うん、よく出来てはいるけどね?
ちゃっかり配膳の列に並んでいた、かつての仲間――サムエルとミリアムは、恵理の作ったラムしゃぶ丼を美味しそうに、そして嬉しそうに頬張った。
「依頼を終えて戻った後、師匠が解雇されたって解って」
「後を追ってきたら、ティートとロッコに向かったと聞いて……それで、私達エリ様に会う為にここに来たんです」
……前日、ティートと随分と派手に再会したので、足取りを追われたということか。
そう思っているうちに列が無くなり、食べ終えた面々が立ち去ったところで、ティートからある提案があった。
「外で話すのもなんですから、まずは女神の店に行きましょう」
「……そうね」
ティートの言葉に頷いてレアン、それからサムエル達と共に歩き出した。
大工達は、街道からの馬車が到着する門の近くに休憩場所のテントを設置していた。けれど、ティートは更に進んでいく。
「あそこが、女神の店になります」
「えっ……?」
そしてティートの言葉に、恵理が思わず声を上げたのには理由がある。
……元の地球でも、この異世界でも。その集落の長の家があり、そこを取り囲むように店や宿、それから住人の家が作られるのが一般的だ。
(北海道は、開拓の歴史があるから個人の家があって畑、それからまた個人の家があって。山の中でも、集まってはいないけど家の明かりがポツリポツリ続くってお父さんが言ってたわね)
ついつい逃避してしまったのは、ティートから示された『店』が街の中心と思われる広場にあったからだ。すぐ近くに立派な建物があるが、どうやら大浴場として再利用するらしく入り口に木材などが置かれている。
「我が家の領地ではあるのですが、採掘が滞り廃坑が決まった為、今では街の運営は冒険者ギルドに任せているのです」
あの建物は、領主が訪れた時の別邸だったと――そう言ったのは、ミリアムだった。彼女は貴族の家の出なのだが、妾腹ということもあり家を出て冒険者をしている。
「だから、今回の街興しも冒険者ギルドからの依頼でして。大浴場内での出店も考えたのですが、それだと女神への負担が大きいと思いまして……元々酒場兼宿だったので、狭くはないと思うのですが。お気に、召しませんでしたか?」
「いえ……立地条件的にも広さ的にも、むしろありがた過ぎるくらいなんだけど」
「俺達も、しばらくはここでのんびりするつもりですし。アマリア姐さんも、リーダーには愛想が尽きたって言ってましたからね」
「嫌がらせでもされたら面倒と言っていましたので、ご主人と移住を考えているようです。私達のように、エリ様を追ってくるかも……」
「ねぇ」
口々に話しかけてくるのを遮り、恵理は小首を傾げて言葉を続けた。
「流石に、色々と出来すぎじゃない? 全部が偶然とか成り行きとは、とても思えないんだけど……皆、どこまで計画してたの?」
「えっ?」
「「「…………」」」
恵理の問いかけに、レアンは驚いて声を上げたが――他の三人は、口を噤んだ。無言で、恵理に応えていた。
(何? むしろ、突っ込まれないと思ってたの?)
……全く、この子達は天然なんだから。
声に出さずに続けて、恵理はやれやれと思いながら笑った。




