千が限度だ。それ以上だと、糧食の運搬も難しいし、スレイダーンを刺激することになるからな」


 父ルーファスが言うが、防衛に過敏になりすぎても相手を刺激するとか面倒そう。その辺の加減はこれまで侯爵や将軍として実務をやって経験を積んできたであろうお父様を信じるしか無いだろう。知識も経験も無い俺たちには判断のしようが無い。


「二千二百か…本格的に攻め込まれたら、ひとたまりも無いわね」


「だが、足止めくらいは出来よう。その間に、こちらも準備を整えて援軍に出る」


 やりたくないけど、速攻で領地を放棄して逃げたりすると…多分、国王から叱責や罰を食らうんだろうな。

 なんだろう? 出世や褒美の感じが全然しない…。


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