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異世界の闇軍師  作者: まさな
第七章 保護者ですから

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第十五話 必殺技

描写軽めですが、刃物による重傷と流血が有ります。


2016/11/22 若干修正。

 ティーナの婚約解消を賭けて、俺とアーサーとの一騎打ち。

 それを魔法禁止でやってるんだが、なんでだろうね?


 だが、アーサーの剣の動きはもう見切った。

 俺の熟練度成長速度87倍を舐めないで頂きたい。


 アーサーが十回斬り込めば、それだけで870回の回避練習をやったことになる計算だ。

 もう軽く百回は超えてるし。

 運動神経が相当低い俺でも、八千回も練習すれば、体も付いてくる。

 アーサーだけじゃ無くて、今までの積み重ねもあるしね。


 なので、反撃の隙を窺い、頭で動きをシミュレーションしておく。あのアーサーの鎧はかなりゴツいから、少々のことではダメージが入らないだろう。

 アーサーは反応も技量もかなり良いから、カウンター前提で作戦を立てておかないとな。

 斬って逃げ切るまでがヒット&アウェイだぜ。


 よし、パターンも見切った。


 ここ!


「ぐっ!」


 ヒットぉ。もう一丁!


 スカッ。


 あれ? もう一回!


 スカッ。


 う…。

 最初は油断しててくれたから当たったが、当たる気がしない…。


「あっ! 攻撃の練習、忘れてたぁ…」


 おいぃ。ティーナ先生ぇ…。


 どうすんのよ、このおバカ!


 と言うか、俺も避けることばっかり考えてたわ……。


「ふふ、ははは、勝った! やはり魔術士、攻撃はてんでダメだな!」

 

 むう…。

 魔法さえ使えりゃあなあ。


 まあいい、最後まで全力を出して負ければ、ティーナも俺に八つ当たりはすまい。


 ……しないよね?


 いい加減、ギャラリーも飽きてきた顔だし、もうかなり長い間、一騎打ちをやっているから、俺も精神的にキツイ。前衛チームのみんなはホント凄いわ。


 ここは命のやりとりでも無いんだし、果敢に攻めていく。


「そんな攻撃で! くっ、当たれ!」


 双方の攻撃が当たらない。


「む! ふん!」


 急にアーサーの肩が俺の胸当てにぶつかってきた。


「ぐえっ!?」


 まさか、体当たりとは。油断したぁ…。


「あっ! ずるい」


 ティーナも思わず言う。


「いや、ずるくは無いだろう! 審判!」


 過剰に反応して審判に裁定を仰ぐアーサー。


「ええ、体当たりも禁止ではございません」


「ほら見ろ。よし、こうなったら、剣術などどうでもいい。とにかく倒す!」


 わあ。剣士としての矜恃はどうした! アーサー! 君はそんな奴じゃ無いはずだ!


 でも、そろそろ終わらせて欲しいのよね。腕もだるくなってきたし、サロン草を鎧下に予め装備してたんだが、限界が来ている。


「そこだ!」


「ぐっ!」


 アーサーは斬撃で上手く俺を誘導して回避させ、そこに思い切り体当たりしてくるので、厄介。痛いし。


「やり返すニャ!」


 リムが簡単に言ってくれるが、こっちはカバーの範囲が狭い胸当て、向こう(アーサー)半身鎧(ハーフプレート)はカバーしている範囲が広いから、こっちの方が多くダメージ食らうだろう。


 とにかく、見切ってと。


 よし、避けた。


「くっ。この回数で見切っただと? いや、そんなはずは」


 ふふふ。体当たりは見える範囲が大きいし、タイミングさえ分かれば、見切るのはそう難しくない。

 それに、アーサーの戦い方って、型にはまってる感じで、俺たちとちょっと違うのよね。

 モンスターよりもさらに単調というか。


「アーサー様! 攻め手が素直すぎます。フェイントを入れて下さい」


「むっ」


「げげ」


 うへっ、本当にフェイント入れて来やがった!

 誰かあの青ビキニアーマーを黙らせて!


「なるほど。やはり素人か。これで決めてやる」


「ひい!」


 何とか躱そうとするが、フェイントを挟まれると、タイミングがさっぱり掴めなくなった。


「ぐえっ!」


 うう、今のは効いた…。

 チラッとセバスチャンを見るが、レフリーストップは無い様子。

 大丈夫? ちゃんと俺のHP見てくれてるよね? 

 それとも、やっぱり自分で降参しないとダメかな。


 ティーナを見る。


「むぅ」


 それで分かってくれたようで、渋々だが、肩を軽くすくめて仕方ないわねのポージング。


「こうさ―――うわっ!」


 降参と言おうとしたのに、突っ込んで来やがるし、待って! 待って!

 いった!


 ズブッ。


「ん?」


 何だ今の音。


「ぐあっ!」


 え? うえ、俺の剣が、アーサーの喉元から刺さっちゃってるし。体当たりでちょうどやっちゃったか。


「む! それまで! 失礼致します」


 凄い勢いでセバスチャンが割って入り、俺の剣を引き抜いた。

 うえ、凄い血が。大丈夫か、これ。


「か、かはっ」


 お、おい、死ぬな。

 ぽ、ポーション、うえ、無いや。

 持ってると勝手に使うでしょ、なんてティーナが取り上げるから。


「誰か、ポーションを!」


「いえ、私が持っておりますので。これを、さ、アーサー様、お飲み下さい」


 セバスチャンが懐からさっとポーションを出した。出来る執事だ。


「む、無理だ」


「飲まぬと、致命傷ですぞ?」


「! くっ、ごぶっ、ごほっ、んぐっ」


 血を吐きながらだが、何とか、飲んだ。セバスチャンは、布で首の出血部分を押さえつつ、器用に左手で新しいポーションを出してそこに振りかける。


「アーサー様!」

「しっかりして下さい!」


 アーサーのお付きの二人、青剣士と赤魔術士が青ざめつつ必死に声を掛ける。


「クレア! 頼む」


「はい」


「いえ、もう安心でございます」


 ふう…。


「気を失っておられるだけです。そのまま治療室へ運びましょう」


 セバスチャンがお姫様だっこでアーサーを城の中へ運んでいく。お付きの二人が付いて行ったが、まあ、俺が行くと揉めそうだし、止めておくか。


「良くやった!」


「うえっ!」


 バシッと、レーネが背中を叩くので、よろける。


「ちょっと、レーネ! クレア、回復を」


「ええ」


 クレアが俺の頬に手を当てると、暖かな光が包んでくる。無詠唱か。


「これでいいでしょう。まだ痛みますか?」


「いや、大丈夫、ありがとう」


「いいえ、ふふっ」


「ユーイチ様! うう、ご無事で、うう」


「ああ、クロ、大丈夫だったから」


 ナデナデ。


「さっきの、狙ったの?」


 ティーナが聞いてくる。


「まさか。俺は降参しようと思って、言いかけたところだったんだぞ。偶然だ」


「そう。ま、そうでしょうね。慣れない体当たりなんてやってるから…」


「ティーナ、そこはユーイチを褒めてあげなさいよ」


 リサがもっともなことを言ってくれる。


「あ、ああ、ごめんね。うん、ありがとう。じゃ、ご褒美のキスね。ちゅっ」


 うお…!

 △※○□◇■!!!


「んん? ユーイチが固まったニャ」


「あはは、可愛いなあ。顔が真っ赤や」


 おおう、ほっぺたでこの威力。


 うおおおおおおおお!


 生きてて良かったああああ!



 気がつくと、アーサーが戻って来ていた。


 うえ、また再戦とかしようなんていわないよね? ひいい…。


「ああ、もう平気?」


 ティーナが聞く。


「ああ、心配を掛けた。いや、みっともないところを見せたな」


「それは気にしてないけど、約束は覚えてるわね」


「ああ。僕も、親衛隊に加入していたことで、少し、(おご)りが有ったようだ。実力はそれほど…いや、実力だろうな。ユーイチ、君のレベルはいくつなんだ?」


「ああ、36です」


「むっ、僕より9レベルも高いのか。そりゃ躱されるわけだ」


 アーサーはレベル27か。結構高めじゃん。誰だよ、温室育ちのお坊ちゃんとか甘く見てたの。 

 俺だよ…。


「ええっ? アーサー、そんなに上げてたの?」


 ティーナも驚く。


「まあな。親衛隊の先輩方にはしごかれるし、キツイとは聞いていたが、あれほどとは思わなかった」


「そう。親衛隊かぁ」


「興味があるなら、僕が推薦してやろうか?」


「ああ、いえ、私はあまり堅苦しいところはいいわ。貴族が多いんでしょ?」


「半々と言ったところか。下っ端はともかく、隊長クラスは実力者揃いだ」


「でしょうね」


「じゃ、僕はうちの城に帰るよ」


「ええ、気を付けて」


「そっちもな。婚約の件は僕から父上に言っておく。叔父上様のお話でもあるし、ひっくり返されるということは無いだろう」


「そう願いたいわね」


「ああ。じゃ」


 しつこく食い下がるかと思ったが、アーサーはどこかスッキリした顔で去って行った。


 夕食後、セバスチャンがいたので、手招きする。


「なんでございましょう、ユーイチ様」


「アーサーの強さなんだけど」


「おお、その事でございますか」


「すっごい強かったじゃん。普通にやったら俺が負けてたじゃん」


「はて、良い勝負になるとは思いましたが、勝ち負けのお約束までは致しておりませんが」


 しれっと言うジジイ。

 汚ぇ。あの場面であんなニュアンスで言われたら、そう思うだろ!

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