第23話 強化素材は魔界の海で
「殿下、私もご一緒しても宜しいのですか?」
「ギョリンには、祖父ちゃん達とも関係構築をして欲しいんだよ。 万が一の際に護衛を頼む時に備えて」
「確かに、護衛の際の信頼関係は需要ですからね」
ギョリンを山羊原家の母屋へと誘う。
「あ、進太郎がギョリンを連れて来た♪」
俺の事前連絡により家に来ていた勇子ちゃんが、俺達を出迎える。
「勇子様も、どうもありがとうございます」
「うん、ガンスがご飯作ってるから上がって♪」
「では、失礼いたします」
ギョリンも母屋へと上がり居間へと招く。
「あら、いらっしゃい♪」
「おお、良く来たのう♪」
祖父ちゃん達もギョリンを迎える。
「待ってたのだ~♪」
「ギョリン卿の加入を祝しても宴ですよ♪」
フンガーとザーマスも食卓に料理や飲み物の配膳をしていた。
「おう、ギョリンもこれから宜しくな♪」
「ガンス少尉、この臭いは寿司ですか?」
「応よ♪ 近所の寿司屋の大将直伝の散らし寿司だぜ♪」
「皆様、歓迎いただき誠にありがとうございます」
ギョリンが俺達に礼を言う。
彼を歓迎の散らし寿司パーティーは盛り上がった。
半魚人も魚は普通に食うらしく、寿司は馴染みのある食い物だったらしい。
ギョリンとも同じ釜の飯を喰らい絆を結んだ俺達。
六人体制でのマカイジャーが誕生した。
「問題は、私用のロボですね」
翌日、大使館の居間で休憩中にギョリンから機体の事の話をされた。
「確かに、機体は必要だよね合体機能の改造も」
「ええ、それと水中と水上の水場での戦闘も今後は視野に入れましょう」
「ああ、思い返せばリザードマンの海賊には苦労したからな」
あの時は勝てたは良いが、船の上とか水の中では勝手が違った事を思い返した。
「タスクを処理しつつ、訓練メニューの甲案が必要ですね」
「ああ、フンガーにも新装備を突く手欲しい所だね」
「素材集めも兼ねて、魔界へ赴かれる事を提案いたします」
「わかった、夏だし海へ行こう♪」
俺はギョリンの提案を受けて、勇子ちゃんに連絡を入れた。
翌日、俺達マカイジャーは夏の魔界の海の上にいた。
「魔界の海、来たぞ~~っ♪」
「逞しいなあ、勇子ちゃんは♪」
「海のモンスターを倒して素材を狩るんでしょ♪」
「そうだけど、水着は着ないの?」
「水着デートなら後で思い切りしましょう、メリハリは付けるわ♪」
「おう、んじゃあ頑張るか♪」
海賊の船を改良した漁船の甲板で、銛を持ち仁王立ちする勇子ちゃん。
俺もデーモンナイトに変身して釣り竿を持ち、魚群の到来に備える。
魔界の魚は強力な素材になるので、俺達は新装備の為に漁に出た。
「私もガンガン釣るのだ~♪」
グリーンも気合を入れる。
「素材だけでなく普通の魔界魚も釣りましょう♪」
ブルーは釣った魚を食う気満々だ。
「魚を捌くのは、あっしにお任せ下せえ♪」
頼もしい料理人のイエローも気合を入れる。
「船の操舵はお任せあれ♪」
シルバーも打ち解けて来たのか口調が穏やかになる。
俺達の心がまとまったと同時に、無数の影が海面に浮かぶ。
「総員、釣りの開始だ~♪」
「よっし、デカいの釣って魚拓取るわよ♪」
「素材をがっぽりゲットなのだ~♪」
「刺身、焼き魚、煮魚、丼、鍋、食べ放題ですよ~♪」
「釣り上げた分は全部捌いてやらあ♪」
シルバー以外の全員がロッドを振り、海へと釣り糸を垂らす。
魚群が来てる所に垂らせばかかるのは当然。
「おりゃ~~っ! 美味しそうなマグロ♪」
「よっし、こっちも釣れたぜ♪」
「どんどん釣りますよ~♪」
「うっひょ~♪ 魔界ガツオもいるぜ♪」
「色んな魚が釣れるのだ~♪」
大漁とばかりに船に積み上げれる魔界の魚達。
「魔界マグロ十匹に魔界ガツオ十五匹、獲れましたねえ♪」
ブルーが甲板上に積まれた魚達を見て呟く。
俺達は釣果の見分の為に、釣り上げた魚の周りに集まった。
「ひとまず、食料の方は取れたのかな?」
マグロやカツオは装備の素材と言うよりは、食料だろう。
「マグロやカツオでも作れるのだ、マグロアーマーとかができるのだ」
グリーンが美味しそうな防具名を列挙する。
「もっと強い生き物にしない? シーサーペントとか」
「確かに強いのだ、けどエンカウントできるかわからないのだ」
レッドの問いかけにグリーンが答える。
「確かに、レッドの言うシーサーペントなら防御力も高そうだしな」
正直、マグロやカツオだと食い物と言う印象しかない。
龍とかドラゴンタイプの方が、見た目も格好良くなりそうだし。
「取り敢えず、マグロとカツオは一匹ずつ捌いちまいやしょうか?」
「では残りは私が冷凍いたしましょう」
イエローが調理を提案し、シルバーが冷凍保存を行うと宣言。
海の上で獲れたての魚を食えると思っていた所、天気が変わった。
「むむっ! 前方に雷雲ですか?」
ブルーが二キロ先位の空の上にできた雷雲を警戒する。
「あれは、シーサーペントの出る前兆なのだ!」
グリーンが叫ぶ。
「ブルー達は、急いで船内に魚を運んで! ナイト、行きましょう♪」
レッドが得物を銛から両手のマカイカリバーへと変える。
「ああ、それじゃあ行こうか♪」
俺も武器である漆黒の平鍬、デーモンホーを虚空から取り出す。
海面から一匹の巨大な緑色の角と手足のない、ドラゴンもどきが頭を出した。
「殿下、レッド、お気をつけて!」
「あっしらは、船を守らせていただきやす!」
「シーサーペントは頭だけあれば十分なのだ~♪」
「ご武運を!」
仲間達の声援を受け、船から飛び立つ俺とレッド。
シーサーペントは、まずは威嚇のつもりか口を開けて電撃ブレスを吐き出した。
「喰らうもんですか!」
「お返しだ、デーモンサンダー!」
相手の初撃を躱した俺達、お返しだと俺は兜の角から雷を発射する。
『ギャオオ~ン!』
俺の攻撃を受けたシーサーペントの体が痺れだす。
「こっちも行くわ、てやあっ!」
レッドが両手剣を脇に構えて、空から敵へと突進する。
だが、シーサーペントは体を痺れさせつつも尻尾を出してレッドを襲った。
「しまったっ!」
「あぶねえっ!」
尻尾の打撃を受けたレッドを俺がキャッチする。
「大丈夫か、レッド!」
「ありがとう、なんとかね!」
「うっし、じゃあリベンジだ♪」
「ええ、じゃああいつを海から引きはがして!」
「任せろ、デーモンツイスター!」
気を取り直して飛行状態に戻ったレッドから離れ、俺は敵に必殺技を叩き込む。
鍬をぶん回して竜巻を起こし、シーサーペントを空の上へと叩き上げた。
「ありがとう、止めは私が! バーニング、スラ~~ッシュ!」
レッドが、燃え盛る両手剣を空に浮かんだシーサーペントへち振る。
レッドの剣から放たれた炎の斬撃が、空の上で悶える敵の首と胴を切り分けた。
そう言う倒し方をすれば、空の上から敵の死体が落ちて来て波が起こる。
シルバーが操舵する船は、それを見越して距離を取って離れて行った。
「ナイト、頭だけで良いのよね!」
「そう言う注文だったよ!」
俺とレッドは、シーサーペントの頭だけを二人で受け止め急上昇で飛び上がる。
残ったシーサーペントの他の部位は、海へと落下し大きな波を立てた。
「ふう、取り敢えず素材はゲットね♪」
「ああ、早く沖へ帰ろうか♪」
「ええ、乗ってきた船じあ運べそうもないしね」
俺とレッドは、軽自動車サイズのシーサーペントの頭を抱えて沖へと戻った。
先に戻っていた仲間達に出迎えられる。
目的を達成した俺達は、海岸でパーティーを行い魔界の海の幸を堪能した。
シーサーペントの頭は、日本へ帰還後にフンガーの手によって俺達の新装備。
変身後にスーツの上から纏う外部装甲、シーテクターへと生まれ変わった。




