それぞれの、するべきこと
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今回始めはレイナ視点です。
早く、アルマさんたちと合流するべきなのは分かっている。
なんだか大きな気配、多分あの黒竜さんだと思うんすけど、それから逃げられたのは感じとったっす。
それでも危険な状況には変わりないし、自分が一緒にいたほうが生存率は格段に上がる。
でも、この街の奥で見たものを放っておくことは、自分にはどうしてもできなかった。
周囲にいた人たちは、あらかた回収できた。数はおおよそ百人くらいかな。
向こうの物陰にも、手練れの人たちが街を覗いているのが感じとれる。いざという時にはあの人たちにも援護を頼もう。
「ふぅ、剣のグリップ巻きはこれで完了だな。次は、……あ……?」
暢気に武器の手入れをしている魔族の首を、影の中から短剣を振るって刈った。
自分が死んだことにも気付いていないらしく、間抜け面のまま地面に頭が転がり落ちていく。
……人間と同じように、物品の売買や流通をはじめとした生活の営みをしているところを襲うのは、多少は良心が痛むかと思っていたけど、まるで痛まない。
むしろ、早く全滅させてやりたいとさえ思えてくる。……人間の街を襲う魔族たちも、同じような気持ちなんだろうか。
周囲にいて、こちらに気付いた魔族たちの首も急いで落とす。
まだ見つかるわけにはいかない。始めは目立たず確実に数を削っていこう。
影潜りに首刈りだけじゃ限界があるので、マスタースキルという名の毒を仕込んだ吹き矢を、コッソリ突き刺しておいたりとか色々やってみたり。
隠密マスタースキル【あなたの命はあと一秒】は『痛みは感じないけど、確実かつ徐々に生命力を削っていく』効果を攻撃に付与することができる。
毒が回りきるまで時間がかかるけど、気が付いたら痛みもなく死んでいたなんてこともありえるえげつないスキルだ。
自分よりレベルの低い相手にしか効果がないのがネックだけど、雑魚相手にはこれで充分。
さらにあちこちに罠も仕掛けておいた。
侵入したことがバレて騒ぎが大きくなってきた時に起動すれば、魔族を大いに混乱させてくれることだろう。
……魔石地雷の威力も上がっているらしいけど、どんな破壊力に仕上がっているのかちょっと怖いっす。
さーて、あらかた裏工作も済んだしそろそろ奇襲の準備にとりかかるべきっすねー。
人員配置なんかの細かい相談は、あのキョウクハルトにでも任せればいいかな。
とか一段落ついたところで、街中に警鐘が鳴り響いた。
……バレた? いや、姿を見られた魔族はすぐに殺して影に放り込んでから見えないところに捨ててきたはずっすけど……。
「不審な人間を発見した! 各員、臨戦態勢に入れ!」
「人間の数は!?」
「今のところ見つけたのは一匹だけだが、他にも紛れ込んでいるかもしれん! あそこまで露骨に目立っているということは、恐らく陽動だ!」
「そんなに目立つヤツなの……か……?」
「うほははははぁぁあああっ!! 俺様はここだぜぇぇ! 捕まえられるもんなら捕まえてみなぁっ! でもできれば勇者ちゃんに捕まえてほしいけどなぁあああ!!」
………。
さっき助けた筋肉ハゲのオッサンが、最後の良心すら脱ぎ捨てて街中を全力疾走してるのが見えた。
「変なヤツがいるぞぉ!!」
「なんだあの、…………なに……?」
「ぜ、全裸の変態だ……き、奇抜な格好に惑わされるな! 総員、魔法一斉砲火!!」
「ふほはははぁい! 当たるかよぉい!!」
「あ、当たらん! とんでもない速さで全て躱してやがる!」
「なんという出鱈目かつ身軽な動きだ……!」
どうしよう。
あのハゲ、まだ奇襲の段取りが済んでないのに勝手に行動を始めやがったっす。
……助けるんじゃなかったかなー。
いや、でも、もう腹立つくらいこの上なく鬱陶しい動きで魔族を陽動してるから、上手く利用すればなんとかなるかな……?
てかせめて下は穿けっす! 羞恥心ってもんがないんすかアンタは!
~~~~~勇者視点~~~~~
……なんか、覚えのある悪寒が走ったような……風邪かな……?
ファストトラベルで一旦第4大陸へ戻り、転移魔法が妨害されていることを伝えてこれ以上無防備に襲われる人間を増やすのを止めておいた。
ったく、孤立させてから囲んでリンチとはまたせこいマネしやがって。
ファストトラベルは転移魔法とは原理が違うから、妨害の影響を受けないのは幸いだったな。
これなら、人を集めてから一時撤退することも、また第3大陸に増援を呼ぶこともできるだろう。
……最初っからファストトラベルで移動してればこんな事態にはならなかっただろうが、オレもカジカワさんも第3大陸に行ったことがなかったから仕方ない。
増援の編成が終わってから、ファストトラベルで何百人もの人員を一気に送り込んだ。
これだけいれば、孤立している人たちを助けることもできるだろう。
やれやれ、ホントはカジカワさんにもファストトラベルで手助けをしてほしかったが、アルマが危ないみたいでまともに連絡できなかったんだよなぁ。
……集団での行動中に自分の都合で動くのはどうかとも思うが、一応襲われている人たちを助けながら移動してるみたいだし、オレがとやかく言う筋合いはないか。
さて、オレもレヴィアたちと合流するか。
今のオレならそこらの魔族如きに後れを取ることはないだろうが、それでも早めに再会するのに越したことはない。
この大陸は最早、魔族の大陸と言っても過言じゃないぐらいそこらじゅうに魔族がうろついてやがる。
フィリエ王国で見た黒竜も、今じゃ敵になっている。しかも大幅にパワーアップしたうえで。
黒竜以外にもいくつかデカい気配が感じ取れるし、オレ一人でこれらを処理するのは骨が折れそうだ。
それにしても、第3大陸にもかわいい娘がいるんじゃないかって内心期待してたのになぁ。
はるばる来てみれば、どこもかしこも魔族魔族。美人の魔族もいたけど、こっちに殺意満点で襲いかかってくるような女性はNG。コワイ。
≪一応、生きている人たちもまだいるみたいですが、どうも禁忌魔法の生贄にするために生かされているだけのようですねー≫
……禁忌魔法って、この大陸を覆っている転移妨害魔法のことか?
≪はい。ここまで規模が大きく長時間の行使が可能な魔法といったら、禁忌魔法としか考えられません。人の命は、魔法を使ううえでこの上ない燃料ですからね≫
さっさと助けないと、生き残った人たちがどんどん死んでいくってことか。
えげつないマネしやがって。一匹残らず全滅させてやる。
そしてその雄姿を助けてあげた可愛い娘に見せてあげてですね―――
≪アーハイハイ、いいからさっさと合流するなり魔族を殲滅するなりしてください≫
言いかた冷たくない?
真面目な話、モチベを保つのに可愛い娘との出会いはかなり大事なんですが。
贅沢言うなら、今度の子は明るい元気っ娘と出会いたいです。髪はピンク色希望。ペタンコでもたゆんでもおk。背は低めがいいなぁ。
……おーい、なんでウィンドウ閉じたの?
いつも呼んでもないのに出てくるくせに、なんでオレがハーレム語りをする時だけそっぽ向くの? ねぇ。ちょっと。おい。聞けよ。
~~~~~ラディアスタ視点~~~~~
あちこちに、魔獣を飼育する施設がある。魔獣の牧場ってところか。
多分、元々家畜の牧場だったのを、魔族が戦闘用の魔獣を収容するための施設として流用しているんだと思う。
魔力を感じ取ってみると、大体一つの設備にAランク以下の魔獣が100体、Sランク以上の魔獣が2~3体ってとこか。
ここも見つけ次第潰していかないと、いざ集団戦になった時に厄介そうだ。
といっても、おれ一人じゃ無理だな。
カジカワさんから受け取った道具や装備を駆使すれば、あるいは全滅させることもできるかもしれねぇけど、リスクが高すぎる。
上級職以上の戦力が10人でもいれば、比較的安全に攻略できそうなんだけどなぁ。
……ひとまず、他の人たちと合流することを優先して行動するか。
牧場から離れようとする際に、進行方向から魔族が並んで歩いているのを感じとった。
慌てて干し草の山の中に潜り込んで隠れた。
……気付かれてねぇみたいだな、よかった。
魔族たちが向こうへ行くまで、ここでやり過ごすか。
ついでに有用な情報が無いか、聞き耳を立てておこう。
「これだけ強力な魔獣がいれば、人間の軍など一捻りだろうな」
「できればSランク以上の魔獣をもう5、6体育てておきたいが、現状では難しいか」
「うむ、奴隷のように従順に調教するにはかなりの期間が必要だからな」
「奴隷といえば、あの緑髪の人間はどうした?」
「ああ、ヤツは前回の失態を返上するために、東の街に潜伏して人間の軍と合流して諜報活動をする予定だ」
「随分と簡単に同胞を裏切れるものなのだな、やはり人間は滅ぶべきだ……な……?」
「同感だな。……っ!?」
気が付いたら。片方の魔族の首を刎ねて、もう一人の首に短剣を突きつけていた。
頭よりも先に、身体が動いていた。
「な、なん、だ、貴様、は……!?」
「今の話、詳しく聞かせろ」
もうこれ以上、アイツの好き勝手にさせちゃいけねぇ。
……もう、これ以上、アイツを生かしちゃおけねぇ。
お読みいただきありがとうございます。
>全然関係ない話なんだけど、トロイの木馬って―――
ですねー全然関係ないけど早い話が敵を自分のところの心臓部にわざわざ運んでいくようなものですからねー全然関係ないけど(棒)
>ステータスが増えたということは、より美味に―――
残念、ステータスではなくどれだけ進化したかによって美味しさが変わっていくので、味自体は大して変わってないです。
……黒竜の末路については、また後のお話にて。
>あれ、アサシ◯クリード始まった…?
どっちかというとGOTかな。冒険者様の戦い方じゃない……。
いやでも干し草の山が出てきたしやっぱアサクリかな(基準不明
>えっ今知りました?
むしろチャット欄。ライバーに送られてくるマシュマロみたいな。




