04.13 白骨の道 後編
「早急に撤退しましょう」
シメオンは緊迫も顕わな声でシノブに提案する。総勢40名のレンニ達の一隊は、15名もの死者を出していたのだ。
岩竜のブレスを食らったのだろう、4機あった大型弩砲は、全て圧潰していた。この大型弩砲は、一つごとを発射担当の1名と照準や巻き上げを受け持つ3名の計4名で操作する。そのため、大型弩砲に近かった操作係は、ほぼ全員死亡していた。
レンニやマウヌなど大型弩砲での討伐を計画した者達は操作担当で、死亡した15名に含まれていた。一方で矢の運搬を担当していた若者や荷運び用のドワーフ馬は、大型弩砲から離れていたから助かったようだ。
「そうだな、怒った竜が再度来ないとも限らない。それに俺の魔力障壁も大勢になれば防御しきれない恐れもある」
負傷者を治癒魔術で治療していたシノブは、シメオンの言葉に頷いた。
巨竜のブレスを魔力障壁で受け止めたとき押し戻されるような感覚を受けたシノブは、4倍以上に増えた一行を守り切れるか不安に思ったのだ。
「イヴァール! 村に引き返す準備を急いでくれ! 少なくとも狩場から20kmは離れたい!」
セランネ村からおよそ40kmの道を半日かけて来たシノブ達。昼頃、ほぼ中間地点を通過したが、そこから岩猿と遭遇しなくなっていた。
岩猿達が近づかないあたりまでは竜がやってくるかもしれないと思ったシノブは、最低でもそこまでは撤退すべきだと考えていた。
「わかった! 夜道だが命には代えられん! パヴァーリ、遺体を包んで馬に乗せるぞ!」
イヴァールは大型弩砲の部品を梱包していたと思われる厚手の皮布を掴むと、遺体を丁寧に包みだした。パヴァーリをはじめとするドワーフの若い戦士達も、慌てて彼に続いていった。
急いで下山する準備を終えたシノブ達は、夜を徹して山道を進んだ。
シノブとアミィはアムテリアが用意してくれた光の魔道具を使って足元を照らしている。他の者も同様に、灯りの魔道具を使っていた。
さすがに山に入るだけあって全員準備はしていたようで、暗がりでも怪我人を出すこともなく下山していった。
山道を半分以上引き返したあたりで、シノブは野営しようと提案した。しかし、若い戦士達が強硬に下山を主張したので、軽く休憩を取っただけで再び先を急いだ。
既に0時を過ぎていたので、シノブは無理して山を下りるより安全ではないかと思ったのだが、巨竜の攻撃で多くの死者を出したドワーフの戦士達は、少しでも狩場から離れたかったようだ。
「……おお、村だ! 帰ってきたぞ!」
闇の中に微かに浮かび上がるセランネ村の防護柵を見て、若者達の誰かが安堵の声を上げた。
感極まって涙を流す者もいる。ドワーフ馬に騎乗しながらすすり泣く彼らを見ながら、シノブもほっと一息をついた。彼は狩場からずっと魔力感知を続けていたが、追ってくる魔力はなかった。
シノブは村まで竜が追ってこないか心配していたが、それは杞憂だったらしい。
「ともかく一旦休もう。まずは一眠りしてからだ」
村の宿に戻ったシノブは、シャルロット達に宣言する。
もう早朝と言った方が良い時間、しかも騎乗ではあったが一日で約80kmも山道を進んだ。流石に堪えたらしく、全員が疲れた顔をしている。
「シノブ様、念のため私が起きています。私ならシノブ様ほどではありませんが、遠距離の魔力を感知できます」
「一晩中起きていたんだ。一度休んだほうが良いよ」
アミィも竜の襲撃を案じていたようで、不寝番を申し出る。しかしシノブは、彼女の体調を心配した。
神々の眷属とはいえ、今のアミィは肉体を持っているし食事もする。ならばシノブ達と同じで、睡眠も欠かせないだろう。
「シノブ殿。ここはアミィ殿の提案通りにしたほうが良い。村が襲われるようなことは避けねばならん。早期に発見できれば、シノブ殿の光の魔術で攻撃もできる」
敢えてなのだろう、シャルロットは厳しく表情を引き締めていた。とはいえ声音には訴えかけるような力が宿っており、アミィを気遣うシノブの胸中も充分に理解しているようだ。
「……わかった。それじゃアミィ、俺が起きるまで頼むよ」
気遣いも大切だが、今は安全を優先させるべき。そう思ったシノブはシャルロットの忠告を受け入れる。
そして落ち着いたからだろう、シノブはイヴァールがいないことに気付く。
「イヴァールは?」
「戦士達とエルッキ殿の家に行きました。おそらく死亡した戦士達のことを報告しにいったのでしょう」
シノブの問いに答えたのはシメオンだ。彼は去っていくイヴァールの姿を見ていたのだ。
「そうか……仲間だもんな。ともかく休もう! 疲れを取らないことには、戦うこともできやしない!」
イヴァールにやたらと突っかかっていたレンニ達。それでもイヴァールにとっては大切な仲間だったのだろうか。シノブはそんな思いを振り切るかのように、皆に休息するように告げた。
◆ ◆ ◆ ◆
「……う、何だ?」
仮眠を取っていたシノブは、外のざわめきで目が覚めた。
「あっ、シノブ様、起きてしまいましたか! どうも、外で村の人達が騒いでいるみたいです……」
シノブの寝ているベッドの脇で椅子に座っていたアミィが、彼の言葉に答えた。
「今、何時かな?」
シノブはベッドから起き、アミィに尋ねる。
「9時過ぎですね。あれから4時間ちょっとです。今のところ魔力の動きはありません」
アミィは、何も見ずにシノブに答えた。
彼女がシノブのスマホから引き継いだ能力の中に、時計もある。そのためアミィはかなり正確に時刻を知ることができるのだ。
「そうか……とりあえずアミィは休んでおいて。見張り、お疲れさま」
シノブは、アミィのオレンジがかった明るい茶色の髪を撫でると、休むように告げた。
「はい、ありがとうございます。それではここで休ませていただきますね」
アミィはそう言うと、シノブの寝ていたベッドへと移動した。
丸一日以上起きていたアミィは、横になって目をつぶると、あっという間に眠りに落ちたようだ。程なくして穏やかな寝息を立てていた。
シノブが部屋から出ると、シャルロット達も外の騒ぎに気がついたようで姿を現した。
女騎士達はさすがに鎧は付けていないが、軍服姿だ。シノブもそうだが、万一に備えて最低限戦える格好で就寝したようだ。
「何が起きたんですか?」
ミレーユが、不安そうな声でシノブに聞く。
「さあ……俺も起きたばかりだから……。アミィも魔力を感じていないから、竜じゃないのは確かだけど」
シノブは、とりあえず竜の襲撃ではないことを告げる。
三人の女騎士達は、ほっとしたようで肩から力を抜いた。皆、襲撃を懸念して武器を手にしていたのだ。
「死亡した戦士達の件ではないでしょうか? あれだけ大勢の死者が出れば、動揺も激しいでしょう」
こうなることを予想していたのか、落ち着いた態度で告げるシメオン。
「そうだな……まさか、イヴァールや帰ってきた若者が責められているのか!?」
イヴァールを心配したシノブは、足早に宿の外へと出ていった。シャルロット達も、シノブに続いて外に出る。
宿に近い村の広場、そこには大勢のドワーフ達が集まっていた。
死亡した戦士の身内なのか、泣き叫ぶ者。中央に立つ大族長エルッキやその隣にいる長老タハヴォに詰め寄る者もいた。イヴァールも父であるエルッキや祖父タハヴォの側にいる。
「エルッキよ! これだけ大勢の戦士の命、無駄に散らすとは……お主、それでも大族長か!」
白い髪や髭を綺麗に編みこみ、立派な紐飾りを付けたドワーフが、エルッキを非難している。
「息子達を返しておくれ!」
長老衆らしい老人に続き、母親らしい女性も咽び泣きながら叫ぶ。
「イヴァール!」
「シノブか……」
駆け付けたシノブに、沈痛な表情をしたイヴァールは微かに振り向いたが、また視線を前に戻した。
「レンニさん達は自分の意思で出ていったんだろ? どうしてエルッキさんが……」
自らエルッキに嘆願して出ていったレンニの姿を思い出したシノブは、イヴァールに問いかける。
「それでも、決断したのは親父なのだ。
族長は、その決定に責任を持たねばならん。言い訳はできんのだ」
イヴァールは、シノブを見ることなく、絞り出すような低い声で答えた。
「大族長、我が息子達に山狩りを命じたのはお主だ。その責任を取るべきではないのか?」
レンニの父ヴィルホが、群衆の前に進み出てエルッキに問う。
シノブは、自分達の力で解決すべきではないかと大族長に詰め寄ったヴィルホの変わりように、驚きを隠せなかった。
「ヴィルホさん!
貴方は、マウヌさん達が大型弩砲を作った苦労に報いるために自分達で戦うべきだ、と言ったじゃないか!」
ヴィルホのあまりに無責任な言葉に、シノブは思わず口を挟んでしまった。
「我らの問題に人族が口を出すな! 儂は大型弩砲を作ったマウヌの苦労に報いろとは言ったが、無謀な攻撃を仕掛けろとはいっておらん!」
ヴィルホはシノブの言葉をあっさり受け流す。
「作戦はヴィルホ殿やレンニ殿が立てたものではないのか!? エルッキ殿は命がけの戦いだと警告していたではないか!」
シャルロットも手のひらを返すようなヴィルホの態度が許せなかったようだ。彼女は青い瞳に厳しい光を宿らせながら、鋭い声でヴィルホに叫ぶ。
「ふん! エルッキが交易の再開を優先して山に送り込んだ事に違いはないわ!」
シャルロットの言葉にもヴィルホは動じなかったようだ。彼は嘲るような口調で言い返す。
「ヴィルホ殿。この男はそうは言っていないようですが」
ヴィルホの言葉に絶句するシノブ達に代わり、シメオンが前に出る。彼の後ろには、一人のドワーフが続いている。
「……タネリ!」
余裕の表情を見せていたヴィルホが、そのドワーフを見て思わず声を上げる。
シメオンが連れていたのは、レンニと共に集会場に乗り込み、シノブ達の出発を邪魔したドワーフの戦士だった。
「さあ、タネリ殿?」
シメオンが促すと、タネリは怯えた様子で前に進み出る。タネリは何かを気にしているらしく、僅かだが視線が泳いでいる。
「……人族達の言うとおりだ。
大族長は、イヴァールが連れてきた人族達に任せるつもりだった。そこにヴィルホ様が『我らの力で解決すべきではないのか』と詰め寄ったのだ。
大族長はヴィルホ様とレンニの強硬な要請を受け入れただけだ。大族長が命がけだと念を押したのに、レンニは『戦いで命を落としても文句を言うものか』と言った。それにヴィルホ様は『レンニ達は自分の責任くらいとれる』と押し切ったのだ……」
タネリの告白に、ドワーフ達はどよめいた。今や群衆の鋭い視線は、ヴィルホに向けられている。
「ヴィルホ様は族長になれなかったのを恨んでいるし、レンニはイヴァールを嫉妬していた。……レンニに同行した戦士達は、彼らに乗せられたのだ」
タネリは、蒼白な表情で続けていく。よほどのことがあったのか、彼には隠すつもりなど無いらしい。
「ヴィルホに罰を!」
「この恥知らずめ、息子の死すら利用するのか!」
ドワーフ達の怒りの声に、ヴィルホは思わず後退った。こうなっては言い抜けも出来ないと観念したらしく、ヴィルホは悔しげに口を噤んだままだ。
「ヴィルホを拘束せよ!」
エルッキを非難していた長老衆らしきドワーフが大声で叫ぶ。そしてヴィルホは、戦士達に連行されていった。
◆ ◆ ◆ ◆
「よくタネリが告白しましたね~。シメオン殿の冷血魔術は、ドワーフにも効くんですか~?」
ミレーユが感心したような声を上げる。
宿に戻ったシノブ達は、シメオンの部屋に集まっていた。竜に倒された戦士を弔う準備をするために席を外しているイヴァールと、シノブの部屋で休むアミィ以外の五人がいる。
「……なんですか、その『冷血魔術』とは。勝手に変な魔術を作らないでください。私は彼に『獣人の少女が後ろで剣を当てている』と言っただけですよ」
シメオンは、いつもの淡々とした声で種明かしをする。自慢するでもない、ごく普通のことと言わんばかりの落ち着きようだ。
「あっ! アミィさんの幻影魔術ですか!? でも、シノブ様の部屋で寝ているはずですよね?」
ミレーユは、そう言ってシノブの部屋のほうを振り向いた。後ろで纏めた彼女の赤毛が、動きに合わせてフワリと揺れる。
「そうですね。タネリは何か勘違いしたようです」
「シメオン殿。アミィ殿が姿を消して剣を当てていると騙したのか?」
無表情を保つシメオンに、シャルロットは納得がいった様子で笑いかけた。
先日アミィは、行く手を防ぐタネリ達を幻影魔術で姿を消して翻弄した。その衝撃的な出来事を、タネリは強く記憶していたのだ。
「騙したなんて人聞きが悪い。私は誰が誰の後ろにいる、なんて言っていません。彼は何か誤解していたようですが」
シメオンは、相変わらずの飄々とした様子でシャルロットに応じる。その余裕たっぷりな様子に、集った者達は表情を大きく緩ませた。
「シメオン、ありがとう。……俺は考えなしに口を出してしまったが、あのままでは余計に混乱させていたと思う」
「シノブ殿。指揮官を補佐するのは部下の務めです。そもそも私は交渉役として同行しているのですから、こういうときに役に立たなくては意味がありません。
楽な仕事でしたよ……あんな子供騙しがあれほど効くとはね。アミィ殿の技に、よほど恐怖を感じていたのでしょうね。後で彼女を褒めてあげてください」
頭を下げたシノブに、シメオンは彼にしては珍しい微笑みを向ける。
部下の務めと言いつつも、シメオンからは導くような心遣いも感じられる。おそらく彼は、まだ人を率いることに慣れていないシノブに先達として道を示しているのだろう。
「ところでシノブ様、今後の方針を検討すべきかと思います。
アミィさんがお休みである以上、すぐには動けませんし、イヴァール殿もお仲間の葬儀があるでしょう。行動を起こすとすれば、明日以降だとは思いますが、準備はしておくべきです」
アリエルは、今後のことをと進言する。
大きな不幸はあったが、セランネ村は一つに纏まるだろう。ならば再度の挑戦に向けて備えるべきというのは、もっともな意見である。
「まずパヴァーリさん達に、巨竜との戦いがどんなものだったか聞いてみたい。
彼らは凄く動揺していたし、急いで戻ったから聞く暇もなかった。でも竜と戦ったのは、彼らと俺達だけだ。情報は集めておくべきだと思う。葬儀が終わるまで待つことになるけど」
シノブは、竜との遭遇について聞きたいと思っていた。レンニに同行した若者達から詳細を聞けば、今後の戦闘に活かせると期待していたのだ。
「そうだな。竜との戦いなど伝説に謳われてはいるが正確なことはわかっていない。どんな情報でも欲しいところだ」
シャルロットも、シノブの言葉に頷く。これからの戦いの厳しさを想像したのか、彼女の美しい顔は鋭く引き締められていた。
「我々の攻撃は全然効かなかったですから。何か弱点とかあれば良いんですけど」
ミレーユが眉を顰め、首を傾げていた。
飛び去っていく竜に対する、ミレーユの矢やアリエルの岩弾、シャルロットの投槍は、全く効き目がないように見えた。巨竜は避けることすらしなかったが、その体には全く傷がつかなかったようだ。
「効果がありそうなのはシノブ様の光の魔術くらいですね。躱されましたが、逆に言えば命中したら危険だと感じたからでしょう」
「シノブ殿。あれは連発できないのですか? もしくは、回避に合わせて追撃するとか。
シャルロット様から、シノブ殿が示した方向の岩が溶け、その動きに合わせて岩の柱を切り裂いたと聞いていますが」
アリエルに続き、シメオンが口を開く。シノブのレーザーなら有効ではないかと、どちらも期待しているようだ。
「う~ん。領都の時は指より細いくらいの光……だいたい直径5mmくらいだったけど、今回は直径10cmくらいの光の束を放ったんだ。
これは勘だけど、竜が持っていた魔力なら領都の時くらいだと防御しきるか、最悪跳ね返すんじゃないかと思う。直径10cmくらいだと魔力を溜めるのも少し時間がいるし、長い間出し続けるのも難しいな」
今回のレーザーが領都の時とは桁違いであったと、シノブは説明した。
単純に考えて、直径が20倍なら面積は400倍である。それなら魔力も、400倍必要だろう。
そして竜と交戦したとき、相手の強大な魔力量やブレスの威力から、シノブは単純に量を増やしただけでは貫けないと思った。そこでシノブは、とっさに光束の密度も10倍以上に上げていた。
つまり単位時間あたりでは、岩を切り裂いたときの4000倍以上のエネルギーを放ったわけだ。さすがのシノブでも、これを延々と放ち続けるわけにはいかなかった。
「つまり、避けられたら追撃はできない、ということか?」
シャルロットが、シノブに問い返す。
シノブは細かく説明しなかったので、シャルロット達には大まかにしか理解できなかったようだ。しかし、結果として生じる事態はわかったらしい。
「一応、両腕から放つことはできる。それぞれ魔力を溜めて時間差をつけて撃つとかね。だけど、あの竜は発射のタイミングを読んでいた。2度目の攻撃も回避される可能性はある」
「手の打ちようがないってことですか?」
シノブが苦々しげな表情で答えると、ミレーユは悔しそうに呟く。彼女はレーザーに相当期待していたようだ。
「何か方法はあると思う。亡くなったドワーフの戦士達のためにも、このままにしてはおけないからね。……回避できないような策を考える必要があるけど」
シノブは、広場に集まっていたドワーフの顔を思い出しながら言った。
ヴィルホやレンニに扇動されたのかもしれない。しかし戦いに赴き死んでいった戦士達と、それを嘆く家族達の姿は、シノブの目に焼き付いていた。
彼らのためにも竜を倒す方法を見つけなくては、とシノブは改めて決意する。
「それでシノブ殿。具体的な次の方策は?」
シメオンはシノブの意向を確認する。それにシャルロット達も、シノブを見つめている。
「まずは食事かな。皆も食べていないんだろ? 俺の故郷に『腹が減っては戦はできぬ』という言葉があってね。空腹では良い考えも浮かばないよ」
シノブは自分を見つめる面々に冗談交じりに応じた。
対策を練るのは、若者達から竜の詳細を聞いてからでも良い。情報不足のまま話し合っても良い案は出ないと、シノブは思ったのだ。
「たしかにそうですね~。さっきからお腹が鳴って堪らないんですよ。聞こえないか、気になって仕方がありませんでした~」
「……聞こえていましたよ。まあ、お腹が空いているのは私もですけど」
ミレーユが自身のお腹を見つめながら言葉を紡ぐと、アリエルは呆れたような表情となる。しかし次の瞬間アリエルも頬を緩ませ、自分も空腹だと表明する。
「それじゃ、寝ているアミィには悪いけど、先に食事をするか!」
シノブの声に、一同は宿の食堂へと向かった。
焦る気持ちを抑え、落ち着いて対策を練ろう。皆で力を合わせれば、きっと解決できる。頼りになる仲間がいるのだから。
シノブと同じ思いからだろう、歩む者達の顔に憂いは存在しなかった。
お読みいただき、ありがとうございます。




