第27話 白いモフモフ、エティ入隊
「結局、何者かの尻尾は掴めずだった」
俺は報告書を書き終えて一休み。
勇子ちゃんは本日の業務終了と言う事で、赤星家へと帰宅させた。
「しかし、本当に神がかった力だな。 魔王印ブースト込みとはいえ」
火炎能力者の一族だってのは知っているが、詳しく調べた方が良いな。
勇子ちゃんには万が一でも、何かよからぬ事があってはならない。
ゴートランド王家は愛の重い一族、愛は力だ。
彼女がヒーローなら、俺はヒーローを守り助けるヒーローだ。
ヒーローが人を救うなら、ヒーローを救うのは誰だ?
その答えは、ヒーローに寄り添う人々や仲間だと万別だろう。
俺の答えは、いわゆる二号ヒーローだ。
ヒーローのピンチを救うと同時に、世界や人々も守る存在。
チームのメンバーとも、弟子みたいなサイドキックとも違う存在。
自分もメインを張りつつ、ヒーローに寄り添い共に轡を並べて戦うヒーロー。
推しと同じステージに立つ為に、同じ事務所のアイドルになったアイドル?
いや、この例えは何か近い気がするが違うかな?
「う~ん、やはり一人で考えても混沌とするだけだな」
一つの事を考えていても、ポンポン他の事が浮かび思考にノイズが発生する。
下手な考え休むに似たりと言う奴だろうか、悩むのは止めよう。
「書く物も書いたし、母屋へと戻るか」
俺は大使館を出て、母屋の玄関を開けた。
「お帰りなさいませ♪」
「……誰?」
玄関開けたら即、毛玉。
魔界の王子でも驚くよそんな状況。
メイド服着たガタイの良い白い毛玉を見て、イエティ族だと思い出す。
「殿下、どうなされました?」
「人間に化けられる?」
「ああ、そうでした! 変化します!」
俺の燃えの前で、毛玉メイドが煙を上げて変化する。
メイド服を着た毛むくじゃらのモンスターが、白髪褐色のちびっこ女子になった。
「は、初めまして! 自分は、イエティ族のエティ少尉であります♪」
「うん、簡潔に説明してくれ少尉」
「はっ! 自分は本日付で特殊遊撃救命近衛部隊に配属となりました!」
「誰の命令?」
「はっ、女王陛下直々の命令であります!」
「わかった、宜しく頼む!」
「サー、イエッサー♪」
俺の前で敬礼するエティ少尉、聞いてねえけど受け入れるしかねえ。
俺は突如増えた追加メンバーに驚きつつ、家に上がる。
「自分はメイドとしての研修も受けておりますので、家事もお任せを♪」
料理の配膳をしてから自分も食卓に着くエティ。
ザーマスやガンス達は、今日は魔界で食うらしい。
「本当に、少尉さんが来てくれて助かるわあ♪」
「最初は驚いたが、すぐ馴染んだわい♪」
「いや、祖父ちゃん達は魔族に馴れ過ぎだよ」
「山羊原家の方々の護衛やアシストも、自分の任務でありますから♪」
エティは微笑みながら語り、丼飯を五杯ほど平らげた。
確かにイエティ族は、攻防一体の強さを持つ護衛向きの種族だ。
今回倒したフロストジャイアントに標的にされていたが、決して弱くはない。
新しい仲間に俺は期待を寄せた。
「モフモフね♪」
「毛には自信があります、村一番の美少女です♪」
「でも、人間になると小さいのよね」
「潜入任務が可能であります!」
翌日、大使館の居間でエティと皆の顔合わせ。
勇子ちゃんは、魔族形態のエティに抱き着いて楽しんでいた。
モフモフと戯れる勇子ちゃんも可愛いぜ。
「チビッ子仲間が増えたのだ♪」
エティと同じく人間態が小柄なフンガーが喜ぶ。
「よっしゃ、エティには母屋の家事を任せやしょう♪」
家事能力が高い後輩が来て喜ぶガンス。
「私もガンスに賛成です、殿下♪」
ザーマスも家事の負担が減って喜ぶ。
「平時はそれで異存なしですが、巨大戦ではどうしましょう?」
「担当機体ができるまでは、リュウギョオーのサブパイロットを務めて貰おう」
「はい、操縦訓練も受けております♪」
ギョリンとのやり取りで、エティの戦闘での大まかな立ち位置も決まった。
「じゃあ、エティにマカイチェンジャーの支給なのだ♪」
「はっ! ありがとうございます♪」
フンガーがエティに、変身ブレスレットのマカイチェンジャーを渡す。
「エティ少尉、今日から君はマカイホワイトだ♪」
「はっ! エティ・フット少尉、拝命いたします! マカイチェンジ!」
俺の前で敬礼してから変身するエティ。
彼女が人から魔族の姿に変わり、変化後の体の上を白いスーツとマスクが覆う。
寸胴体型で手足が太い巨体の白い戦士、マカイホワイトの初変身だ。
こうして、七人目のマカイジャーが誕生した。
「それじゃあ、私達も変身ね♪」
「そうだね、ホワイトのお披露目をしないと♪」
勇子ちゃんと俺は語り合い、全員がヒーロースーツ姿へと変身した。
「イエロー先輩、お披露目とは一体どういう事でありますか?」
「ああ、お前さんの顔見せでござんすよ♪」
ホワイトが、兵学校の先輩でもあるイエローに尋ねる。
「地域の皆さんに存在を認識してもらわないと、任務の妨げになりますからね」
「なるほど、交流も兼ねているのでありますね♪」
ブルーの説明で納得したホワイトの地頭の良さが光る。
「守るべき人達を見て見られる、心身が引き締まりますよ」
「はい、肝に銘じるであります!」
シルバーの言葉に気を付けの姿勢になるホワイト、ドスンと室内が揺れる。
俺達はホワイトの顔見せも兼ねて、全員で商店街のパトロールに出動した。
「商店街の皆様、デーモンナイトと魔界勇者隊マカイジャーでございます♪」
ブルーがマイクで商店街の皆さんにご挨拶をする。
「おおっ! 何か白いのが増えてるぞ!」
「お相撲さんみたいに大きいわねえ♪」
「お~い、マカイジャー♪ 野菜買っていてくれ~♪」
「家の店の肉も、ただいま三十円引きセール仲だよ~♪」
「マカイジャー、今日は良いアジが入ったよ♪ 寄って来な♪」
昼間の商店街、八百屋に肉屋に魚屋さんと街の人達が声をかけてくれる。
「白いのはマカイホワイト、家の新人よ~♪」
「白い勇者、マカイホワイトでありましゅっ!」
ホワイトが緊張からか名乗り台詞を噛んでしまう。
「おう、可愛い声してるなあお嬢ちゃんか? 頑張れよ♪」
「ホワイトちゃん、街の平和を宜しくね~♪」
商店を営む人達だけでなく、通行人も声をかけてくれた。
「あ、ありがとうございます♪ マカイホワイト、がんばります!」
照れつつも手を振り声援に応えるホワイト。
自分達が守るべき人達の事を知り、相手にも自分達を知ってもらう。
ホワイトには軍人ではなく、この街の人達に愛されるヒーローになって欲しい。
そして、人間と言う種族に対して愛情を抱いて欲しい。
愛し愛されての繋がりがヒーローを強くし、人と魔族を繋げる取っ掛かりになる。
「皆さん、ありがとうであります~っ♪」
感極まったホワイト、変身を解除して魔族としての素顔を見せてしまった。
「きゃ~っ、可愛い~っ♪」
「モフモフだ~っ♪」
「アザラシみたいで可愛いぞ~♪」
「モフらせて~♪」
ホワイトの素顔、エティの姿に黄色い声援が上がり街の人達の一部が群がる。
「はわわっ! 皆さん、くすぐったいであります~♪」
街の人々にすり寄られたり撫でられるエティ、予想もしないハプニングであった。
「……坊ちゃん、うちの新人が町の人達の人気を集めてやすね?」
「まあ、モフモフで可愛いからな」
「イエティ族が、人間の皆様に好かれる容姿だと見越した人事でしょうか?」
「女王陛下ならあり得ますね」
「うんうん、可愛いとモフモフは正義よね♪」
人々に可愛がられるエティを見て、俺達は可愛いの力を見せつけられた。
「先輩方に殿下、助けて欲しいであります~っ!」
俺達に助けを求めるエティ。
悪いが、俺達の好感度アップの為にしばらくモフられてもらおう。




