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怪獣無双

 最初はどこぞの誰かさん視点。


 この物語はフィクションであり、他の作品や現実世界云々とは一切関係ありません。

 また、他の作品を貶したり批判したりする意図は一切ありませんので、御周知のほどをお願いいたします。





 異世界ものの主人公ってさ、だいたいチート能力とか手に入れて、難癖付けてきたモブを返り討ちにしたり、か弱い女の子を助けて一目惚れされまくるテンプレを繰り返してハーレム作ったり、一般人からしたら常識外れの力を大勢の前でお披露目して『そんなに驚くことか?』とか言ってすました顔をしたり、まあそんな感じだよね。

 別にそれは悪いことじゃないし、ファンタジーな世界で『俺は強いんだー!』ってなりたい気持ちは分かる、よぉく分かるとも。

 少なくともオレは嫌いじゃない。いや、嫌いじゃなかった、と言うべきか。


 で、そんな主人公に出番や立場を奪われて、なんのチート能力も持ってないって捨てられたり見下されたり挙句の果てに追放されたり殺されそうになったりするヤツもいるよね。

 後から『実は隠された能力が最強でしたー』とか『許せない、見返してやる、復讐してやる』って悪堕ちしたりとかする、ざまぁ系や悪堕ち系の主人公。

 

 どちらも物語の中での話だからこそ楽しめるのであって、実際にそんな光景を見たり、その立場になってみるとロクでもないことだっていうのが分かる。

 特に前者のチート系主人公が現代に戻ってきて、異世界で手に入れた力を使って無双してるのなんかはダメだ。

 ステータスだのスキルだの異能だの祝福だの、元々なにもできないヤツがオモチャを買ってもらったばかりのガキみたいにはしゃいで、反吐が出る。

 少なくとも、これまでオレが制裁してやったヤツらはそんな連中ばかりだった。


 そんな力に溺れて俺TUEEEしてるクズが、また一人戻ってきやがった。

 見た目からして日本人だな。冴えない顔だ、こいつもどうせ元は社畜かニートでもやってたんだろう。

 どれだけ潰しても次から次へと湧いてきやがって。ゴキブリかよお前ら。

 デカいラジコン操って遊んでるゴミを片付けたら、コイツもさっさと処分しないとな。


 チート主人公が一番輝いてる時ってのは、力に覚醒した時でも、大群相手に無双してる時でも、ラスボスを倒した後にスローライフを送ってる時でもない。

 チート能力も、頼れる仲間も、強力な武器もなにもかも、全てを失った時さ。




 元々なにも取り柄のなかった奴が、異世界で手に入れた力を失くしてもヒーローのままでいられると思うか?













 ~~~~~レイナ視点~~~~~











 アイナさんと一緒にカジカワさんとアルマさんがさらわれてしまって、それを追ってネオラさんたちがここの職員さんと一緒にやつらのアジトに殴り込みにいってしまった。

 ……よく考えたら、カジカワさんがいるなら連中のアジトくらい軽く全滅させて、自力で戻ってきそうなもんっすけど。

 自分とヒヨコちゃんはお留守番。こっちでなにかトラブルが起きた時に戦力を残しておきたいからって言ってたけど、今思うと上手く言いくるめられただけのような……。


 でも、その判断は正しかった。



『緊急報告! ○○湾の海上にて、き、巨大怪獣が日本に向かって接近していますっ!!』


「……おい、通信機はケチらず常に最新のものを使えとあれほど言っておいただろうが。混線してとんでもない妄言に聞こえてしまっ―――」


『混線じゃないです! マジで体高100mくらいある巨大怪獣が日本滅ぼす勢いで近付いてるんですって!!』



 なにやら泡を食った様子の声が、偉そうなオッサンの持っているカードから発せられている。

 アレは、カジカワさんも使っていた『スマホ』ってやつか。この世界じゃ一般的な通信道具らしいけど、あんなに薄くて小さい道具でよく遠くにいる人と会話できるもんっすねー。

 こっちの世界(パラレシア)の携帯通信魔具はアイテムバッグでもないと嵩張って仕方がないっていうのに。

 あ、でもネオラさんが使ってたのはかなり小さい最新式だったっけ? よく覚えてないけど。



『現場の映像がこちらです! あ、特撮の映像とか流してるわけじゃなくて、これガチのやつですからね!』


「……ふっっざけんなぁぁあっ!!! こんなもんどう対処しろってんだ!!」



 偉い人の目の前にある光る画面には、翼のないドラゴンのような魔獣が海の上を歩いている、いや泳いでる? 映像が表示されている。

 うーわ、こんなのが体高100m超えてるって? どう考えてもヤバいっすわ。



「部長! キレてないで指示を出してください!」


「ああああもおおおおおああああ゛あ゛あ゛っ!! 対大質量脅威シールド展開急げ! 一般人の記憶や記録の消去は後回しでいい! とにかくそいつをこれ以上日本に近付けるなっ!! 足止めしているうちに転移プロセスを構築して、奴を宇宙空間にでも飛ばしてしまえっ!!」


「対象の異質エネルギー数値、およそ3万! シールドはもって三時間しか維持できません!」


「転移プロセスは先ほど使用したばかりで、再構築には五時間ほど必要です! ま、間に合いません!」


「……ふふふ……もういいや、死ねばいいのに……」


「部長! 死んだ目しながら諦めてないで次の指示を!」


「給料分の仕事くらいしろダメ部長!」


「うるせぇぇえええっ!! だったらもうお前一人で竹槍でも持ってあのゴジ〇に向かって突貫してこいやぁぁぁあああっ!!!」



 あーあーあー、どうやらあのデカブツを足止めすることはできても、仕留める手段が無いって状況みたいっすねー。てかゴ〇ラってなに?

 仕方ない、こういう時のための自分たちっす。ちょっくらひと暴れしてきますか。

 まったく、ああいうのをなんとかするのはカジカワさんの役目なんすけどねー。









 ここの職員さんたちに頼んで、海の上にいるあのデカブツは自分たちに任せてもらうことにした。

 職員さんたちは困惑したように自分とヒヨコちゃんを見ていたけれど、自分たちのなんとかエネルギーとかいうのが高いことを確認すると、すぐに送り出してくれた。



「ほ、本当に大丈夫なのかい?」


「あれくらいなら、まあ大丈夫っすよー」


『ピピッ』


「しかし、こんな小さな子たちに……」


「見かけで判断するな、その子供とヒヨコは一時的にあの〇ジラもどきに匹敵するほどの力を発揮できることを確認済みだ」


「アンタも見かけで判断するなっす。こう見えても成人済みっすよ」


「嘘乙。じゃあいってこい」



 嘘じゃねーっすよ! くっそ、未だにちっこいままの我が身が憎いっす!

 ……カジカワさんたちに拾われてからメキメキとレベルは上がっていってるのに、背丈もどこもかしこもまるで大きくなる兆しがないのはホントに悲しいっす……。

 こうなったら、あのデカブツ相手に八つ当たりして憂さ晴らししてやる!



「いくっすよ、ヒヨコちゃん!」


『ピッ!』



 『忍具投影』で水蜘蛛を創り出して、ヒヨコちゃんと一緒に海の上を滑って進んでいく。おお、こうして波に乗ったり波を砕いたりしながら突き進んでいくのはなんだか楽しいっすねー。

 おっと、こんな状況じゃなけりゃしばらくこうやって遊んでいたいくらいだけど、今はそれどころじゃない。

 さっさとあのデカブツを叩きのめさないと、カジカワさんの故郷が壊されちゃうっす。




『ゴギャァァアアッ!!』




 デカブツの目の前まで接近すると、思わず笑ってしまいそうになるほど圧倒的なサイズだということを実感する。

 大きさだけなら魔王の最終形態よりも大きい。

 でも、不思議と魔王ほど怖くないと感じている自分がいるのもまた事実。

 せいぜい、あの黒竜さんくらいの存在感っすねー。それでも相当ヤバいんすけど、今の自分たちなら勝てない相手じゃない。

 黒竜さんに苦戦していたのはその強さよりも、魔力による攻撃が一切通用しないスキルが厄介だったからだし、コイツにそんな能力でもない限りは大丈夫だろう。多分。



『ゴヴォァァアアアアッッ!!!』


「っ! ヒヨコちゃん!」


『コケェッ! コォォォォ……!』



 こちらに気付いたのか、デカブツが自分とヒヨコちゃんに向かって光線を吐き出してきた。

 黒竜さんのブレスに匹敵するほどの火力。こんなのが直撃したら灰も残りそうにない。

 その光線を巨大化したヒヨコちゃんが吸い込んでいき、デカブツに向かって魔力砲を吐き出した。



『コケェェェエエエッ!!!』


『ゴルァァァアッ!!』



 放たれた魔力砲に向かって、さらに大きな光線を放って相殺すると、その衝撃波であたりに大波が発生した。

 二体とも衝撃にまるで怯まず、すぐさま蹴爪と拳をかち合わせて肉弾戦を開始した。



『コケッ! コケェッ!! コケェェェエエッ!!!』


『グヴォアッ!! ゴヴォアアァアアアッ!!』


 互いの拳や蹴りがヒットするたびに、轟音と突風があたりに撒き散らされていく。

 す、すっごい迫力っす。大型の魔獣同士が戦うとこんな感じなんすねー。

 ……あんまり戦いが長続きすると、その余波だけで洪水になりそうだけど。



『うーわ、これじゃまんま怪獣映画じゃねーか』


『映像撮って映画会社にでも売りつければ結構なお金になりそうですね。円〇プロあたりにでも連絡しておきますか?』



 渡された通信機からなんだか暢気な会話が聞こえてくるけど、あんたら今の状況分かってるんすか。

 こっちは波に煽られてえらい目に遭ってるっていうのに。



『あー、レイナちゃん無事か、聞こえるか?』


「大丈夫っす。さっさとこいつを倒さないと海の藻屑になりそうだけど」


『そいつを倒しても一時しのぎにしかならないみたいだけどな』


「はい?」


『今解析中なんだが、そのデカブツはどうやら生物じゃないようだ』


「……え? 生き物じゃないって、どういう意味っすか?」


『それは生き物の形をしたエネルギーの塊だ。君たちの世界で言う『魔法』に近いのかな? とにかく、そのデカブツは自分の意志で動いているわけじゃなくて、操っている本体がどこかに潜んでいる可能性が高い』



 ……要するに、このデカブツを倒しても黒幕が別にいるから、根本的な解決にはならないってことっすか。



「本体の居場所の特定は?」


『解析中だっちゅーの。エネルギー供給ラインやコントロールパルスの発生源を探しているが、どうにも近くの街じゃなさそうだ』


『自分の住んでいる場所に被害が及ばない範囲で破壊活動ってか、反吐が出るな。……んー、なんかパルスが入り乱れてて上手く捕捉できないな』


『ジャミングか? 用意周到なこった』


『いや違う、複数のパルスを確認。……受信対象の数は、あのゴジ〇だけじゃないってことか? ……なっ!?』



 通信機からなにかに驚くような声が響いた。耳が痛いっす。



「ちょっと、いきなり大声出さないでほしいんすけど!」


『レイナちゃん、まずいことになった! 早く離脱するんだ!』


「はぁ!? このデカブツ放っておいて逃げろってことっすか!? そんなことしたらコイツが街を―――」


『そいつ一体だけじゃない! そいつの後ろから、百体ばかし似たような怪獣どもが湧き出てきてるんだ!!』


「は? ……げげっ!?」



 いつの間にか周囲に山があると思ったら、気が付いたらデカブツどもに囲まれていた。

 ど、どこから出てきたんすか!? てか数! 数がおかしいっす!



『まずい、まずい! 一体だけでもギリギリだってのに、この数はないだろ!?』


『早急に本体の居場所を割り出せ! このままじゃどれだけの被害が出るか分からないぞ!』


『……最悪、国家滅亡シナリオも視野に入れた行動も必要かもしれませんね』



 あー、なんか前にもこんな状況になってたような。

 第三大陸でドラゴンに囲まれたり、その後に超強い魔族三体相手に追い詰められたり。

 で、そんな時に都合よく助けてくれる人が駆けつけてきてくれてどうにかなってたけど、今の状況じゃ増援とか期待できそうに無い――――



 いや、そうでもないか。




『!? さ、さらに超強力な反応を確認!! 潜在エネルギー数値、測定不能っ!!』


『レイナちゃん! 今すぐ逃げろぉっ!!』





 だって、このデカブツたちですら比較にならないくらいヤバい気配が、こっちに近付いてきてるし。


 なーんかものすごーく身に覚えのある魔力反応っすけど、誰なんすかねー(棒)

 お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] 大怪獣バトルに割って入る人間大のナニカ ソイツが1番やべえやつ 人型の怪獣とはあいつのことさ
[一言] チートスレ○ヤー的なやつかな? でも、この作品だと「そのとき不思議なことが起こった」くらいの感じでギャグにもってかれそう
[一言] >元々なにも取り柄のなかった奴が、異世界で手に入れた力を失くしてもヒーローのままでいられると思うか? チート消去系能力者キャラとみた。 こーいうやつはチート消そうとした相手がマジモンの努力…
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