新たな色々なんやかんや
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領主様の館での面談があった次の日、現在ギルドの受付で手続きの真っ最中です。
レイナの体調も完全に回復したようなので、やっとギルドへの入会とパーティ登録ができるようになった。
「はい、ではレイナさんはパーティ『希望の明日』のメンバーとして登録されることになりますが、よろしいですか?」
「はいっす!」
…そういえばそんなパーティ名だったな、半分忘れてたわ。名付けたの俺なのに。バカス。
「かしこまりました。……正直、ひと月前にギルドでボロボロの格好のまま何度も色んなパーティに声をかけているあなたを見ていて、どうなることかと思っていましたがその様子だと心配なさそうですね」
「あはは……お恥ずかしいところを見せてしまってたみたいで。ご迷惑だったなら、ごめんなさい」
「なにかトラブルを起こしたわけでもありませんし、謝罪の必要はありませんよ」
受付のお姉さんが、なんだか微笑ましいものを見る目をしながらレイナと話している。
一見クールできつめの美人さんに見えるけど、話してみると意外と親切な人なんだよな。
「さて、ギルドへの加入およびパーティへのメンバー登録の方が完了しましたが、パーティの人数が3人以上にまで増えた場合、パーティのリーダーがどなたかを決めていただく必要があります。いわゆるパーティの責任者ですね」
え、なにそれ初耳なんですけど。
「パーティメンバーの誰かがトラブルを起こした際などに、トラブルを起こした者に全責任を押し付け他のメンバーは何もしない、といった事態を防ぐための処置です。実際、ギルドができたばかりの頃はそういったケースが相次いで、解決するのが遅れることが多々あったようです」
「そういった事態が起こった際に、スムーズに解決するためのまとめ役、ということですか」
「はい。かといって立場の弱い人にリーダーを任せて他のメンバーの負荷を押し付けるようなことがないように、基礎レベルの一番高い人がリーダーとなるのが原則ですね」
「んー、私とアルマは両方ともLv24ですし、この場合はどちらが」
どちらがリーダーに、と言いかけた時に、急にメニュー画面が開いた。え、なに?
≪梶川光流の基礎レベルは、昨晩の就寝中に25まで上がっている≫
……は? なんで?
≪魔族のムルガブイオが深夜のうちに自殺し、その結果身体の損傷や状態異常の原因の梶川光流が経験値を取得することになった模様≫
……自殺って、そんなに追い詰めてしまっていたのか。ちょっと罪悪感。
えー、となるとこの流れだと俺がリーダーにならないといけないの? 冒険者としての経験はアルマの方が上なのに。いや別に面倒事を押し付ける気はないけどさ。
「あ、すみません。私のレベル、25でした」
「はい?…………確かに。となると、カジカワさんがリーダーということでよろしいですか?」
今の間は鑑定をしたのかな。
うーん、別にリーダーなんかやりたくないけど、原則から外れるとそれはそれで面倒だしなー。
「えーと、他の二人がリーダーやりたいなら譲ろうと思いますけど」
「ヒカルでいい」
「カジカワさんがリーダーで文句ないっす」
「…そういうことみたいです」
まあ、よくよく考えたらこの中で一番トラブル起こしそうなの俺だしなぁ。
実際、デブ貴族を殴るという事件を起こしてこの街まで逃げてきたわけだし。
ある意味パーティの一番の問題児がリーダーやった方がいいかもしれない。そうすれば他の二人に余計な責任負わせることもないし。
…いや、自覚してるなら面倒事起こさないように少しは自重しろって話だが。
受付のお姉さんの指示で、必要な書類なんかを一通り書き終わりやっと申請が完了した。
「これで登録は完了となります、お疲れさまでした」
「ありがとうございます」
「ああ、そうそう。マスターからアルマさんへの報酬を預かっていますので、この場でお渡ししますがよろしいですか?」
「え? あ、はい」
仕事早いなロリマス。
テキトーな物で済ませる気はないって言ってたけど、こんだけ用意するのが早いと逆に不安だ。
分厚い布に覆われているが、中身はどうだろうか。
布をとり鞘から剣を抜いてみると、赤銅色の両刃の剣身が美しく煌めいている。
錆びた剣の赤さとはまるで違う、艶のある光沢だ。塗装を施しているわけでもなく、剣の材質そのものが赤いのだろう。
もう見た目からして業物ですよーって感じがビンビンしとりますやん。ちょっとスペック確認。
Lv1 鬼喰い鮫の牙剣
ATK+250 INT+100
効果:自動修復
≪オーガイーターと呼ばれるサメ型の固有魔獣の牙を加工して作られた剣。高い魔力を宿しており、靭性剛性ともに優秀で頑丈。また、この剣は倒した対象の数と質に応じて【進化】する。また時間経過で損傷を自動で修復する効果があるが、刀身が折れるほどの損傷は修復不可≫
ぶっほ!? なんか予想以上にヤバい剣だった! ロリマスちょっとサービスしすぎやろ、ありがとう。
INTも100上がるみたいだから、もう杖と剣を併用する必要もなくなるな。翡翠の杖ェ…。
てか【進化】? なんか名前の横に妙なレベル表示があるけど、これとなんか関係あんの?
≪固有魔獣、ユニークモンスターとも呼ばれる、通常の進化とは違う独自の進化を遂げた魔獣の素材を使った装備は成長する武具となることがあり、進化すると形状や補正値、また場合によっては材質そのものが変化することもある≫
成長する武具とな。なんともまた奇妙な剣だなぁ。
俺としてはこういうけったいな武器大好きだけどな。むしろ俺が欲しいくらいだけど、剣を見ているアルマの目がすごいキラキラしてるから冗談でもそんなこと言えません。はいはい、これは君のものですよ。
いつか俺もこういう装備品欲しいなー。現状だと魔力操作を使った素手が一番強いから、これくらい強力な武器じゃないと装備してもむしろ弱くなるし。
「赤くて綺麗な剣ですね。固有魔獣の素材を使っているようですし、頼りになると思いますよ」
「なんかすっごい強そうな剣っすね。赤いし」
「なんだか、前まで使ってた剣より手になじむ気がする。赤いし」
いや赤さはどうでもいいだろ。なにそのノリ。
「あの、近隣の街で魔獣の基礎レベルが一桁台のテリトリーがある場所ってありますか? 早速レイナのレベリングをしておきたいのですが」
「そうですね、本来ならダイジェルという街の近くにある魔獣森林がおすすめですが、あそこはスタンピードが起こったばかりで魔獣の数がまだ少ないので適していませんし、そうなると、反対方向にある港町【ランドライナム】の近くにある魔獣草原がおすすめですね」
魔獣草原。なんだかいままでの魔獣のテリトリーに比べると比較的のどかな響きに聞こえなくもない。
いや『魔獣』とかいうワードがついてる時点でのどかさは皆無か…。
「魔獣草原は中心部に近付くほど強力な魔獣が出現するようになりますが、外周部分ならLv1~5程度の弱い魔獣しかいないので比較的安全にレベリングできると思いますよ」
「そうですか、中心部分になると大体どれくらいのレベルの魔獣が出てくるのでしょうか?」
「Lv50を超える魔獣も確認されているそうです。現在のあなた方のレベルでは挑むのは無謀ですので、あまり深部まで足を踏み入れないようにするのがよろしいかと」
「そうですね。色々と教えていただき、ありがとうございます」
「いえいえ、どうかお気をつけて、飛行士さん」
…なるほど、俺達の担当をしている人だから一通りの事情は聞かされているわけね。どこに人の耳があるか分からないからあまり飛行士とか言うのは控えてほしいんだが。
さて、となるとその港町に行ってみるのがいいかな。港町ってことは、新鮮な海の幸とかいっぱいありそうだな、楽しみだ。
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