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フランツさんは不意に辺りを見回した。
……つい5分前までは賑わっていた、噴水前の広場。
なのに『長角族』――この一言で、辺りから人が消え失せた。
「見ただろ? 『長角族』の名を聞いた人々の反応。皆、長角族を恐れてるんだ。奴らの事を口に出したがる人族はまずいない。そのせいで書物に記載されないことも少なくない。誰もが記憶から消し去りたいと願っても、決して消える事がない歴史の暗部なんだ」
「名前聞いただけで逃げ出すレベルの、ヤバい種族……?」
アタシが聞くと、フランツさんは無言のままゆっくりと頷いた。
言葉にはしがたい複雑なその表情を見て、アタシは興味本位で聞いてしまった事を今さらながら後悔した。
ここではないどこか遠くを見つめるフランツさんの口から、人族と長角族の長い長い昔話が語られた。
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