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フランツさんの表情は暗くて、これ以上詳しく聞くのは憚られた。
話題を変えよう。そうだ、『英雄』の方を聞こう。
そう思った、矢先だった。
近くで遊んでいた子供達の1人が、頭に枝を二本、ベルトで括りつけて大声でこう叫んだ。
「グワッハッハッハッ! 俺様は《ちょうかくぞく》だぞッー! 人族め、皆殺しにしてやるッ!」
『ちょうかくぞく』――。
子供がその言葉を発した途端、通りがかった人々や母親達の視線が一気に集中した。
ママ友と話していた母親が、血相を変えてその子供の元に走って来た。
頭に付けた枝を乱暴に叩き落すと『その名前を言っては駄目といつも言ってるでしょうッ!』とヒステリックな声で怒鳴りつけた。
叱られた子供は何故自分が怒られたのか、理解できなかったのだろう。
見る見るうちに大きな目に涙を浮かべて泣き出してしまった。
周りの通行人達の顔を見れば、皆、蒼白だった。脂汗を浮かべている人さえいる。
まるでお化けでも見たかのかと言いたくなる表情だった。
そして我先にとその場から退散していく。
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