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「ふむ、何だそうだったのか。てっきり嫁さん候補でも連れてきたのかと思ったぞ」
「は?」
お父さんの言葉にそう言い返したのは、フランツさんではなくアタシだ。
いきなり何を言い出すかと思えば、『嫁さん候補』って何だ?
そして、フランツさんも、何で頭を掻きながら照れ顔してんの?
お父さんの誤解を早いところ解いてください。話がややこしい方向にいっちゃってます。
「ハハハ。そうだったら……良かったんだけどね」
「全く、お前もアイネもとっくに成人したと言うのに色恋沙汰の一つもない。フランツは何度か『恋人』を連れてきたが、アイネが全員追い返してしまったしな。今回は一緒に出迎えてくれているから、やっとアイネにも認められた相手が出来たと思って喜んでいたのに。父さんはガッカリだぞ」
「ごめん、父さん」
やれやれといった感じで肩を落とすロバートさんに、申し訳なさそうに謝るフランツさん。
残念だったねお父さん、アタシはフランツさんの彼女じゃない。
ただの異世界転移系JKだよ。おい、スパイの話は何処行った。
「あ、あのー……?」
恋人がどうだとか、結婚式はああだとか、早く孫の顔が見たいとフランツさんに説教をたれているロバートさんに、アタシは恐る恐る話しかけた。
「む? 名はチヒロと言ったか。何かな?」
「えーっと……スパイのアタシ達に対する処遇ってどうなるんでしょうか?」
「最終的な判断を下すのは私ではない。それまではこの屋敷にて、フランツやウィルソン達の監視下に置かれる事になるが……なに、手荒に扱うつもりは毛頭ない。エリックの書簡には『異世界人』と書かれていたな? 私はそちらの方が気になっている。後で話を聞くとしよう。そもそもこのフランツが信用して連れてきたのだから、どの道スパイなどではないのだろう?」
「スパイではないです。あの……信じて頂けるんですか?」
そう聞くと、ロバートさんは片方の目で笑うと『うむ』と力強く頷いてくれた。
フランツさんの言うとおり、ロバートさんは強面だが気さくな人だった。
気さくと言うより、情に厚い優しい人と言った方が正しいのかもしれない。
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