「後醍醐家の為」
起きると目の前にきらきら笑顔の詠飛、そして無表情の伸稲。
後鳥羽とも無事に挨拶を交わし、日記に今日の出来事を書くも……。
4月14日
後醍醐家別棟 騅の部屋
後醍醐 騅
僕は昨日1日考えに考え込んだ。
授業も集中できていないくらいに。
何かって?
それは明にあのことを言うか、言わないかだよ。
でも僕は言うことにした。
学校から帰ってきた、今しかない。
そう思う前に足が本棟へと動いていた。
後醍醐家本棟
後醍醐 騅
本棟の扉を開けるのは何度目だろう?
もう忘れちゃうくらい、ここには来ている。
そんな扉を今日も開く。いつもより力を込めて。
そして執事たちに適当に挨拶をし、明の部屋へと駆けていった。
「ここだ。いるかな……明。」
僕は少しだけ胸の前でぐっと力を込めて手を合わせ、祈ってからノックした。
すると明はまだ幼い声で、返答をしてくれた。
後醍醐家本棟 明の部屋
後醍醐 騅
慌てて入ってきた僕を明は冷ややかな目で見てきたけど、僕は構わず明に抱きついていた。
「な、なに……?」
と、明らかに嫌がる明に僕はその姿勢のままで、一昨日の後鳥羽から聞いた話を大分噛み砕いて聞かせた。
「……明が?」
「そうなんだ。僕は4人目だから…………関係ないけど明は…………。」
「何それ。明が滅ぼすの?」
「う、うん。」
「あと、明は……Aじゃないよ。」
「え?」
「詠飛兄さんに聞かされていた。多分だけど、きんきら騅もAじゃない。」
「……だよね。」
「・・・」
「詠美姉さんとお母さんを見ていたら、僕は違うなって感じることがあるんだ。多分、そういうことだよね?」
「うん、多分。じゃあ明はもう要らない子だね。だって、後醍醐家を壊しちゃう子なんて要らないでしょ? 要るか、要らないかなら、明は要らない。」
と、明は突然僕を突き放して言った。そして、今まで遊んでいたおもちゃを急にまとめ始めている。
「え? ま、待って!」
と、僕は思わずその腕を掴んでしまった。
すると今度は乱暴に振り払い、
「後醍醐明は、もう要らない子なの!!!」
と、大声で叫んだ。この家中、いや、もしかしたら別棟にまで聞こえるくらいの声の音量で。
そうなると、そんな叫びを聞きつけた本棟の兄弟たちが、明の部屋に集まってきてしまった。
「騅、もしかして……言ったのか?」
と、眉間に皺を寄せ、立ち尽くす詠飛兄さん。
その顔に僕は嘘をつけないかった。
「はい。」
「まだ3歳なのに、そんな現実を……?」
と、眉を下げため息をつく純司兄さん。
「これを知るのは、まだ早かったんじゃねぇの?」
と、散弾銃を肩に乗せ、どこか楽しげな傑兄さん。
「そうだよ。中学生くらいになってからだって、よかったよ? 少しはわかると思うし。」
「だよなぁ? 純司。」
「2人ともよせ。もう言ってしまったのだからな。俺からはっきり言わせてもらう。養子当主は破滅を招く。だが、それはもう昔のこと。後鳥羽に信頼を置かれれば、まずこの歴史を白紙にすることは無い。それに、俺たち3人が居れば大丈夫だろう?」
と、言う詠飛兄さんの言葉を無視し、せっせと荷物をまとめ終えた明。
そして、そんな3人の“本当の”兄弟たちの見解を聞き終えると、
「みんな、みんな、自分ばっかり! 後鳥羽に信じてもらえたら平気だなんて、自分勝手だ! みんな、お父さんの子どもだから、守られてるから、そんなこと、言うんだ。騅だって……4人目だから関係ないって…………みんな、明のことをさ、何とも思ってないから、歴史がどうとか言うんだよ。ただの……純司兄さんの次に継ぐ男の子、それだけ……。もう、もう、嫌だよ……。こんな家……出て行く!!!」
と、途中で言葉をつまらせながら、大きな声で泣き走り去った明。
そんな明を、誰一人止めようとはしなかった。
それは「ごもっともだ。明。」という詠飛兄さんの一言があったからだった。
「明……でも、止めないと!」
と、それでも走りだそうとする僕を捕まえたのも詠飛兄さんだった。
「断じてするな。」
「何でよ……? 怖い蛇に食べられたりとか、熊にも食べられちゃうよ!」
「……それは無いだろう。朝早く狩猟に出ている髭の長いおじさんが居るからな。」
「お父さんが……?」
「あぁ。道中は平気だろうが、風邪を引かぬか気がかりだ。」
「兄さんさ、ガラス使えるんなら追いかけてよ。ガラスだけで。」
と、突然口を挟んできたのは傑兄さん。そうすれば明にもわからないと思う。
「いや、それはできない。来る者は拒まず、去る者追わず。養子はすすんで取るが、後醍醐家を出たいなら、その意志を尊重するのが後醍醐家だ。後白河とは違う。」
「そうか……。騅は、万が一俺か純司が死んでさ、当主になることになったらどうする?」
「逃げないよ。だって、明の分もあるし、まず傑兄さんも純司兄さんも、きっと強いから死なないよ。」
と、精一杯の笑顔で言うと、2人は少し照れくさそうにしていた。
すると、詠飛兄さんは手を2回部屋中に響くように叩いた。
「よしそこの2人組、よくわかったな? さて、後白河家討伐の件だが。」
「あ、はい。俺が四男坊だな?」
「そうだ。それで、純司は次男。」
「わかりました。相性ってやつですよね?」
「あぁ。性格で考えると、その組み合わせの方がいい。それで詠美は戦えないから、俺が三男と長男を相手にする。騅は、そうだな……。」
「詠飛兄さん、いいこと考えついた。」
と、指をパチンと鳴らす傑兄さん。
すると詠飛兄さんは、少しだけ困った顔をした。
「何だ?傑のことだから、何かとんでもないことでは――」
「騅は詠飛兄さんの背中にくっついとく! これでまず、三男の怒りを煽る。」
「怒りを煽るって、お前な……」
「そこをなだめている隙に、まず長男から殺る!」
「そこは、長男なんだな。」
「いや、そうした方が面白いかなって………」
と、傑兄さんは笑顔で言うが、詠飛兄さんの顔から、みるみるうちに黒い炎が燃え上がっていくようなオーラが出始めていたので、
「ごめんなさい!」
と、すぐに頭を下げて謝っていた。
「まぁいい。だが、どっちにしろ長男からだろう。恐らく俺のような能力者にするなら、長男だ。」
「そうですよね。俺と傑 兄のパートは、任せてください。」
「純司がそう言ってくれると、ありがたい。もう日にちも無いから、各自、しっかり資料の読み込みと――」
「わかってます!」
と、傑兄さんはいつもの詠飛兄さんの堅い挨拶を遮り、笑顔で言った。
だが、今度は怒らず何度も頷いていた。
そうして2人が仲良く走り去った後に、僕は歩き出そうとする詠飛兄さんを呼び止めていた。
「兄さん。」
「明が心配か?」
詠飛兄さんは、僕の背まで屈んで顔を覗き込んでくれている。
「はい。あと、大事な警報銃……落としちゃったみたいなんです。」
僕のズボンのベルトに挟んであった筈の警報銃は、部屋に戻った時には無くなってしまっていたのだ。
「そうか……。それに関しては構わないが、俺も明が心配だ。ここ最近から”人さらい”が日を追うごとに増えてきている故、被害に遭ってはおらぬか……だがもう、抜けた兄弟だ。心の隅の方で心配してはもらえぬか?」
と、目を伏せて言う詠飛兄さんの複雑そうな表情に、僕は頷くことしか出来なかった。
そして、後日僕だけが詠飛兄さんの部屋に突然呼びだされた。
能力者についての話、と聞いていたけど、何のことかな……?
引き続き、ご意見・ご感想をお待ちしております!
次回は、4月1日(金)に投稿予定です。
あと、次回は………若干、BL要素が入る、可能性が、ございますことをご承知の上、拝読願います。




