67 香
短いですorz
任意同行が良かったな、と思いつつ。
アオムシ屋の前。
そのムシムシした名前とは裏腹に、木に寄り添った、ちんまりとした素朴な小屋であった。
フェアリーズがどうだ、と胸を張っているので、礼を言いつつキャンディーをばらまく。紙で作った棒が刺さっている奴だ。
これ、小さいのも作ってもらおう。顔サイズの飴は鬼畜だな。ボンボン作ってもらおうかなぁ。
とりあえず店に入るか。店の前に屯していても迷惑だろう。
「これ、ドアノブに届かないじゃないか」
ぴょんぴょんと跳ねたり、【空駆け】してみたりしたが、届かない。
「ぷぷぷ」
「ボクらについてくればいいのよ」
あろうことかフェアリーズ、私の手を引っ張ってドアに突撃した。
「開いてない、ドア開いてないから!待てって!」
「ダーイジョーブサー♪」
フェアリーズはズブズブするんとドアをすり抜けた。
私は扉に鼻面を打ちつけた。痛い。
思わず顔をさする。
「全然大丈夫じゃないじゃないか」
「あっれー?」
「イケると思ったんだけどなー?」
「ごめーん」
にょきっと壁から顔だけ出してるフェアリーズ、許さん。そこへ直れ。
「何を騒いでおる?」
「ブッ」
聞き覚えのある若々しくも重厚な声とともに、扉が開いた。
つまり、扉の前にいた私は吹き飛んだ。
日本式の外開きらしい。
今日は厄日だ、うん。
「何ぞ変な鳴き声が……」
「オッド爺、あれじゃんじゃんっていうの」
「星渡りの旅人〜」
「ともだちー」
顔を上げると最初に出会ったハイエルフっぽいのがいる。あれがオッド爺なのか。
パッセルもいた。挨拶がわりか片方の翼を上げている。
「紹介してくれる前に助けて欲しかった」
よろよろと立ち上がり、歓談の輪に近づく。正確には、フェアリーズが群がるハイエルフに、だが。
「おお、ついさっき会うた人の子か?さっきぶりかの?」
「……数日ぶりだ。私からしたら久しぶり、といったところだ」
オッド爺が顎に手を当てて「はて?」と首を傾げていた。
「して何用か?妖精どもに好かれておることだし、悪しきものでもなかろうが」
どうでもよくなったらしい。まあ私も助かる。
「いや、元の大きさにならないかと。貴方くらいに」
「なるほどのぉ。確かに。ふむ。あるが、ちと弱くなる。それでも良いかの?」
「ぜひに!」
やったー!!
招かれて小屋に入る。
漢方薬屋とはこんな感じなのだろうか。
銀の大樹に侵食された屋内は薄暗く、天井のあちこちから何かの干物がぶらさがり、棚の瓶にも何かの乾物が詰められている。ちょっとカビくさいような匂いが鼻をかすめる。
「まあ座るがよい」
オッド爺は中央の調合卓に早々に座り、向かいの椅子によじ登る。
「ヒトム毛虫、王菊、ナリ草、ワラビヤモリ、精霊ミミズ、ゲンソウ桂、ナツメヤツメ、ホコウ芍薬、ジンジャーマンの胆石、ムシャノ花」
用意されたすり鉢に、呼ばれた材料が踊るように飛びこんでいく。
黒焼きが呼ばれて絶望した。
「破!」
小さめのすり鉢に溢れていた素材は、オッド爺の一言で粉々になった。すり鉢の意味。
いつのまにか用意されていた三つ足の香炉に、匙一杯分をつっこむ。
「火よ」
ぽっ、と空中に火花が浮かび、ゆっくりと香炉に落ちていく。粉末に火がついたのか、薄水色の煙が立ちのぼる。仏壇の匂い。
オッド爺はおもむろに扇子を取り出す。
「ゴホッ、」
私に煙が直撃した。目がぁぁぁ!
「一体何……」
ん?目線が高い。フェアリーズが私より小さい!!
「流石我。ひさびさに調合したが、良い出来じゃ」
うむうむ、と満足げ。私もめちゃくちゃ嬉しい。思わず手を握っては開いた。
現実としては何も変わらないのだが、それはそれ。
「ありがとう!!」
万歳!
パッセルもいそいそと私の頭の上にもそっと陣取る。可愛い。
「お代はミツミツの実で良いぞ」
「……もう無いんだが」
す、とオッド爺の目が細くなる。地雷踏んだか?
しかし、私のストレージにある残りのは、鍋さんに予約すると言われた分しかないのだ。
「嘘を申せ。ジャン、真実を述べよ」
「……今、持っている分は、先約がある、から、ない」
口が勝手に話す。気分悪いなー。結構全力で抵抗しているんだけどな?
「むぅ、仕方ないのぉ。貸しじゃ。よいな、次に手に入ったミツミツの実は我への代に充てよ」
「覚えておく」
「その香が持つのは一日限りじゃ」
そう言って瓶に粉末を詰めて寄越された。意外と良い人だ。
「香炉はどうする?」
頂きたいです!




