日本旅行開始
「に、日本だ……! 日本よ! ワタシは帰ってきたぁぁあああっ!!」
「うるっさいわよ! 周りから変な目で見られるでしょうが!」
「……デジャヴが」
いつぞやの吉良さんよろしく、日本への帰還を果たした感動を抑えきれず絶叫するネオラ君。
そしてそれを尻バットで諫めるレヴィアリア。いつもの流れですね分かります。
はいどうもコンニチハ。
第一大陸での姫様暗殺騒ぎも解決して、ようやくフリータイムに入ることができた。
結局2時間くらいしか護衛する必要なかったのに、しばらく女体化したままだったからもうね……。
で、勇者君たちも復興の手伝いが一段落ついたようなので、前から約束していた通り日本へ連れていくことになった。
連れていくのは勇者様御一行ことネオラ君・レヴィアリア・オリヴィエール・アイナさん。
そして俺のパーティメンバー全員を含め、合計七人+一羽の大所帯である。
いやー賑やかでなによりですねーはははー。
「……なんだあの外人の女の子たち」
「どっかのアイドルグループじゃね? 見たことない子たちだけど」
……周囲の日本人たちの視線が痛い。
うん、そりゃ目立つよね。見た目外国人、それも美少女だらけの集団がこうやって集団行動してたら嫌でも目を惹くわ。
実際は外国人どころか異世界人だけど。
「あの、くれぐれも目立つ行動は控えてくださいね。ただでさえ目を惹くのに、スキル技能やらなんやら使ったりしたら大騒ぎになりますので」
「分かってるよー。んー、事前に説明は受けていたけれど、ホントにニホン人って弱そうだね。誰も彼も生産職の人たちと大差ないように見えるよ」
「極端な話、生産職しかいない世界だと思ったほうがいいです」
アイナさんの言う通り、パラレシアの戦闘職に比べればこっちの人間は弱い。スキルの有無関係なくパラレシアの人間が断然有利だ。
格闘技とか修めている人たちならそこそこ戦えるだろうけれど、それでもせいぜい駆け出しから中堅職程度が限度だろう。
その分、できることの幅は地球側の人間のほうが広いんだけどね。
「万が一、トラブルとかに巻き込まれたとしても慌てず周りに助けを求めるとかして対処してください。暴力は最後の手段。でも自身の安全を最優先に考えてくださいね」
例えば通り魔に襲われてナイフで刺されたとしても、ナイフのほうが折れるだろう。
拳銃で撃たれたとしても、せいぜいモデルガンの弾が当たったくらいのダメージで済むはずだ。
なんせこっちは全員が特級職以上の怪物だらけ。一番弱いアイナさんでさえLv76。最後の魔族騒ぎの際、地味にレベルアップしたそうな。
「あと、『翻訳リング』を忘れずに着用していてくださいね。俺とネオラ君以外はメニューの翻訳機能が使えないので、言葉が通じませんから」
「このミサンガを着けてると、こっちの人たちとも言葉が通じるの?」
「ああ。普段俺が話してる言葉も日本語だけど、アルマたちにも通じるだろ? それとほぼ同じ感覚で伝わると思っていい」
「よくこんなアイテム持ってたな。これも21階層で手に入れたものなのか?」
「半分正解。21階層攻略中に知り合った『吉良さん』って人に先日売ってもらったんだ」
「その人も日本人なのか?」
「ああ。なんか色んな世界を彷徨ってる人で、日本に帰ってこれてからは異世界旅行にハマってるとかなんとか言ってたな」
「なんだそりゃ……」
アルマたちと一緒に日本へ行くことになった時に、あらかじめ相談して購入しておいた。
吉良さんも日本にいたりいなかったりで、マーキングしていなかったらファストトラベルで会いに行くこともままならなかっただろうな。
ちなみに最近はなんか終末っぽい世界でラーメン屋を開いてるとか言ってた。……意味分からん。
「さて、最後の注意点ですが、普通の地球人相手なら万に一つも危険はないでしょうけれど、俺や吉良さんみたいに『他の世界の力』を持っている人間と遭遇する可能性もゼロではありませんので、身の危険を感じたら周りの目なんか気にせず戦うか逃げてください」
「分かった分かった、もう耳にタコができるくらい聞いたわよ。せっかくの旅行なんだし、早く観光としゃれこみましょうよ」
「ニホンって、街並みからしてもうなにもかも自分たちの世界とは違うんすねー。うわ、馬のない馬車が走ってるっす!」
自動車を見て、小さな子供のようにはしゃぐレイナ。いや元々小さな子供か。一応成人してるけど。
交通ルールも教えておかないとな。大事故になりかねん。なお轢かれる側じゃなくて轢く側が危ない模様。
あとナンパ目的で言い寄ってくるヤツがいないか目ぇ張ってないと。
特にアルマを誘おうもんならとりあえず全力で威圧しよう。うん。
「君、可愛いねぇ。どこからきたの? 留学生?」
「一緒に遊ばない? カラオケとか行こうよぉ」
とか思ってる間に早速きやがったな!
いつの間にか高校生っぽい野郎二人組が声をかけてきたようだ。
許さん! いったい誰に声かけて……
「いや、オレ男なんだけど」
「え、嘘ぉ!? いやいやいや、ジョークでしょ? どっからどう見ても女の子っしょ」
「いや確かにあちこちペッタンコっぽいけど、これはこれでスマートで魅力的だからそんな卑下しなくても……」
あ、ネオラ君か。じゃあいいや。
「よくねぇよ! 助けろよ! なんでそのままどっか行こうとしてんだよ!?」
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「うわ、なんかヤベー反応が八つくらい急に現れたんですけど!」
「はぁ? アレか、まーた異世界からのお客様ってか? 日本は異世界観光名所ちゃうぞオイ」
「どうします? 強制退去か、あるいは排除しますか?」
「とりあえず接触は避けつつ監視しとけ。雑魚が二、三匹程度ならさっさと元の場所に返すかブッコして終わりだけど、数も質もちと手に余りそうだ。……特にこの日本人っぽい黒髪がヤバそう。てかコイツこないだも急に現れてなかったか? なんだコイツ」
「ああもう、ただでさえ見失ったイレギュラーどもが跋扈してるっていうのに、余計な面倒を増やさないでほしいですー……」
「見失ったのは丁度このあたりだっけか? もしもエンカウントして戦闘になったりしたら、周囲への被害がヤバそうだな。……どーすっかなー……」
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