表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界温泉であったかどんぶりごはん(旧題:パーティーを解雇されたアラサー女子はどんぶり屋を開く)  作者: 渡里あずま
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/135

ホッとした矢先に

 賄いと言ったので恵理は普段、店で出しているメニューではないものを作ろうと思った。

 そこで浮かんだのは初めてレアンと会った時、そしてその後も時たま作っているジェノベーゼ丼だ。


(ソースは、レアンの手作りだしね)


 ただ食べるだけではなく、何か手伝えないかと言われて以来、レアンにスプーンで香草を潰し、岩塩やにんにく、オリーブオイルを混ぜてジェノベーゼソースを作って貰っている。

 万が一、ガータに「男が料理なんて」と言われたら困るので恵理からは伝えないが、ソースの入った瓶を取り出すとレアンが緊張したように、それでいて嬉しそうに耳をピクピクさせていた。

タイ米をお湯で煮ている間に、買ってある鳥肉を一口サイズに切る。それからタイ米を煮ているお湯を捨て、火で水気を飛ばして蒸らしている間に、恵理は鳥肉をジェノベーゼソースに絡めて炒めた。そして炊けたご飯を丼鉢に盛って、その上に乗せる。

 タイ米を炊くのは、店でも相変わらず『湯取り法』だ。タイ米をお湯で煮てからそのお湯を捨て、更に火にかけてから蒸すこの炊き方が、一番ティエーラのお米を美味しく食べられる。


「はい、召し上がれ」

「「「いただきます」」」

「……感謝する」


 食べる前の挨拶は、思えば恵理がやるからだった。

 レアン達が口々に言うのに、ガータは戸惑ったようだったが――それでも、お礼の言葉を口にしてジェノベーゼ丼を食べ始めた。


「……美味い」

「だろ?」

「肉に良い匂いと、濃くて美味い味が絡んで、良いな。あと、下の白いのと一緒に食べると更に美味い」

「だよね! ……あ、えっと、ですよね」


 ガータの感想は、初めてレアンが言ったのと同じものだった。

 懐かしい気持ちで聞いていると、敬語を話していないレアンに、サムエル達の視線が向けられる。それに気まずそうに言い直す辺り、彼には店員としてのこだわりがあるんだろう。

 そう思ったので恵理は話題を逸らす意味も込めて、中断していた話を再開することにした。


「ありがとう、レアン。あの、それで……さっき話していた、武闘会の件なんですけど」

「……それなんだが。先程の話だと、こういう料理を作るのに、香辛料が欲しいと言う話なのか?」

「ええ」

「それなら闘うのではなく、ただ香辛料を買いに来るか、商人に頼むのでは駄目なのか?」

「一回二回食べるのではなく、店に出すのなら定期的に買いに行く必要があります。それだと、私には難しいですし……商人に頼むと、関税がかかるので高くなってしまいます。そうなると、メニューの料金を高くしなければ作るだけ赤字になってしまいます」


 その土地のものなので、無料で買うつもりはないが――一方で、関税がかかってしまうとやはり買い続けるのが難しい。


「だからこそ、武闘会に参加したいんです。優勝すれば、可能な限り願いが叶うんですよね?」

「……そうだが、あなたには無理だと思う」

「え?」

「レアンは、私が認めた男だ。そして、そんなレアンが反対しないなら、他の者も……そこのお嬢さん以外は、出られるだろう」

「私も、出る!」

「魔法使いは、駄目なんだ。武を競う場だから……肉体強化もあるから、全く駄目とは言わないが。最低限は闘えないと、参加出来ない」

「……むぅ」


 ガータの言葉に、ミリアムが頬を膨らませる。

 確かに、ミリアムは魔法が使えなければ非力な少女だ。けれど、恵理は違う。これでも、元冒険者である。


「あの、私は闘えます」

「……私が言うのも何だが、あなたのような女性には無理だ」


 悪気はないんだろう。逆に、心配してくれているのは解るが――このままだと、恵理が武闘会に出られなくなってしまう。

 それ故、負けないと言うように自分の胸に手を当てて、恵理はガータに言った。


「だったら……言葉だけではなく、私が闘えることを示します」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ