表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

303/585

フロア攻略大苦戦

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。




スィーっと横になったまま魔力操作で先へ進んでいく。

このエリアは高重力以外はごく普通のダンジョンに見えるな。


低階層のように無機質な造りにトラップが点々とあるだけの階層、なのだが高重力というだけでその攻略難度を何倍もはね上げている。

魔獣が襲いかかってきたら横になった状態で戦うことなんかできないし、長引けば頭に血が回らなくなって意識が混濁してくる。


頭に血を回そうと宙づりみたいな状態になって戦おうともしたけど、俺も相手の魔獣もすごく戦いづらい状態にしかならなかったのでやめた。

攻防の間になんかものすごく怪訝そうな顔で首を傾げてこちらを見ている魔獣の姿を見てると、なんだかいたたまれない気分になってくるというか……。




19階層の道中はとにかく身体が重く、着ている装備すらまるで拘束具のように動きを制限してくる。

非戦闘時はアイテム画面に放り込んでおいて、戦闘時にのみ装着するようにしているがそれでも煩わしい。


襲ってくる魔獣もそれは同じなようで、負担を減らすためか重力に逆らわず振り下ろすような攻撃が多く動きが読みやすい。

一度回避してしまえば高レベルの魔獣らしからぬ大きな隙を見せてくれるので対応は割と楽だ。魔力パワードアーマーの補助があれば魔獣たちに比べて素早く動けるし。


あと、時間さえあればここの階層は身体を鍛えるのに最適かもしれない。

常に高重力の負荷がかかっているためか、この階層に辿り着いてまだ半日程度しか経過していないのに筋力や素早さがどんどん上がっていってる。

大体、2時間に1ずつくらい上昇してるかな。ここでひと月だけでも生活したらとんでもないことになりそう。主に筋肉が。



手に入るアイテムも上々。やっと幸運値先生が仕事し始めてくれた。

能力値が上がる種がガンガン手に入るし、一時的にブーストをかける補助魔法の代用品みたいな薬まで手に入った。


装備品のほうはヒヒイロカネ製のナイフや槍、そしてついにオリハルコン製の防具まで手に入った。

この階層じゃ、金属製の装備は重くて使えたもんじゃないしアイテム画面に収納しておいたけど、これもおニューの大槌の材料に使えそうかな。


≪梶川光流や魔王クラスの能力値をもつ者とのぶつかり合いになった際は、純粋なオリハルコンでは耐えられない可能性あり≫


お、おう、そっすか。

オリハルコンって、この世界じゃトップクラスの強度を誇る金属らしいんだがそれでもダメなのか。……どーすっかなー。

いや、待てよ? 確か以前、狩猟祭が終わったあたりでメニューさんがオリハルコンを使ってどうたらこうたら言ってたような……。まあいい、帰ってから考えよう。


アイテム画面やアイテムバッグがなければ戦利品を持ち帰ることもままならないだろうな。

他の階層に比べてアイテムのドロップ率が高いのも、欲張りすぎた冒険者をハメるためなのかもしれないな。性格悪っ。




さーて、レベリングに筋トレ(強制)、戦利品も充分。あとはボスフロアへ行くだけだ。

今の俺はLv76。このダンジョンに潜って既にレベルが11も上がっている。


数日でこんなにレベルが上がるのに、なんで他の冒険者は……ってこんなトコでレベリングしようとするのはメニュー無しじゃ遠回りな自殺にしかならんか。

そうだ、勇者君が試練を乗り越えたらここでレベリングすることをおすすめしてみよう。

『はぁい、調子いい? いいレベリング場所知ってるけど、行ってみない?』って感じで。

まあ『どうせヤベー場所ですぐ死にまくるんやろ、騙されんぞ』って遠慮されそうな気もするけど。







19階層最深部には、赤い水晶玉のようなものをこれまた巨大な水晶で覆ったようなものが鎮座していた。

見た目は綺麗な天然もののオブジェのように見えなくもないが、メニューが言うにはあれも一応魔獣らしい。



『★グラヴィティズ・クリスタル』という固有魔獣で、名前からしてどんな能力を持っているか丸わかりな魔獣だ。

ユニークスキルに【重力魔法】ってのがあるし、多分このフロアの高重力もこの魔獣の影響なんだろうな。



『………………』



キーン、と無機質で甲高い音とともに、水晶玉の中心がより強く赤色に光った。



「う、ぐおおぉおっ……!!?」



それと同時に、これまでとは比較にならないほど身体の重みが増した。

魔力パワードアーマーの補助があっても立ってられない。並の人間なら多分ペシャンコに潰れているだろう。


普段の重力の20倍近い負荷。ここまで強くなると、どういうふうに重力を強めているのかなんとなく分かってきた。

多分、自分の周りに魔力を展開して、それを下方向へ強烈に押し付けているんだ。

空間そのものに負荷をかけているから、空気も物体も関係なく重力の影響を受けてる感じか。


うぐぐぐぐ……!! こ、このままじゃまずい……!

まだ生命力こそ減っていないが、高重力の影響で血の流れが大きく狂いだしたらダメージを受け始めるだろう。

身体を横にしてもダメだ。重力が強すぎて全身の血が地面に引っ張られてるみてぇだ……! 生命力が尽きたら体中の血管が破裂して死ぬ!


気力強化で無理やり身体を動かしても、とんでもないスピードで気力が削れていく。

普段と同じように動けるのは恐らく5分が限界。その間にコイツを仕留めろってか?とてもじゃないが無理だ。


こいつLv91でしかも固有魔獣だし、ほぼほぼ鬼先生と同格ってことだろ?

鬼先生の膂力なら真獣解放を使えばなんとか動いて攻撃できるだろうが、今の俺じゃそう長く保たん。


どうする、どうやって、コイツを攻略する……!?












~~~~~学校の怪談状態を満喫中の勇者一行視点~~~~~













暗闇の状態で、急に教官から持たされた通信機から着信音が鳴り響いた。

通話ボタンを押すと、剣王ことデュークリスさんの声がスピーカーから発せられた。



『もしもし。私だが、いま大丈夫かね?』


「はい。遺跡を攻略中ですけど、とりあえずは」


「ちょっと教官! なんてタイミングで通信かけてきてるのよ! ビックリしすぎて死ぬかと思ったわ!」


「な、なにも見えません……! 照明、照明のスイッチはどこですか……!?」


『……本当に大丈夫なのかね? なんだか悲痛な声が聞こえたような気がするのだが、もしかしてまずい状況だったかな……?』


「……気にしないでください」



ある意味最悪のタイミングだったけど、今のところなにかが襲ってくる様子はないし、特に怪しい気配も感じとれない。

通話をするくらいの余裕はありそう。むしろこの状況じゃ精神的に誰かと話していたほうが気が楽だ。



『試練の進捗状況はどうかな? 過去の勇者の中には、攻略するのに丸一月以上かかった者もいるらしいが』


「あー、いまようやく折り返しってところですね。このペースでいけば、あと5日もあれば最深部に着くと思います」


『おお、順調だな。その様子じゃ大きなトラブルもないようだし、ひとまず安心したよ』


「……まあ、ここまでくるのに軽く100回は死んでますけどね」


『そ、そうか。随分苦労しているようだね。……まあ、いつものことだしなんとか頑張ってくれ。いや、死ぬのがいつものことというのもおかしな話だが』



ですよね。もはや死がすぐ傍にあるのが日常と化している今日このごろ。オレたちゃ修羅かなにかか。



「そっちのほうはどうですか? 順調?」


『いや、恥ずかしい話だがまるで上手くいってなくてね。ラディア君やアラン君はすぐにこなしたというのに、我ながら情けない限りだ』


「あー、まあ無理もないですよ。さすが梶川さんの指示というか、普通とは勝手が違いますし」


『うむ。……そのカジカワさんこと、ヒカル君のほうの状況は分からないかね?』


「ええと、すみません。この遺跡の中じゃメニューが使えないので、梶川さんとは連絡が取れないんですよ」



まあ、向こうはメニューが使えるみたいだし、こっちの状況は丸わかりだろうけどな。

日に何回死んだとかもバレてたりするのかな。なんか恥ずかしいわ。



『しかし、まさかあのダンジョンの21階層を目指しているとはな。普通だったら絶対に止めるところだが』


「アルマたちには黙っといてくださいよ。下手したら梶川さんを追って潜りかねない」


『分かっているさ。あのダンジョンの恐ろしさは私とルナティも身をもって知っているからな』


「お二人も21階層まで攻略したことがあるんでしたっけ?」


『うん、まあ、19階層まではさほど苦労せずに攻略できたが、20階層がな……』


「20階層? 危険なのは21階層からじゃないんですか?」


『まあその通りだ。21階層からは世界の理そのものが乱れているとしか思えないような怪現象の数々が、扉を開けるたびに襲い掛かってきていたよ。その分、見返りも大きかったがね』


「でも、いま『20階層がな』って」


『ああ。あれ以来、足を踏み入れていないのは、……私としては21階層以降の恐ろしさよりも、20階層で待ち受けていたものにもう2度と立ち向かいたくないから、なんだ』


「……20階層に、なにが?」


『それは――――』







「びゃぁぁぁあああああっ!! あああ!! 窓に、まどにぃぃいいい!!」


「はっ、はっ、はひっ、はひゅっ、ひゅっ、ひゅぅ……!!」



会話の途中で、レヴィアが絹を裂くような甲高い悲鳴を上げた。

その隣では、オリヴィエが引き笑いにも似た息を漏らしている。



「お、おい! レヴィア、大丈夫だ! 窓にはなにも居ないぞ! てかオリヴィエも落ち着いて! 息を整えるんだ!」


『な、なにかあったのかね!?』


「い、いえ、ちょっといま攻略中のフロアがすごく不気味なところでして、ちょっとしたことに過剰に驚いてしまうような状況なんです……」


『そ、そうか。……というか、死んでも大丈夫なのに怖いのかね?』


「いや、直接死に至らしめるような脅威とはまた違った怖さがあって、さながらホラー小説の登場人物にでもなったような気分なんですよ。正直言って、オレもすごく怖いです……」


「うう、ヒック、ヒック……!」


「…たすけて……おかあさん……おとうさん……!」



アカン。通話に夢中でさっきなにが居たのか分からんけど、今ので二人のSAN値がゴッソリ持ってかれたっぽい。

特にオリヴィエがヤバい。お母さんはここにはいないぞ。



「な、泣くなレヴィア。オリヴィエも落ち着け。幼児退行起こすなよ。大丈夫だから、な?」


『……随分と混沌とした状況のようだね。ひとまずいったん切ろうか?』


「あ、あの、無理を言うようですがしばらく繋いだままでお願いできませんかね? こうやって会話してるだけでも随分精神的に楽なんですよ。というかお願いします。しばらく会話に付き合ってくださいぃ……!」


『そ、相当追い詰められてるようだな……。別にいいが、そちらの叫び声がこちらのメンバーに筒抜けなのだがそれでもいいのかね?』


「え? ……他のって、もしかしてアルマたちもそこにいるんですか?」


『いや、アルマとレイナ君はいないが、……こらこらヒューラ君、そんなに笑っては彼らに悪いだろう。アラン君も顔を逸らしても口角が上がっているのが隠しきれてないぞ』


『あはははははwwwwwぶっふwwwゲホッww わ、悪いね、つい』


『…………ククッ……』



なんで他のメンバーもいるんだよ!? もっと内密に連絡してくれよ!

てかなに笑ってんだ! こちとらホラゲー実況者じゃねーんだぞ!

ヒュームラッサはともかく、アイザワのガキに笑われるのはマジ許せん。帰ったら覚えてr――――――――――






ウボァ と不気味な声とともに、オレの目の前に能面のような巨大な顔が急に現れた。






Oh






『ウヴャァァァァアアア!!』


「ひぎゃああああぁぁぁああああっ!!!?」


「いやぁぁぁぁぁああああああああっ!!!」


「もういやぁぁぁああかえるぅぅぅうう!! おうちにかえしてぇぇぇええええ!!!」




『ね、ネオラ君! なにがあったんだね!? おい!』


『ぶははははwwww叫びすぎだろwww腹いてぇwwww』


『ブフッ、クククッ……!』


『笑うのはやめてやれ! 彼らは真面目に怖がっているんだぞ! もしもし! 返事、返事をしなさい!』






お読みいただきありがとうございます。



>NOと言えない主人公(ヒロイン限定)―――


いや、正直レイナ相手でも断り切れるか微妙だと思います。

心弱すぎワロタ。


>勇者がやってる試練、なんかスーパーマ○オメーカーの―――


メタ読みが酷いのは、同じ地球人だからですねー。

お化け屋敷ですが、実際はハーレムを満喫するどころじゃない模様。ィ㌔。


>まだ8回って……勇者ちゃん一行は何か別ゲーやってる気がする―――


アイテムがあったらそっちに視線がいって、死角に不意打ち要員の敵や罠があるという悪辣ぶり。なんてフロムチックな試練でしょう。


>突然、ゴースト系のモンスターが出てきたら―――


結果、地獄絵図。本人たちは滅茶苦茶怖がってるのにはたから悲鳴を聞いてるとギャグにしかならない模様。

死に戻りの恩恵があることを知らなければ笑ったりはしないでしょうが、他のメンバーも事情を知っているので遠慮なく笑いまくってます。ひでぇ……。

あと、太陽置いても魔王ならなんとかしそうという恐怖。ラスボスが強すぎて物騒な発想をガンガン出されても問題ないという。なんだこの小説。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] ここでハイジョージが出てくるとは… 因みにアレ最後噛みつく大口開けてるシーンで終わりますが、セリフが「you float too」の「too」のトコなので「ウ」の口で、発音時口は閉じている…
[良い点] >はぁい、調子いい?&騙されんぞ つまりネタのオチを二人で再現したら『カッパを着た美少女に見間違える青少年の腕を、鋭い牙を生やして噛みつこうとするピエロ姿の25歳』になるのか······も…
[良い点] 面白過ぎて一気読みしてしまいました! [一言] 控えめに言って『神作品』です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ