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フジサキの精神は着実に人間らしく成長しつつある。
これは喜ばしい事だ。そのはずなのだが、アタシの中では複雑な感情が渦巻いていた。
『端末』として扱えばいいのか? 『人』として扱えばいいのか?
主人のために料理を作るのは当たり前だと思えばいいのか。
それとも要らぬ心配をかけた事を申し訳ないと思うべきなのか……分からなかった。
今のアタシはフジサキに依存し切っている。
それはアイツが何でも完璧にこなせる擬人化端末だからだ。
それがどうだろう? 人に近づけば近づくほど、きっとそれは依存から愛着に変わっていくような気がして……怖くなった。
頑丈でちょっとやそっとの事では死にそうにないフジサキだが、もしその最悪の状況が起きてしまったら?
アタシは果たして、冷静でいられるのだろうか?
だとしても、だ。
アタシはフジサキに対して本当に言わなくてはいけない事を言わなかった。
今さら自己嫌悪に襲われるが、後の祭りだ。
「何で素直に『ありがとう』って言えないのかなぁ……。アタシってホント、嫌なヤツ」
自嘲気味に呟いた独り言は、誰に聞かれる事もなく空間に溶けていった。
後日、このフジサキ特製カレーうどんが、どう言うわけか使用人の皆に知れ渡っていた。
しかも『フジサキ特製のスパイシーなスープパスタ』という名前で、フジサキが食事当番の時のまかない料理に追加されていた。
~ 7th Scene End ~
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