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さて、チヒロがいなくなった事に気が付いた3人。
立ち寄った肉屋の前で立ち往生していた。
「どうしよう、ビアンカッ! チヒロがいなくなっちゃったよぅ!」
「全くあの子は……。だから、よそ見するなって言ったのに。何処に行っちまったんだろうねぇ?」
慌てた様子で両手をブンブンと振り回すシェナと、頬に手を当ててため息を付くビアンカ。
購入した肉が入った大袋を軽々と抱えるフジサキだけが1人平然と立っている。
「お2人とも落ち着いてくださいませ。マスターも小さな子供ではございません。屋敷への帰り道は把握しているはずですので、心配せずとも自力でお帰りになられるはず……。もし迷っていたとしても、私達はマスターを探しつつ買い物を続行いたしましょう」
慌てる事もなくそう言うフジサキを、ビアンカとシェナは見返した。
彼の意見は的確だ。チヒロも小さな子供ではないのだから、帰り方ぐらいは知っているだろう。
もし迷っていたとしても、自分達2人にとってこの町は慣れ親しんだ庭だ。すぐに見つけられるだろう。
しかしだ。
「ねぇ、ビアンカ。フジサキさんって結構、チヒロに対してドライだよね……」
「主人に対してあの言いよう……アイツは本当にチヒロの召使なのかねぇ。未だに信じられないよ」
「うんうん」
無表情な上に抑揚のない声で話すフジサキからは、チヒロを心配する素振りは一切感じられなかった。
そんなフジサキに背を向けて、会話を聞かれない様にビアンカとシェナはヒソヒソ話し合った。
この場にいない迷子のチヒロに、顔を見合わせて同情するビアンカとシェナであった。
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