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「フジサキ! とりあえず黙って!」
アタシがグッとフジサキの腕を掴むと、フジサキは
「ですが……」
とやや不満そうに振り返った。
とにかく、フジサキは空気が読めないし色々と無頓着すぎる。
これからコルデア家にお世話になるんだし、今はフランツさんの言う事をちゃんと聞いておいた方がいい。
「フジサキ、君には『騎士道精神』の書物を貸していたよね? それを……ちゃんと読んでおくことだね」
これ以上言っても……と思ったのか、フランツさんはさらにフジサキを攻撃するようなことは言わなかった。
騎士とは……男とは、女性をいつ、いかなる時も大切に丁寧に愛しんで扱う。
アタシへの対応はフランツさんにとって、極当たり前の行為だった。
スパイであれ、異世界人であれ、困っている女性には手を差し伸べる。
それが彼の『騎士道精神』なのだと理解する。
アタシはさっきまで抱いていたフランツさんへの疑惑を恥ずかしく思った。
彼にやましい気持ちは一切無くて、ただ、純粋にアタシを親切心で助けようとしてくれているだけなのだ。
そして彼には、フジサキのアタシへの対応と態度に、問題があるように見えるのだろう。
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