第12話 首狩りピエロを探せ
「う~ん、中々有効な手掛かりは掴めないな」
「首狩りピエロって、名前だけじゃ辿り着けないわね」
小学校での事件を終えた翌週。
俺達は休み時間の学校の教室で、例の事件の話をしていた。
学校でも俺達が解決した事件の情報を提供し、リサーチを行う。
このヒーロー高専には、様々な敵と戦うヒーローや候補が在籍している。
教師も現役ヒーローだったりする場所柄か、事件の情報も集まる。
学校側からの課題として事件に挑んだり、生徒同士で協力して挑む事もある。
ヒーローも悪も、縦や横の繋がりを駆使して戦っているから使える手段だ。
「花子さん達の話だと、あの蜘蛛女は妖魔じゃなかったみたい」
「確かに、いわゆる魔力や妖気は感じなかったな」
デーモンチェックを忘れたのは失敗だった。
「どこかの探偵か、いっそ忍者にでも調査依頼する?」
「魔界の方では、カボチャ忍軍を動かしてるけどまだ成果は無し」
自前の諜報組織も動かしてはいるが、他にも人手は欲しい。
戦うにしろどんな活動するにしても、色々な人の力が必要だ。
今後の為にも、手頃な報酬価格で手軽に依頼できる人材も確保したい。
「ニンジャネットコムで見ても、良い値段するのね?」
「忍者保険に入ってないと高いよ、信頼と実績が大事な仕事だしコネもいる」
勇子ちゃんがスマホで忍者を斡旋するサイトを見て呟く。
現代の忍者は、ある程度表に出ているので昔からの縁故とかがなくても雇える。
ヒーローとして活動している忍者も多いが、今の所ご縁はなかった。
「要するに、情報集めは地味に地道にかつ迅速にって事ね」
「最後の迅速が難しいよね~」
俺達マカイジャーも戦闘チームとしては、そこそこ形にはなって来た。
だが、情報取集の面ではまだまだも良い所であった。
俺達は敵の影も掴めぬ所から、首狩りピエロを追い始めた。
「今日の所は、学校でも情報は得られなかったわね」
「皆色々抱えてるからなあ、ヒットするまで続けよう」
「首狩りピエロは中間だと思ってるんでしょ、進太郎?」
「ああ、魔界にいる何者かの手先だと思ってる」
「子供達は、生贄目的ねろくなもんじゃないわ!」
「ああ、子供の命を奪うのは未来を潰して世界を滅ぼす行為だからね」
学校帰り、俺達は二人で歩きながら語り合う。
クラスでも公認カップルだし、俺達の交際は知られているので誰も気にしない。
悪党が悪さするのは当たり前だが、そうはさせん。
俺達が人生を楽しむ為にも、世界の平和は守らねばならんのだ。
一旦は別れて、互いの家に帰り荷物を置く。
魔法を使い、勇子ちゃんと俺は野戦服に着替えて大使館へ転移した。
「お帰りなさいませ殿下、我々にお客様がいらっしゃいました」
「お客? 珍しいな、こっちは俺達の基地状態なのに?」
「とにかく行きましょう♪ ガンス達も呼んで♪」
玄関でザーマスに来客を告げられた俺達は、応接間に向かう。
「おお、皆さんがマカイジャーの?」
応接間のソファで、紅茶を飲んでいた禿頭で着物姿の老人男性がこちらを見る。
「遅くなり申し訳ございません、我々がマカイジャーです」
俺はお客様に頭を下げる。
「いや、こちらこそ突然の訪問で申し訳ない♪」
「いえいえ、しかしどういったご用件でしょうか?」
お客様であるお爺さんが頭を下げる。
俺としては、初対面で役人でもなさそうな人間がここに来る理由が気になった。
「いや、魔界にさらわれた孫達を救い出してくれたお礼がしたくて来たんじゃ♪」
「ああ、あの時のバスの子供達の中にお孫さんがいらしたんですね?」
「うむ、その節はありがとうございました♪」
「気にしないで下さい、私達はやるべきことをしただけですから♪」
勇子ちゃんがお爺さんに答える、しかしこの老人は只者ではないな。
「儂は伊賀の藤堂と申します♪」
「進太郎、ニンジャネットコムの会長さんよ!」
俺が藤堂さんの名刺を受け取ると、勇子ちゃんが叫ぶ。
「ほう、忍の腕が必要ですかな? これは恩を返せそうじゃ♪」
藤堂さんの目が光る、忍者関係者だったか。
「実は、恥ずかしながらあの事件の黒幕の調査に行き詰まっております」
「なるほど、殿下はそのようにお考えでしたか」
俺は藤堂さんに、首狩りピエロについて話す。
「わかりました、我々も協力させていただきましょうお時間はいただきますが」
「ありがとうございます、宜しくお願いします」
「やったわね、進太郎♪」
「では、明日にでも会社の者を向かわせますので契約はその時に♪」
俺と藤堂さんは握手を交わす、一応相手の気を見てし尿d勁ると判断した上で。
かくして、国内有数の忍者斡旋業者と縁が出来た俺達であった。
俺が学校から帰ると、母屋の居間で茶を飲むスーツ姿の男性がいた。
「父上、何時にもまして疲労が!」
「進太郎か、お帰り。 城じゃないから、父上は止めてくれ」
「父さん、何時にもましてやつれてるよ?」
疲れた感じで栄養ドリンクを飲む、俺に似たスーツ姿の男性。
駐日ゴートランド王国大使である我が父、山羊原秀太郎。
日本と魔界の社会的なあれこれを、一手に担ってくれている架け橋だ。
「色々とな、忍者の会社との契約も済ませたぞ」
「ありがとうございます」
「お前の手取りが三万円なのは、暫く変わらんがな」
「まあ、学生らしく慎ましく暮らすよ」
「勇子ちゃんを大事にしろよ、進太郎?」
「ああ、向こうも俺を大事にしてくれるし」
「最愛の相手と出会えて結ばれるのは、何よりも大事だからな」
父上とのやり取りを終え、俺は大使館へ行く。
「進太郎、一気に情報が来たわ!」
「忍者の能力はすさまじいですね」
「暗号解析が面倒だったのだ」
「手近なところから乗り込みやしょう!」
早速届いた情報の書類を、仲間達は分担して読み解いていた。
「お手玉ピエロとか、笛吹ピエロとかもいるみたいね」
「やはり、複数の悪の組織と手を組んで悪さしてたか」
「こいつらの魔界での本拠も探して、潰さないと駄目なのだ」
「魔界にさらわれた子供達も助けやしょう!」
「地球での奴らのアジトを潰し、その流れで魔界へと乗り込みましょう」
手に入れた情報から、方針を決める俺達。
「じゃあ、まずはこの都市伝説みたいな深夜のサーカステントに乗り込もう!」
「ええ、マカイジャー出動ね♪」
手に入れた情報から、深夜の公園に出現するサーカスへの調査に俺達は出動した。
変身した俺達は外に出て俺が虚空に魔法陣を展開し、一台の装甲車を召喚する。
巨大な狼の頭蓋骨に車輪が六輪付いた幽霊装甲車、ウルフヘッド号だ。
俺達が乗り込むと山羊原家の正門が開き、ウルフヘッド号が飛び出す。
「霊体化スイッチオン、この世の大半の障害をすり抜けるぜ!」
イエローがハンドルを握り走らせる。
「寺社や墓地とか、こっち側のは抜けられないからね!」
「自動的に避ける機能があるから平気なのだ♪」
レッドの注意に開発者のグリーンが胸を張る。
「グリーン、ロボのデザインはグッズ化しても売れる物でお願いします」
ブルーがグリーンに違うベクトルからツッコむ、商売も大事だな。
軽口を言い緊張をほぐした俺達は、現場の臨海公園に到着する。
車内のモニターに映るのは、存在するはずがない巨大なサーカスのテント。
「あれが深夜のサーカスね、このまま意気に突っ込みましょう!」
「あっちからも魔力を感じるな、突撃だ!」
「ウルフヘッド号、開口です!」
「どんな罠も噛み砕けばいいのだ!」
「狼のパワーを見せてやるぜ!」
ウルフヘッド号の口を開け、突撃形態に変形させてから俺達は敵陣へと突撃した。




