喰い殺す 喰い殺される 喰い殺せ
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2022/8/20 後のお話と矛盾する点があったので、該当箇所を削除しました。
「あそこの物陰に這う這うの身で隠れてるぞー見逃すなー。はい、魔法で反撃してきたなら反射持ちの亀が前に出て盾になれー。……くぉら! 鷲ども、コッソリ逃げようとしてんじゃねぇぞ! ここの魔族殲滅する前に一匹でも逃げたらお前らまとめて食い散らかしてやるからそう思えやぁ!!」
『キ、キイィィ……』
「……魔獣をテイムするでも飼い馴らすでもなく、脅して使役する者など初めて見たぞ……」
「脅しっていうか、指示に従わなかったらマジで食うつもりだけどな。ほら、豚魔獣とか丸々肥えてて美味そうじゃね?」
『ブギャアアア!?』
「悲鳴を上げてるぞ、やめてやってくれ……」
テイムしたSランク象魔獣の背に、ラーナイア・ソウマとともに乗りながら魔獣どもに指示を出している。
なんでこんなことやってるのかというと、魔獣牧場に墜落もとい不時着した後にちょっとね。
黒竜にぶっ飛ばされた俺が落ちたのは、魔族が運営している魔獣牧場のど真ん中。
落ちてきた俺を待っていたのは、魔族たちの手厚いもとい手荒い歓迎だった。
例によって補助魔法で能力値を弱体化させてきたけど、身体の中に入ってきた『弱体効果のある魔力』を排出したらすぐに解除できた。魔力操作ってホントチートやわー。
まあ仮に弱体化したままでも楽勝だっただろうけどな。大体Lv40~60程度の雑兵しかいなかったし。
で、囲んできた奴らを一匹だけ残して、あとは皆殺し。魔族殺すべし、慈悲はない。
軽く100体くらいはいたかな。おかげでLv82にまでアップした。
レベルが80に達した時点で、例によってメニューの機能が拡張されたのだが、なかなか痒いところに手が届く機能だった。
今回はファストトラベルの機能拡張で、マーキング機能との連携が可能になった。
具体的に言うと、あらかじめマーキングしている相手は、ファストトラベルする際に身体に触れていなくても、たとえ他の大陸にいようとも一緒にファストトラベルをすることができるようになった。
もちろん複数人だろうと関係なく、どこにいようともすぐに合流できるのは便利だ。今みたいに仲間同士離ればなれにされている状態だと特に便利。
さらに、マーキングしている対象を俺のところまで呼び寄せることができるようにもなった。逆も然り。
これにより一気に行動範囲が広がった。……もう馬車も獣車もいらんなこれは。
マーキングできる人数は俺の基礎レベルと同じだけの人数。つまり現状82人だけ。
だから軍の人たちとかマーキングしてない人たちを全員回収するのは無理。
現在マーキングしているのは俺のパーティメンバーにアルマの御両親とその修業メンバー、スパディアのじい様、対魔族軍総隊長こと総おじなんかも。
あとジュリアンとかレイナママとか、ギルマス3人や鑑定師の爺とかとか素材屋の婆さんとか。カナックマートさんや孤児院の院長とか大体そんなとこかな。……あ、あと鬼先生もか。
非戦闘員もチラホラいるけど、この人たち割とキーパーソンだから唾つけておくと色々助かるんですよー。
この戦争中にどれだけ手練れをマーキングできるかによって、今後の状況が変わってくる。
マーキングした人経由でもマップは広がっていくから、接触するのはそう難しくないはず。積極的に手練れのマーキングに勤しみますかね。
……鬼先生を召喚すればこの戦争の全てが終わりそうだが、人類側も終わる可能性大なので本当にどうしようもなくなった時以外は呼ばないようにしよう。
さて、話が逸れたが牧場の魔族をほぼ全滅させた後になにをしたのかというと、牧場で飼育されている魔獣たちとの交渉だ。
内容は至極単純。『攻撃する相手を人類から魔族に切り替えろ』だ。
提案してみたはいいが、魔獣たちからしたら『いきなりなに言ってんだコイツ』『魔族に飼われてるほうが食いっぱぐれないし楽』『つーか人間とか雑魚だろ。人間と魔族どっちにつくかって言われたらそりゃ後者でしょ』って思われていたみたいだった。
で、交渉の余地なしと言わんばかりに襲いかかってきたけど、魔力操作で巨大な手を作って地面に押し付けて強制的に『おすわり』をさせて黙らせた。
魔獣たちを拘束しつつ、気力操作で眼力を強化して威圧をすると、全員大人しく話を聞く体勢になってくれた。
そこからはとてもスムーズに話を進めることができた。
かなり、エグい説得の仕方をさせてもらったがな。
どういう説得をしたのかというと、魔獣たちの前で一匹だけ残しておいた魔族を食うというパフォーマンスをした。
と言っても、本当に食べたわけじゃない。そんなカニバ嗜好は俺にはありませぬ。
大きな顎を模った魔力で魔族の身体を齧りとっていき、抉り取ったところからすぐにアイテム画面へ放り込むのと同時に、アイテム画面から俺の口の中へせんべいを放り込んでボリボリと咀嚼しただけだ。
あんま食欲が湧く状況じゃなかったけど、まあこれも演出のためということで。
物凄くえげつない殺しかただったけど、最初に首から上を齧りとったからそんなに苦しまずに死ねたんじゃないかな。
目に見えない大口で齧りとられていく魔族を見た魔獣たちは、こちらをバケモノでも見るかのような目で見ていた。
魔族の身体を完食した、……もといアイテム画面へ全て放り込んだ後にちょっとお話しするだけで、魔獣たちはその矛先を人類から魔族へと切り替えた。
『俺の腹はまだペコペコだ。この場のお前たち全員を食うことくらい余裕でできる』
『言っておくが、俺よりも強い人間なんかいくらでもいるぞ。そんな奴らに戦いを挑んだところで、お前ら全員殺されるだけだ。要は、お前たちは魔族に騙されて捨て駒にされるところだったんだよ』
『それよりも、俺たち人類に味方して魔族どもを倒すほうがずっと生き残る可能性は高い。魔族を倒した後は、元いたテリトリーに帰してやるから心配するな』
『なお、魔族に味方したままでいたい、という奴はさっきの魔族みたいにこの場で喰い殺します』
……最後の一言の直後に、全ての魔獣が服従のポーズをとっていた。白目で。
いやー、無事説得が成功してなにより。俺も罪のない魔獣たちをいたずらに殺すのは気がひけるしなー。なお普段のレベリング。
で、服従させた後で気が付いたけど、正直こいつら引き連れて進軍するよりも俺一人で暴れまわったほうが手っ取り早いし楽なんだよね。
でも、こいつら放置してると気が変わってやっぱ人類に牙剥くわーってことになりかねないし。
……思い付きだけで行動してるとこうなりますの図。アホス。
内心、割とホントに困っていたところで、テイムスキルを取得している魔獣使いに指揮をとらせたらどうかとメニューさんから提案があった。
つっても、俺に魔獣使いの知り合いなんかいないんだけどなーとか思ってたんだが、ラーナイア・ソウマがいたことを思い出した。
そうと決まれば、まずはソウマをファストトラベルで呼び寄せることに。
ソウマを乗せていた銀色の鷹も一緒に転移させられて、なにが起こったのか分からないといった様子で困惑していた。
今更だけど、こんだけデカいなら鷹っていうか鷲じゃね? どうでもいいけど。
とりあえず、俺に殴られて気絶したままのソウマを生命力操作で回復。
……折られた歯までニョキニョキ生えてくるのは正直ちょっとキモかった。
治療が済んだ後に叩き起こしてから、手懐けた魔獣たちの指揮をとらせるように指示。
起きて早々こんなことを言われて激しく混乱した様子だったが、『いいからやれ』と怒鳴って無理やりテイムさせた。
つっても、さすがに100体近い魔獣たちを全部テイムするのは無理なので、ソウマには2~3匹だけいたSランクの魔獣と適当な魔獣を見繕ってテイムさせた。
それで、始めの間だけ俺も同行して指示を出しながら進軍することに。ソウマだけに任せて謀反なんか起こされたらヤバいし、『逆らったらヤバい』ということを骨身に染みさせないとな。
で、今に至ると。
なんか魔族が100体くらい纏まって、人類側の軍を追い詰めているから魔獣たちに蹂躙させておく。
お、バレドとラスフィーンがいる。
俺が渡した装備を使いこなしながら、次々と魔族たちをミンチに変えていってる。
……ジュリアンの新武装、なかなかエグい威力に仕上がってんなー。怖いわー。
ここら一帯の魔族を殲滅できたみたいだし、後はソウマに指揮を押し付けて俺はアルマたちと合流しますかね。
「じゃあ、俺は行くから魔獣たちの指揮は頼んだぞ」
「は? おいちょっと待てこいつらを私一人に押し付け――――」
ソウマの言葉を遮って、魔力飛行で脱出。
さーて、そこらの魔族をぶちのめしつつゆっくりと進軍しますかね。
今ならファストトラベルで一気に合流することもできそうだが、現在の状況を見る限りじゃかえってバラバラに行動したほうがよさそうだ。
あちこちでトラブル発生してるみたいだし、手広く状況改善をしていきますかね。
~~~~~ヒヨ子視点~~~~~
「やれぇぇぇえ!! 人間どもを踏み潰せぇえええ!!!」
『ギャァァォォォアアアアアアアッッ!!!』
魔族が従えているのは、陸を歩く巨大なクジラ。四肢が生えていてちょっとキモい。
まるでお母さんが言っていた『サンショウウオ』って生き物みたいだ。
しかも、一匹だけじゃない。
同じサイズの奴が5体もいる。ちゃんと毎日エサやってるのか?
「な、なんてデカい魔獣だ……!」
「くそ、どれだけ攻撃を加えてもケロッとしてやがる!」
「上級魔法を使える者はいないか!? 並の攻撃じゃ歯が立たん!」
まずい、まずい。
こないだ海で見たクジラよりも、いやあの大ガニよりもさらにデカい。
身体の動きは鈍いけど、とにかく大きいから広範囲にダメージを与えられるような攻撃じゃないとまるで効果がない。
私の身体のサイズじゃ、まるで歯が立たない。
こんなことなら、身体の大きいラージ・コッコにでも進化しておくべきだった。
どうしようか。
何度も急所を攻撃しまくって脳や内臓を破壊する? いや、ダメだ。時間がかかりすぎるしスタミナも魔力ももたない。
倒そうとする途中で他の人間たちが死んでしまう。
一撃必殺で急所を破壊すればいけるか?
倒した時点でレベルアップできれば魔力は回復できるし、これが一番最善かな。
……問題は、どうやって頭や腹を攻撃するか。
近付いた時点で押し潰される気しかしない。
動きは鈍いけど、歩幅は大きいし間合いを見誤ったらそこで死ぬ。
……他の人間たちには悪いけど、ここは逃げるしかないかな。
『ゴォォォォオオオオオ!!!』
っ!?
クジラが、大きく息を吸い込んだのと同時に私の身体が、いや他の人間たちも浮き上がっていく。
「な、なんだ、か、身体が浮いて……!?」
「ひぃぃいい! す、吸い込まれるっ!!」
「助けてくれぇっ! 生きたまま喰われるのなんか嫌だぁあ!!」
こいつ、私たちを食べようとしているのか……!?
天駆で、いや、クソ! 吸い込む力が強すぎる!
脱出は不可能。ダメだ、喰われる。
助けて、お母さん。こんなところで、死にたくない。
周りで一緒に戦っていた人間たちとともにクジラの口の中に吸い込まれて、私はクジラに喰われた。
もうダメだ。私はこのまま、消化されて死ぬんだ。
お母さんなら、こんな時、どうするんだろうか。
お読みいただきありがとうございます。
>ペットは強い者に従うからね。仕方ないね。
そうですね、その理論で強引に服従させた結果が現在の状況だったり。
なお、恐怖の対象がいなくなった後は魔獣全員がソウマに懐いた模様。
>ヒカルさん、やっぱ味方の大半にバケモノ認定されてるんだね…
この主人公には英雄やら勇者やら言われるよりも、怪物やら化物やら妖怪扱いされているほうが似合うという悲劇。
というか、魔獣の群れを引き連れて蹂躙とかやってること魔王のそれやん。
>ちょっ、おまっ、何やってんだ...
敵味方の大半がそう思っているでしょうね。
割といつも通りのような気もしますが。
>間違って同じ本を買ってしまう事は、たまにありますよね――――
ははは自分も何冊か(ry




