二度目の 否 三度目の対面
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魔王城は人類の支配する五大陸に囲まれるような形の、小さな島に現れる。
マップ画面からファストトラベルしようにも、転移先に魔王がいる場合は無理。
転移魔法なら魔王が傍にいなけりゃ転移先に魔王がいても転移できるらしいが、魔王城へ行ったことのある人間がいないので無理。
今の俺なら直接飛んでいくこともできなくはないが、結構な人数がいるし全員抱えていくのはさすがにちょっと……。
そこで代わりの足、というか翼に運んでもらうことに。いやー、確保しておいてよかったー。
「……なぜ私がこんなことを……」
『……なぜ我がこんなことを……』
代わりの交通手段ですが、現在ラーナイア・ソウマに白竜をテイムさせて、魔王城のある島までひとっ飛びしてもらってます。
なんか両方ともブツクサ呟いているが、決戦前に無駄な消耗は控えたいから我慢してほしい。
「文句言うな。片道だけ送ってもらえばそれでいいから」
「まあ黒竜の件では世話になったことだし、協力することもやぶさかではないが……」
『ふん、ブラックの大馬鹿者も人間なんぞに関わらなければもっと長生きできたであろうに、愚かな』
「無駄口叩くな。テメェが勝手にあのクソトカゲのことを馬鹿にすんな。食うぞ」
『アッハイすみません図に乗りました殺さないでくださいマジごめんなさい』
黒竜(故)に対して偉そうに口を開く白竜を低い声で諫めたら、身震いしながら平謝りしてきた。……小物ムーブがすごいなコイツ。
『ブラック』とか呼んでたけど、もしかして顔見知りかなんかだったのかな。いやメンドイから深く聞くつもりはないけど。
「ところでよぉ、お前やアルマティナはともかく俺らが魔王相手にできることなんかあるのか?」
「正直言って、足手纏いになる気しかしないのだが……」
バレドとラスフィーンが不安そうに声を漏らしている。
もうとっくに上級職までレベルが上がっている二人だが、相手が魔王となるとさすがに怖いか。
そして、その不安は正しい。ぶっちゃけ純粋な戦力としてはまったく期待していない。悪いけど。
「はっ、この期に及んで尻込みするようならさっさと帰れよ。相手は魔王だ、誰も責めやしねぇよ」
「おれも怖いけど、ちょっとでも力になれるなら頑張るよ」
アイザワ君はやる気満々で、ラディア君は恐怖を押し殺しながらも協力してくれる姿勢だ。
……なんか申し訳ないなー。
「で、どういう作戦でいく気なんすか?」
「魔王相手に、どう戦う気?」
「ああ、そのことなんだがな……」
ぶっちゃけ、アルマの御両親を一蹴するような相手に対抗できる人間なんかほぼいない。
この中で俺の次に強いであろうアルマでさえも。
黒竜にトドメを刺したことでレベルが上がって、特級職にジョブチェンジしたうえに剣も進化したんだが、それでも魔王と戦うには力不足だ。
だから
「魔王とは俺一人で戦う。俺以外の全員は魔王城の外で待機していてくれ」
「え……?」
「ど、どういうことっすか!?」
『ピィッ?』
それじゃなんのために連れてきたのか分からんじゃないかと思われるかもしれないが、ちゃんと意味はある。
気力操作が使える人間が魔王城の外にいることで、魔王との後半戦が多少楽になるんですよー。
これからの作戦内容を全員に伝えると、バレドとラスフィーンはどこかホッとしたような顔を、アイザワ君とラディア君は不満げな顔を、レイナとヒヨ子は心配そうな顔を、そして、……アルマは、今にも泣きそうな顔でこちらを見ている。
「……そんなことのために俺らは魔王城くんだりまで行くハメになるのかよ」
「いくらなんでも無茶だろ。教官二人を相手取って、余裕で勝つようなバケモンなんだぞ? カジカワさん死んじまうって!」
「自分やヒヨ子ちゃんなら、魔王が攻撃魔法とか使ってきたら吸収して援護できるはずっす。最初から皆で戦ったほうが安全っすよ」
『ピィ!』
皆、各々の意見を俺にぶつけてくる。
うん、気持ちは分かるし、言ってることも間違いじゃない。
「ヒカル、私たちじゃ、足手纏いなの……?」
そして最後に、アルマが悲し気に問いかけてきた。
……その顔を見ているだけで罪悪感が湧いてくるが、言うべきことは言わなければならない。
「そうだ。正直言って、この場の人間が魔王とそのまま直接戦ったとしても、多分一分も経たないうちに皆殺しにされるだけだ」
「……っ」
「全員を守りながら戦う余裕なんか絶対にない。それならまだ一人で挑んだほうがよっぽど戦いやすいよ」
我ながら突っぱねるようなこと言って申し訳ないが、事実だ。
下手したら魔王どころか俺の攻撃に巻き込んで死なせかねない。味方殺しとかマジ勘弁ですわ。
「でも、それはあくまで前半戦の話だ。後半戦は全員の力が必要になる。……特にアルマは危険度が高い役目ですまないが」
「ヒカルのほうが、よっぽど危険。だから、やっぱり私も……」
「駄目だ。……安心してくれ、前半戦で死ぬようなヘマはしないし、そもそも俺がするのは言ってしまえばただの時間稼ぎだ。必要以上に無茶したりはしないよ」
「……もしもヒカルが死んだりしたら、私も死ぬ。だから、絶対に死なないって約束して」
お、おおぅ。かなりヘヴィな約束を要求してきたよこの子。ヤンデレも真っ青ですわ。
「……そこまで言われちゃ死ねないなー。分かった、なにがあっても絶対に死なないって約束するよ」
「……うん」
アルマの頭を撫でつつ、守れるかどうか微妙な約束を無責任にしてしまった。
……やべぇ、俺の生死にアルマの命まで直結してるかと思うと無駄に緊張してきた。
「なんすかね、お二人のやりとり見てたら魔王との決戦前なのにニヤニヤが止まらないっす」
『ピ』
「お熱いねぇ……」
「……ちっ」
しかも周りの連中がこちらのやりとりを見ながらニヤついてやがる。お前らぶっ飛ばすぞ。
アイザワ君だけは不機嫌そうに舌打ちしているが。……彼とも、いずれケリをつけなきゃならんなー。
「おい、海上になにか見えるが、まさかアレが魔王城というやつか?」
「んん? ……あ、うん、アレで合ってるらしい」
ソウマが指差す方向を見ると、海の上になにかが見える。
視力を強化して確認してみると、人類側の王宮に引けを取らない、白の美しい城が立っているのが見えた。
……えー。綺麗だけど魔王城って感じじゃないんですけど。
でもメニュー表示にはバッチリ『魔王城』って書かれてるっていう。
「魔王の城っていうからにはもっと禍々しいイメージかと思ってたんだが……」
「綺麗だけどコレジャナイ感がすごいなあの城」
「カジカワさん的にはどういうのを想像してたんすか?」
「とにかく陰気で床から壁や天井まで生物みたいに脈打っててグロテスクで絶対に足を踏み入れたくないようなイメージだが」
「それと目の前の立派なお城、どっちに入りたいっすか?」
「目の前の城でお願いします」
「……魔王との決戦前だというのに、この緊張感の無い会話はなんだ……」
いや緊張しまくりじゃい。これからまたあのクソバケモノと相対せにゃならんと思うだけで動悸がもうバックバクですわ。
後半戦までひたすら耐えるだけのお仕事だけど、それがもうウルトラハードなこと請け合い。勘弁してくれ。
さて、白竜さんや、一足先に降りるからその後に安全第一で皆を降ろしてくださいな。
そんで降ろし終わったらお前もソウマと一緒に魔族との戦いへ行ってこい。
え、嫌? そうかそうか、今日はドラゴンステーキの食べ比べでもするか。黒いのと白いのどっちが美味いかな。
ん、やっぱ参加するって? ご協力アリガトー。
ではお先に降りるとしますかね。
……あー、こえーなー……。
~~~~~魔王視点~~~~~
『申し訳ございません、思った以上に人類側の抵抗が激しく、想定したよりも手こずっています』
『まるで今日我らの襲撃がくることが分かっていたかのように軍の動きがスムーズで、奇怪な魔道具もいくつか見えます』
『第3大陸に孤立させたはずの特級職たちの姿も確認されています。考えにくいことですが、事前に情報が洩れている可能性は……?』
今世代の魔族たちから、通信が次々と入ってくる。
その内容はどれも芳しくない。想定より苦戦しているといった報告ばかりだ。
圧倒的な質と量により容易く蹂躙できるかと思っていたが、どうやら少々考えが甘かったようだ。
「最低でも5体単位での行動を命じていたが、現状に対応するべく最低20体でグループを組め。多少侵攻は遅れるが、ここは正確さをとるべきだ」
『畏まりました』
「奇怪な魔道具を使用していると言っていたか。利用できそうならば奪い取って使ってみるといい。上手く使えば同士討ちにもっていくこともできるだろう。力任せに戦闘を続けるのではなく、知恵を絞れ」
『仰せのままに』
「特級職どもがいるのは少々厄介だが問題ない。特級職一人に対して戦力を惜しむな、他を放置してでも確実に仕留めよ」
『ははっ』
人海戦術とはいったが、こうして細かく指示を出さねばその実力を発揮しきれず烏合の衆と化してしまう。
逆に言えば、適切に動かせば無類の強さを誇る軍隊として確実に人類を絶滅させるだろう。
思ったよりも人類側の抵抗が激しいが、この状況を覆し得る要素は確認されていない。
消化試合であることに変わりはなく、最早勝利は揺るぎようがない。
だというのに
この悪寒は、なんだ。
相馬竜太の記憶と経験による直感が告げている。
警鐘を鳴らし続け、余を苛んでいる。
致命的な、決定的ななにかを余は見落としていると――――
ガシャン と派手な音を立てながら窓が割れる。
なにかが、窓を突き破ってこの魔王の間に入りこんできたのだとすぐに分かった。
その入ってきたモノを見たところで、頭から爪先まで極寒の吹雪の中に放り出されたような、酷い悪寒を覚えた。
「よう、スパーダのジジイ。いや、本名は相馬竜太、いやいや、今は魔王だったか? おひさ」
「……………お前は……………」
その者の姿を目の当たりにした時、全てが腑に落ちた。
この男だ。
この男こそが、余の悪寒の正体にして、全てを覆し得る人類側の最悪の切り札なのだと、心が、魂が、身体を構成する全細胞が告げている。
震える口元から、その黒髪の日本人の名を吐き出した。
「梶川、光流……!」
「おう。今度はテメェがハツ抜かれる番だぞ、クソ魔王」
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