第35話 演劇祭にむけて
三重県でのクラーケン騒動を解決した結果。
日本政府とゴートランド王国の間で協議が交わされた。
魔界から人間界に出て来た魔物の扱いは外来種。
狩猟や討伐。調理加工並びに食肉提供が可能となった。
政府の人達も、クラーケンの刺身を美味いって食ってた。
「まあ、宇宙怪獣も食べる日本で今更だけどな」
「銀座の怪獣寿司とかね♪」
「食に対しては貪欲だよな、日本人」
「醬油かけて美味しければ、日本人は大抵の物は行けるわ♪」
「いや、醤油やポン酢は万能だなおい♪」
俺と勇子ちゃんは教室で語り合う。
魔物食が、日本の食文化に加わると良いなと思った。
俺達マカイジャーは、魔物を退治して食べる事はメインじゃない。
だがこれからは、地球側からの違法な召喚事件にも対応しないといけない。
悪魔だけでなく悪の魔術師も敵だな。
ヒーローにも魔術師はいる、退魔師みたいな宗教関係も含めて。
「進太郎、私の事見て?」
「お、おう! ごめん、事件について考えてた!」
「なら良し♪ あんまり一人の世界に入らないでよ?」
「ああ、わかってるよそんな世界は嫌だし」
そんな孤独な世界は勘弁願いたい。
「何か俺がヒロイン状態だな?」
「あんたが言ったんでしょ、お互いがお互いのヒーローでヒロインだって♪」
「ヒロインの方は付け足してない? 言った事は忘れてないけど?」
「頼り頼られ、好きで好かれて、助け助けられで行きましょう♪」
「うぅ、俺の方がこっぱずかしい!」
「私の事を、日々恥ずかしがらせてるくせに♪」
「ああ、自分がいつも攻める側だとは思わない事にするよ」
やばい、俺も負けてられない。
「相変わらず夫婦漫才してる~♪」
「うへ、俺らの口から砂糖が出て来た」
クラスの連中に囃し立てられてしまった。
ホームルームお時間になり、担任の青山先生が教室へと現れる。
戦隊のブルー枠のクール系な男性教諭だ。
「今日のHRは、演劇祭に向けてクラスで行う演目を決めたいと思います」
先生が演劇祭の話を始めた、演劇祭。
学園祭より前に行われる行事で、大規模な学芸会である。
演劇を通じて役割分担や作戦行動におけるチームワークを鍛える。
演出などに生徒個人の能力を使えわせる事で、能力の鍛錬にもなる。
理由はどうあれ、俺達は演劇をやる事となった。
演目の名は、RPG戦隊クエストジャー。
RPGのクラスの能力を持つ戦隊と魔王の対決。
配役は、何と言うか微妙だった。
「俺が魔王役か、まあ仕方ないな」
「私が主役のユウシャレッドね♪」
「俺が勇子ちゃんにどつき倒されるのか?」
「普段通りね♪」
「いや、何この羞恥プレイ?」
「いつも通りやれば良いのよ♪」
つまり、俺が堂々と勇子ちゃんに色々と出来るのでは?
「良からぬことを考えるのは、この角?」
「ぎゃ~~っ! 角を握るのはやめてくれ!」
「家のお祖父ちゃん達も見に来るんだからね? レーティング考えなさいよ?」
「わかってる、コンプラとかレーティングは守るから!」
俺は勇子ちゃんに頭の角を握られ、揺さぶられた。
「やっぱり、勇者と魔王はあの二人ね」
「赤星さん、山羊原君への執着が半端ないって無自覚?」
そんな声が聞こえるも、俺達はいつもと変わらなかった、
「問題は、敵の動向よね?」
「そうだね、ザーマス達も弱くはないから」
「うん、皆そこらの悪党に負けるような連中じゃないし♪」
放課後、学校近くのカフェのボックス席で向かい合い語る俺達。
パンケーキを食いつつ、学校行事の際に敵が出たらどうするかを語り合う。
「敵は俺達の都合は関係ないからな、お互い様だけど」
「悪党は学校行事とか嫌いなんでしょ?」
「まあ、悪党が真面目にやる行事は一般人には迷惑だしな」
生贄の儀式だの裏切り者の処刑など、悪の行事にろくなものはない。
「でも、ヒーローとヒーロー候補のたまり場にカチコミするのはいるかもね」
「だねえ、俺達ヒーローも悪の基地にカチコミしてるし」
油断はできないと言う、当たり前の結論になった。
俺達は飲食を済ませて代金を支払い、カフェを出て帰宅した。
帰宅後は業務時間、勇子ちゃんがお向かいから俺の家に出勤して来る。
「いらっしゃいませ勇子様、聞きましたよ演劇祭の事♪」
ザーマスが出迎えから開口一番で演劇祭の事を言う。
「そうね、進太郎が勇者役で私が魔王だと勇者が負けるから」
「いや、凄い切り返しでござんすね坊ちゃん?」
「否定できないな、我の手を取れと言われたら取るよ♪」
「プリンスも惚気てるのだ」
フンガーが呆れる。
「まあ殿下達の思春期は平常運行として、防衛面ですね」
「我々は特殊遊撃救命近衛部隊でありますので、観劇させていただくであります」
ギョリンには呆れられ、エティは見に来ると言い出した。
「女王陛下と大使閣下が揃って観劇なされるので、そちらの警護も」
ザーマスがとんでもない事を口にした。
しまった、演劇祭は保護者も見に来るってのを忘れていた。
「殿下、このザーマスは殿下の学校行事や保護者会のお知らせを女王陛下に差し出さなかった事は一度たりともございません!」
「いや、そんな事で胸を張るなよザーマス?」
「流石はザーマスね、進太郎も真面目に稽古に取りかかるわ♪」
「ちょっと、俺は真面目だよ?」
「じゃあ、劇にかこつけて私にエッチな事しないわよね♪」
「しないって、レーティングは守るってばよ!」
多少は下心はあったが、ご家族の前でそんな事出来るか!
さようなら、俺の下心。
レーティングとコンプライアンスには勝てなかったよ。
『山羊原君、エッチなのはいけませんよ!』
フンガーが開いたパソコンの画面には藤林さんが映っていた。
「いや、リモートでツッコまれるとは思わなかったよ」
『私もリモートワークで、演劇祭のお話を聞くとは思いませんでした』
「あ、藤林さんだ♪ そっちも同じ行事があるんだっけ?」
『はい、三重分校も同じく演劇祭なので東京には行けません』
ピンク担当の藤林さんが、リモートで参加したのでパソコンを覗く勇子ちゃん。
「リモートワーク、地球は便利でありますな♪」
「魔界にも魔導ネットはありますが、電力の分インターネットの方が楽ですね」
「まあ、リモートよりは直接やり取りの方が楽しいでさあ♪」
「デジタルもアナログも使いこなして行きましょう」
「その内、ネット上の悪魔退治とか依頼されそうなのだ」
『コンピューターの悪魔って、美味しんですかね?』
藤林さんは相変わらずであった。
会議によるマカイジャーの当日の活動は、学校に来て警戒に当たる事に決定した。
「まあ、私が主役を務める以上、ブチ上げて行くから楽しみにしてなさい♪」
「俺は勇子ちゃんに倒される演技なら、ベテランだから大丈夫だ♪」
小学生の頃からの付き合いだからね、ヒーローごっこで俺が敵役だったし。
「演劇祭の当日には、何も起きないと良いなあ」
「進太郎、それを言うとフラグになるわよ?」
「いやあ、まあ絶対誰かの敵が攻めて来るとかはあるよね?」
フラグと言えばフラグ。
ヒーローの学校の行事が、そう簡単に平和に終わるとは俺も思ってはいなかった。
「進太郎、敵が出てきたら倒せば良いのよ♪」
勇子ちゃんが、昔のように二カッっと歯を見せて笑う。
「流石は嬢ちゃん、竹を割ったようにシンプルでさあ♪」
「敵が出ても、倒せばよかろうなのだ~♪」
「フンガー殿、それは脳筋思考であります!」
「ですが、未然に防げる事は防ぎましょう」
「そうです、女王陛下も来られるのですからお手を煩わせてはいけません」
「女王陛下の強さは、魔界でも五指に入りますからね」
仲間達も気を引き締める、演劇祭は当日がどうなるか楽しみだ。




