RPGのラスボスみたいな
新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。
お読みくださっている方々に感謝します。
「ギャァァァアアア!!」
「クソォォオオオ! ナントシテデモコヤツラヲ生贄ニィィイ!!」
「生贄にはテメェらがなってろやクズどもがぁ!」
「下郎どもが、首を出せぃ!」
「死ね」
吉良さんは様々な武器を投げたり振り回したり、スパーダのジジイは一薙ぎで最低でも3体もの敵を切り捨て、俺は狐面を投げ飛ばして他の狐面どもを攻撃。
数の不利をものともせずに、襲いかかってくる狐面どもを蹴散らしていく。
狐面どもがほぼ全滅するまでほんの数分しかかからなかった。
その様子を怒りも焦りもせず、ただただ涼しい顔をしながら金髪美女が眺めている。
……部下がやられてもおかまいなしですかそうですか。
「ヒイィイイッ! タ、タマモ様ァ!」
「コヤツラ、最早我ラノ手ニハ負エマセヌ! ドウカ、ドウカ御助力ヲ!!」
「……ふむ。良かろ、良かろ。懇願、叶のうてやろうぞ。お前たちはゆるりと休んでおれ」
「ハ、ハハッ! 誠ニ恐縮デアリマ―――」
ゴトリ、となにかが落ちる音がした。
残ったわずかな狐面たちの首が、泣き別れになり滑り落ちた。
「遠慮せず横になれ。案ずるな、お前たちの命も一つ残らず無駄にはせぬ」
狐面たちの血に染まった緋色の扇で顔を扇ぎながら、金髪美女が微笑む。
……なんて冷たい笑顔だ。美人なのに微塵もそそられん。
それを見た吉良さんが、眉間にしわを寄せながら低い声で問いかけた。
「おいアンタ、なんで殺した。そいつらはアンタの部下じゃないのかよ」
「ほほ、これは異なことを。そちらこそ先ほどまで虫でも潰すように、彼奴らを屠っておったではないか」
「敵だからな。だが、アンタはこいつらの主だろうが……! 必死に尽くした部下を斬り捨てる主がどこにいる!」
「部下? はて、役目を終えた手駒や道具ならば足元に転がっておるが、部下などもった覚えはないのぉ」
「ク、ソババアァァァア!!」
激高した吉良さんが、金髪に向かって黒い槍を投げる。
狐面たちに使っていた急所必中の槍。威力も高く、Aランク魔獣程度の相手ならば容易く葬ることができる。
だが、この金髪に命中した時点でピタリと止まってしまった。
「……やっぱ効かねぇか……!」
「当然であろ? この手駒たちと同じに見られては困るのぉ」
「ほぉ、何が違うというのかのぉ!」
今度はスパーダのジジイが、首を狙って白金色の剣を振った。
凄まじいスピードと威力。狐面たちならば身体のどこを斬られても致命傷、のはずだがやはり首の皮一枚斬ることができない。
攻撃が、通っていない。能力値の差とかそういう類のものじゃなくて、まるで遮断されているかのように見える。
「ぬぅ、手ごたえがないの。……『物理攻撃無効』か」
「御名答。わらわには針より鋭い刃も、山をも砕く大槌も通じぬ。そして、先ほどの戦いぶりを見る限りお前たちは肉弾戦が主体。つまり」
言葉を続けながら、扇をスパーダに向かって振り下ろす。
スパーダが剣で受けると、雷でも落ちたかのような轟音が響いた。
「くっ……!」
「そちらの手は一切効かず、こちらからは斬り放題というわけじゃ」
得意げにこちらを嗤いながら、二つ目の扇を取り出しスパーダに振り下ろした。
それを、魔力の剣を作り出す天剣術スキル技能【魔造剣】で受け止めるが、同時に繰り出された蹴りがスパーダの腹を突き上げる。
「ぐふぅっ!?」
「じ、爺さんっ! 喰らえやぁ!!」
スパーダが蹴り飛ばされたのを見て、吉良さんが金髪に向けて雷の矢を掌から放った。
攻撃魔法か? こんな魔法見たことないけど。
それを涼しい顔をしながら、扇で扇いでかき消した。
「ほうほう、妖術も少しは嗜んでおったか。……じゃが、この程度ではのぉ」
「あ、扇いだだけで……?」
「手駒はそこそこ腕は立つ者たちであった。それに使わなかったということは、今のように脆弱な術しか使えぬということの証明であろう。それではわらわを―――――」
あ、もういいや。得意になってるうちに殺っとくか。
魔力飛行で急接近、『魔力パイルバンカー』で顔面をぶち抜くっ!!
「ぶほぁっ!!?」
なんとも汚い声を上げながら、金髪が本殿に向かって吹っ飛ばされた。
……まだ生きてるか。思ったよりも頑丈みたいだな。
「き、効いた? 物理攻撃は効かないんじゃないのかよ?」
「パイルバンカーは物理攻撃じゃなくて、無属性の『魔力攻撃』だからな。魔力を纏った攻撃や、魔力を放出するような攻撃なら効くみたいだ」
「なーるほどな。……しっかし、ひでぇ不意打ちだったな今の……」
敵に気遣いなんかしてる余裕ないししゃーない。
そう言いながら、吉良さんの手の中に拳銃が握られる。
……いや、ホントに拳銃かあれ? なんか未来人が使うレーザー銃みたいにメカニカルな見た目してらっしゃるんですが。
「ふん、ならば【魔刃】を常に使いながら斬ればよいということではないか。最初に使っておればよかったのぉ」
「爺さん、無事だったのか」
「あの程度、蚊ほども効かぬわ。それよりくるぞ!」
『エ、サ、ども、がぁぁぁぁあああああっ!! よくもわらわの顔をぉぉぉおおおっ!!!』
本殿から、ウネウネとした触手のようなものが出てきて、建物を突き破った。
タコの足? いや、九本あるしなんだかモフモフしてる。
九つの、尻尾?
あ、正体分かったわ。こいつは……
「「「九尾の狐!」」」
正体を看破した、3人の声がハモった。
うん、やっぱ有名だし気付くよね。さっきも『タマモ』とか狐面が言ってたし。
……? なんか違和感が……?
本殿の中から、巨大な九つの尾を生やした狐が飛び出してきた。
デカいな。本体も全長3mはあるが、尻尾は軽く20mは下らない長さだ。
『只では殺さぬ……! 生きたまま腸を引きずり出し喰らってくれる!!』
「うわ、なんか某RPGのラスボスみたいなこと言ってる。こわぁ」
「その尻尾、剥ぎ取れば一級品の敷物になりそうじゃのぉ」
「鼻血拭けよ、カッコ悪」
『貴様らぁぁぁァあア!!!』
こちらの言い分に激高した様子で絶叫する九尾。NDK?
尻尾を振り回すと、それだけで四方の竹林が一瞬で刈られて丸坊主になっていく。ありゃ当たったらヤバそうだな。
『シイイィィイイアアアア!!』
「わ゛ぁぁあああ!! ちょ、ちょっと待て! 思った以上にヤバいぞこいつ!!」
「むぅ……! 一本一本が俺の剣と遜色ない攻撃を繰り出してきおる、複数を同時に相手するのは悪手じゃ!」
「なら一本ずつ斬り落とせ! それとジジイ、あんたまた本気出してないだろ! 真面目にやれ!」
「む、良かろう! よう気付いたな若いの!」
そりゃ【気功纏】を始めとしたスキル技能をほとんど使ってないから当たり前だろ。
スパーダが剣を地面に突き刺すと、その身体を中心に魔力が渦巻いていく。
「【魔刃・絶刑】ッ!!」
叫び声と同時に、スパーダの身体が三つに増えた。
それぞれが九尾の尾に向かって突っ込んでいき、次々と斬り落としていく。
……そんな便利な技があるならもっと早く使えよ。
こんな技見たことないけど、マスタースキルなのかな? 攻撃の手が3倍に増えるとか反則もいいとこだ。
あっという間に尾を全て斬り落としてしまって、最後にはただ少し大きな狐の身体だけが残った。
『グゥッ……! ァァァア……!!』
「あ、あっという間に終わっちまったな……オレ氏、まったく活躍の場がなかった件について」
「そこになおれ、妖狐。大人しくしておれば、楽に介錯してやる」
『た、助けて……助けてたも……!』
狐の姿から、元の金髪美女に戻る九尾。
涙を流しながら懇願する様は、酷く憐れみを誘う。
「も、もう誰も殺さぬ……! 人に関わらず、山奥で静かに暮らすと誓う……!」
「その静かに暮らしておったであろう者たちの死体を積み上げたのはお主らであろうが。戯言を抜かすな」
「そう、じゃな……わらわには、もう、死をもってしか、償えは、せぬ……」
「そういうことじゃ。……動くなよ」
力なく項垂れて、首を差し出す九尾。
それをスパーダが、首を斬り落とそうと剣を振り上げる。
剣を振り下ろそうとする、その瞬間。
「……そう、お前たちの死をもってしかなぁぁぁあああ!!!」
「っ!?」
九尾の顔が歪み、笑みを浮かべる。
九尾の周囲に、緋色の扇が次々と出現し、クルクルと舞う。
「くるくる、クルクル、狂え狂え。わらわをかしずけわらわは傾け数多の大国。ひひ、ヒヒヒヒャハハハハッ!!」
狂ったように、うわ言を呟きながら笑い声を上げる九尾。
美女の身体に、狐の耳と、幾分か小さくなった九つの尾が生えてきた。
最終形態ってわけか。……やっぱこいつどっかのRPGのラスボスじゃね?
お読みいただきありがとうございます。
>って事は時系列的にアルマ誕生→20層ボス到達→鬼先生と遭遇だったんだ。―――
本気出した鬼先生に変身されたら、まず勝てないでしょうね。よくて相討ちくらいでしょうか。
でもそれ以上に幼、いアルマの姿をした形態のボスを手にかけなければならないほうがある意味つらかったでしょうね。
>なんかイヤリング借りパクされそう―――
うっかり返す描写を書き忘れていたら、そうなるかもです。
そうかー……もうサ〇発売30周年かー時の流れとは恐ろしい……(;´Д`)
>首に自爆魔道具を付けとくのは無能。―――
某狩りマンガの会長みたいな。地獄があったらまた会おうぜ。
黒竜の背に乗った剣王については、また次回にて。
>次の扉でボスになったジョルノとあって―――
さすがにそこまで露骨な世界線超えと能力強化はちょっと……(;´Д`)
というかこれ以上バケモノにしても扱いに困るし。というか今現在も割と困って(ry




