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異世界の闇軍師  作者: まさな
第七章 保護者ですから

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第十二話 ティーナの父

2016/11/22 若干修正。

 いよいよ、ティーナの父親との夕食会。

 いや、別に俺は結婚の申し込みなんてしないよ?

 ただ、なんか周りが先走って期待してるから、こっちも変な空気に当てられて緊張してくるよね。


「お食事の準備が整いました」


 部屋にやってきたメイドが告げる。


「待ってましたニャー!」


 喜ぶのは良いが、リム、貴族のお屋敷なんだから、行儀良くな。


「じゃあ、行きましょうか」


 マリーンが言う。


「はい。ここの料理、ほんまに美味しいから楽しみにしてたんですよ」


 ミネアが言う。


「ふふ。今日はうちの料理長が気合いを入れてたみたいだから、期待して良いと思うわよ」


「わあ、それはえらい楽しみです」


 ミネアが感激したように言うが、俺も楽しみ。


「ユーイチ様、あなた様は、こちらへ」


 ずい、と俺の前に出てくる老執事。

 またかよ、セバスチャン!


「ティ…、くそ、マリーン様!」


 頼みのティーナが着替え中でこの場にいない。ここはマリーンに泣きつこう。


「ああ、ええ、セバスチャンに付いて行きなさい、ユーイチ」


「ええ? そんな」


 お母様…。


「ふふ、心配しなくても、今回は大丈夫よ」


「さ、参りますぞ。時間がありません」


「は、離せ、リサ、助けて!」


 腕を外そうとするが、がっちり握られていて、ふりほどけない。廊下に引きずられる俺。


「別に殺されやしないでしょ。大人しく付いて行きなさい」


 冷たいな、お前ら。クロだけが心配そうに見ててくれたが、くそ、ここは目潰し呪文で。

 だが、セバスチャンは歩みを止めない。


「あれ? 効いてない?」


 レジストされた感じはしないんだけど…?


「いえいえ、なかなか良い目潰し呪文をお持ちで。しかし、目くらまし程度ではこのセバスチャンには通用しませんぞ。目を閉じても当家の部屋割りは完璧に記憶しておりますので」


 無駄に能力高えな、ジジイ! このくっそ広い城の間取りを全部覚えてるとか、ホントかよ。

 よし、ならば、アイスウォールで。


 俺を捕まえたまま飛び越えやがった! しっかり見えてんじゃん。嘘つき。


「ふふ、ユーイチ様は剣術や体術の極意の一つ、心眼というものをご存じですかな?」


「うえ、それをマスターしておられる?」


「無論。当家の執事を目指すならば、それくらいは心得ておきませんと」


 いやいやいや。執事だよね? 戦闘職なの? そりゃカタカナ英語で言えばバトラーだけどもさ。スペル違うし。

 無駄だと思いつつも分析(アナライズ)してみたが、そこはきっちりレジストして来やがった。

 普通、目潰しの方を防ぐ…、ああ、心眼があれば、レジストすら不要かよ! くっそ!


「参りました…」


「ふふ。相手の力量を見極めるのも大切な処世術でございます。さ、こちらでお着替えを。お館様との初顔合わせですからな、少しは見栄えを良くしませんと」


「ええ? ああ、そこまで気遣ってもらわなくてもいいんだけど」


「お嬢様のためでございますので」


「ああ。失敬」


 入った部屋には、すでにメイドが二人、待ち構えており、有無を言わさず服を掴まれた。


「ま、待って、自分で着替えるから、いーやぁー。あーれぇー」


 うう、全部裸にされるとは思わなかった。

 俺は男だからいいけど、女子だったらお嫁に行けないって泣いてるところな気がする。


「ふむ、なかなかご立派ですぞ」


「ホントに? おお」


 部屋に置いてある姿見を覗いてみると、白色の襟付きシャツに紺色のチョッキとズボンと、この時代の地味な貴族風の格好になっていた。割と良いかも。


「お気に召したようで何よりでございます。ささ、遅刻は厳禁ですぞ。参りましょう」


 セバスチャンが先行して走るので、俺も廊下を全力疾走。

 全然、追いつけねえって、どういうことだよ。まあ、俺は足、遅いけどさ。


「こちらでございます。では、呼吸を整えて」


「はあ、はあ、ふう、む、無理」


「仕方有りませんな、では、少々痛いですが、我慢を。ふんっ!」


「ぐおっ!? な、何を…」


 腹にズブッて指を突っ込むとか。


「これで呼吸がゆっくりになります。では、ご武運を」


 変な秘孔を突くとか、やめてくれよ。息はゆっくりになったけど余計に苦しいんですけど!


 セバスチャンが扉を開けると、そこは前にも見た食堂で、すでに一同が席に着いている。だが、ティーナや父親はまだのようだ。


「あら! いいわね、ユーイチ」


 マリーンがにっこり笑って、この時代の貴族から見てもオッケーなようだ。でも、この人は俺に甘い感じだしな。


「ああ、ええな、格好良いわ」


 ミネアも褒めてくれる。


「凜々しいですわ、ユーイチさん」


 クレアも褒めてくれるが、俺をけなすことが無いから当てには出来ん。


「ほほう、馬子にも衣装と言う奴だな」


 レーネははっきり言うタイプだが、好印象のようだ。


「素敵です、ユーイチ様…」


 クロがキラキラした目で褒めてくれるが、ちょっと過大評価だろう。


「ん、グッド」


 親指を立てつつも、ほとんど無表情のミオ。


「ま、いいんじゃないかしら」


 リサは素っ気ないな。


「フン、わ、悪くは無いわね…」


 うえ、エリカがこっちをチラチラ見ながらツンデレしてる!

 金髪ツインテールの戸惑う姿、いいなあ。

 ウインクとかしたら、どう反応するんだろう?

 ま、あんまり格好付けてると呆れられそうだから、止めておこう。 


 さて、俺が座る席だが…。

 長方形のテーブルの一番奥側、これはマリーンの座っている位置からしても、ティーナの父親が座る上座だろう。マリーンの正面の席がティーナだろうな。その隣が空いているから、俺の席だろう。その右隣にはクロが座っている。


 そちらに向かうと、普通にメイドが席を引いてくれた。座る。

 料理には皿の上にクロッシュ―――銀のドーム型の蓋だ―――がかぶせてあり、その脇にはフォークとナイフが並んでいる。

 こちらの世界では、順番に持ってくると言うよりは、見栄えと迫力を重視してか、テーブルには最初から皿が所狭しと並べられている。

 

「早く食べたいニャー」


「リム、口は閉じてなさい。今日は貴族の晩餐よ」


 リサが注意する。


「ムウ」


「ふふ、今日は祝勝会、無礼講となるはずだから、今まで通り気にしなくて良いわよ。私達の他には貴族はいないんだし」


 マリーンが言う。


「それは、他の貴族の方はあまり賛同していないと言うことですか?」


 それを聞いたリサがマリーンに問う。


「ああいえ、正式な祝勝会は、王宮でやるのよ。今日は内輪の家のお祝いだから」


「ああ、なるほど」


「ごめんなさい、お待たせ」


 両扉が開き、ティーナが深紅のドレスに身を包んで出てきた。


「うお…」


 大きく胸の開いたドレス。た、谷間が…

 それに、腰のくびれも、ほっそ!

 服のせいなのか、いつもと全然雰囲気が違う。


「わあ。これは綺麗やねえ」


「ん、反則レベル」


「素敵です…」


「ニャニャ、綺麗ニャー…」


「やっぱりお嬢様なのねえ」


「あらあら」


「む…」


「ほう」


 皆も圧倒されたようだ。


「そんなに褒めないでよ。うん、ユーイチもなかなかだけど、赤じゃないんだ…」


 ティーナに高評価を頂きたい方は赤で決めると良さそうですよ。

 でも俺は赤は無理。ルークくらいの美形ならともかく。


「どうかしら、ユーイチ、私の娘は」


 マリーンが自慢するように聞いてくる。


「は、はい、お綺麗です」


「そーゆーお世辞は良いから」


「いやいや、ホントに綺麗だよ」


「えっ、ああ、うん…」


 まあ照れるのは分かるんだが、そこまで顔を赤くして戸惑われると、こっちも変に意識するから、アレでして。


「遅れて済まない」


 と、ついに、ティーナの父親が入ってきた。ひょっとして赤か、と思って振り向いたが、割と地味な焦げ茶色。

 だが、顔がキリッとしてて、あごひげも様になってるし、美形の家系だなあ。瞳の色は茶色で、ティーナとは色が違うが、目元の形が少し似ている。


「良かった。すっぽかされたら、私の信頼まで傷つくところでした」


 マリーンが澄まし顔で言う。


「いや、悪かった。時間通りに来るつもりだったが、急な来客が有ってね」


「どちらから?」


「うん、まあ、それは後で分かる。さて、私がここの領主、ルーファス=フォン=ラインシュバルト侯爵だ。娘がいつも世話になっているね」


 席に着いたティーナの父が一同に笑顔を向ける。


「いいえ、こちらこそ」


 皆、侯爵を相手にどう返事を返したものか悩んで言い淀んでしまったが、クレアは貴族相手に慣れているようでにっこり笑って応じた。

 ティーナの父は軽く頷くと、ワイングラスを手に取り、掲げる。


「ロフォール攻略戦の成功を祝って、乾杯と行こう。グラスを持ってくれ。いいかい? では、皆ご苦労だった。勝利に!」


「勝利に!」


 全員でグラスを掲げて、一口飲む。俺たちのは酸味の利いたピンク色のジュースだが、ぐいぐい行けそうだ。


 メイド達が銀の蓋を次々と手早く取っていき、料理が顔を見せる。


「ニャー! 旨そうニャ! モグモグ」


「あっ、リム、お祈り」


「はは、まあ、待たせて腹も空いてしまっただろう。今日くらいは神様も大目に見てくれるさ」


 ティーナの父親は咎めること無く笑う。なんだ、いい人じゃないか。まあ、ティーナの父親なら、当たり前か。


「神々と大地の恵みに感謝します」


 クレアが祈りの言葉を捧げ、ティーナの父親が一口食べるのを見届けて、俺も料理に手を付ける。

 テーブルマナーはセバスチャンに仕込まれたので、問題無い。


「ティーナ、ギブソンの話では、勝手に部隊を抜け出そうとしたらしいな?」


 最初の話題は、戦の反省会のようだ。


「あれは…だって、お父様、敵の領内で少数部隊の待ち伏せですよ? 危険だと思ったから」


「そう思ったなら、自分の立場も弁えて自重してもらいたかったが。部下への示しもある」


「むぅ、反省はしています。最初からユーイチを私の直属にすべきだったわ」


「ま、方法の是非はともかく、次の手を考えているならそれでいいだろう。ええと? ここにいる皆が、その少数部隊の一員だったね?」


「ええ、クロ、クローディアはお留守番だったけど」


 ティーナはクロの正体は父親にも秘密にしているようだ。ま、その方が良いだろう。


「うむ、知っている。クローディアとは少し、話をしたからね」


「ああ、そうなんだ。私との話はすっぽかしてたのに?」


「まあそう言うな。戦の準備で忙しかったのだ。君も、戦が終わってからの方が落ち着いて話せると思ったからね」


「何それ。まるで私が冷静じゃ無いみたいな言い方ですけど」


「そこまでは言わないが、いや、客人の前だ、みっともない親子喧嘩は止めておこう。それより、見事、作戦を成功させ、敵の要人を捕らえるとは大したものだ。アーロン卿も褒めていたそうだね」


「ええ、ほら、ユーイチ」


 俺に振っちゃうの? まあ、アーロン侯爵から直接褒めてもらったのは俺なんだっけ。


「む。ええ、お褒めの言葉を頂きました」


「そうか。うん、それは良かった」


「うちにあるより大きなエメラルドと、推薦状をもらったのよ」


 ティーナが自慢げに言う。


「推薦状? ふうむ…ま、それくらいは当然か」


 少し考え込んだティーナの父だが、反応は薄めだな。


「あら、凄い事じゃないの。その調子で出世してくれれば、爵位も取れそうね」


 マリーンがその分、持ち上げてくれるが、奴隷から貴族になった人なんているのかね?


「いやいや、それは難しいだろう。半年と経っていないのに、騎士から貴族へなどと、それでは他の者の反発も大きくなる」


「あなたみたいに、かしら?」


「いや、マリーン、私はむしろ、ユーイチには出世してもらいたいと思っているよ。仮にもティーナのパーティーの一員で仲が良いようだからね」


「それなら、あなたから陛下に推薦をするなりしてみたら、いかが?」


「いや、それは止めた方が良いだろう。娘のために地位に口出しして陛下をないがしろにしていると思われては事だ。そんな事をしようものなら、エクセルロット卿あたりが黙ってはいまい」


「ああ、エクセルロット家に口を挟まれると面倒ね」


「その点、うちとは関係ないアーロン卿が推してくれるのはありがたい。ティーナ、君が何か、工作でもしたのか?」


「ええ? しないわよ、そんな貴族っぽいこと」


「やれやれ、君は家督を継がないからと言って、のんきに構えすぎだよ。相手はそうは見てくれないからね」


「むぅ。じゃ、冒険者ティーナとして生きていきますから」


「それでダンジョンに潜らず、適当に暮らすのなら文句は無いが、悪魔と戦ったり、崩れ落ちる塔やピラミッドに入ったりしてたそうじゃないか」


「それは、ううん、事実ではあるけれど、そんな危険なことになるとは思わなかったのよ」


「そこだな。予想外の事態が起きた時に対処できなければ、最悪、パーティーは全滅、君もユーイチも生きては戻れない。冒険者とは、危険を冒すから冒険者なのだよ?」


「むぅ、今後は気を付けます」


「ふう。ユーイチ君、君はずっと冒険者をやりたいのかね?」


「いいえ、まさか。私は命が一番大切なので。お金も貯まって、薬師としてもやって行けそうですし、道具屋や薬師で暮らそうかなと」


「ほう」


「む、それ、将来的に私のパーティーは抜けるって意味なの?」


 そう言えば、将来の話はあんまりしてなかったな。この際だ。はっきりさせておこう。


「君が危険なダンジョンに挑み続けるなら、道を違えることになるな。もちろん、今まで世話をしてくれた恩義があるから、どうしても手伝ってくれと言うときは手伝うけどさ」


「むぅ」


「ティーナ、私はどこでも付いて行ってやるぞ。ドラゴン退治だろうが、悪魔退治だろうが、任せておけ」


 レーネはティーナにとってもありがたいパーティーメンバーだろう。レベル一番高いし。


「私はレベルに見合わないところは遠慮させてもらうわよ。ドラゴンは、今のレベルでは難しいでしょうね」


 リサは敵次第と言ったところか。


「待って待って。別に私は、今すぐドラゴン退治に行こうなんて言ってないし。ほら、リムが海に行きたいって言ってたから、次は海よ」


「ニャ! そうニャ。お魚を取りに行くニャ!」


「海か。海と言えば、サーペイントやクラーケンか」


「ちょっと、お父様、いくら私でも、そんな伝説級のモンスターとやり合うつもり、無いんですけど」


「ああ、いや、思いついて言ってみただけだ。それなら結構」


「ちゃっかり探り入れてるんだから」


「そう言えば、海の底にはお城があるそうよ? ちょっと行ってみたいわねえ」


 マリーンがそんな事を言うが、ティーナの冒険好きはこの人の影響っぽいな。


「水中で息が出来る魔術が使えて、なおかつ、よほど魔力のある魔導師がいて、水圧を物ともしない強靱な体もいるだろうがね」


 否定的な点をあげつらうティーナの父。


「もう、あなたは本当に夢が無いわね」


「ティーナが行くと言っているんだ。助言を与えるのが親の務めだと思うからね」


「私、海の底に行くなんて言ってないんだけど」


「ああ、それが良いだろう」


「まったくもう…」


 少しばつが悪そうにチラッと俺を見たティーナは、なんだか微笑ましい。良い家族だと思う。ここに兄のルークが入ると家族のパワーバランスがめまぐるしく変わりそうだ。ルークは前線近くで待機して敵の動きに対応するそうで、今日はまだ帰ってきていない。

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