そこは確かに居場所だった
活動報告に、お礼SSを載せています。
ルベルから出てきたアレンは、最初は一人で。そして恵理と出会ってからは、彼女と二人で依頼をこなしていた。
(私が異世界人だって、バレない為に)
直接言われた訳ではないが、そうだったと思う。何故なら、恵理が魔法や体術を覚えた頃から他の冒険者達とも仕事をするようになったからだ。
(そして少しずつ、仲間が増えていって)
二人の時はそれぞれ『アレン』と『エリ』で依頼を受けていたが、人数が増えるとそうも言ってはいられなくなった。それ故、仲間達とパーティーを組むことになったのだ。
「『獅子の咆哮』なんてどうだ? カッコいいのが揃うと、余計カッコよくなるだろう?」
「……いいんじゃない?」
「何だよ、エリ! 顔と言葉が、合ってないぞ?」
「いっ!?」
年上なのに子供のように笑って言うアレンに、内心呆れながらもそう言った。けれど頬はつられて緩んでいたようで、笑みを深めたアレンにそう言ってつねられた。
幾つになっても、子供のように無邪気で。だが、冒険者としての実力は文句なしで。
そんな彼に惹かれて集まった仲間達は、恵理にも優しくしてくれた。そのことが嬉しくて、少しでも恩返しするつもりで恵理も心身共に鍛え、周囲にも優しく接した――そうすることが『獅子の咆哮』の一員として相応しいと思ったからだ。
(皆、好意的に受け取ってくれているけど……私は単に、アレンや周りの顔色をうかがって行動しただけ)
……そう思いつつもやめられず、恵理は居場所であるパーティーの為に頑張っていたが。
「グイド……後を、頼む」
馬車に轢かれ、アレンが最期にそう伝えたのは恵理にではなく、実の息子であるグイドに対してだった。
そして、アレンに後を任された筈のグイドの言動でかつての仲間達が辞めていき――馬鹿にされながらも、アレンが遺したパーティーを支えたくて頑張ったが。
(結局、性別とか年齢とかで否定されて……だから私は、パーティーも冒険者もやめたんだ)
あの時は自覚していなかったが、そんな年増な自分ではパーティーに相応しくないと思ったのだろう。
それ故に解雇されるまま、帝都を後にしたが――その『獅子の咆哮』が、崩壊してしまったなんて。
「女神!?」
「店長っ」
「……えっ……」
不意に視界がぼやけたと思ったら、ティートとレアンが驚きの声を上げる。
どうしたのかと目を擦って、恵理は初めて自分が泣いていることに気づいた。慌てて拭おうとするが、ポロポロと流れる涙はちっとも止まってくれない。
「ひっ……く……っ」
「……ごめんなさいねぇ、エリ?」
逆にますますこみ上げてきて、しゃっくりのような声が出る。
そんな彼女を、近づいてきたルーベルがそっと抱きしめた。そして、優しく頭を撫でながら言葉を続ける。
「解雇されても、気にしてなかった感じだったけどぉ……自分がいなくても、パーティーがあれば良かったってことねぇ?」
「っく……ル、ビィ……さ……」
「……どんな反応をするか解らなかったから、店に来たのよ……明日は、休みでしょう? 返事はゆっくりで良いから、どうしたいか考えてちょうだいねぇ?」
「冗談じゃありません!」
泣きじゃくる恵理への言葉に、反論したのはティートだった。引き剥がしこそしなかったが、ルーベルに対して怒りを隠さずに言う。
「あいつが見捨てられたのは、自業自得じゃないですか!? それで酒びたりになった奴なんて、放っておけば良いんです! 百万歩譲って、療養するにしても……どうして、わざわざここで面倒を見るんですかっ!?」
「あ~、大浴場でお酒を抜いて、あとは美味しいもので体力回復って感じじゃない? 腐ってもAランクの冒険者だしぃ」
「……俺も、店長を泣かせる人が来るのも、店長のどんぶりを食べるのも反対です」
ルーベルの言葉に、いつもは笑顔で後押しするレアンも笑みを消して反対した。
二人の気持ちは、嬉しいしありがたいと思う――けれど自分は、そんな庇って貰えるような人間ではないのだ。
「……ごめ、少し……考え、させ……ありが、と……」
「えぇ、解ったわよぉ」
「……女神が、そう言うのなら」
「店長……くれぐれも、無理はしないで下さいね?」
泣きながらも、恵理が何とかそれだけ言うと――三人はそう言ってくれたのが、ありがたくも申し訳なくてますます泣けた。
本日!(地元は二日ほど遅れますが)『異世界温泉であったかどんぶりごはん』発売です!
続きは順次更新しますが、書籍で先行して読めます。あと、番外編やペーパーもありますよ( *´艸`)
ここまで来られたのは、皆様のおかげです。お礼ばかりになりますが、ありがとうございますm(__)m




