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……よし! 思い切ってノックしよう!
勢いよく上げた手が、振り下ろされ……るが、扉の数センチ手前でピタリと止まる。
いや……やっぱり怖いって!
ノックして扉を開けた瞬間、槍でグサーッとか、ない? ない?
……ないですよね、そうですよね。
いくら何でもコルデア家のお嬢様がね……。
ひゅっと息を吸い込むと、アタシは思い切って扉をノックした。
「あ、あの……」
「貴女ね。いつまでそこにいるつもりかと思ったわ」
うおっ、バレてんじゃーん!!
これはさっさと入るに限る!
ゆっくりと扉を開けるとすぐ目の前にアイネがいて、危うく悲鳴を上げるところだった。
そ、そんなところで待ち構えていたのか……。
槍は……持ってないな。腕を組んで仁王立ちしてるけど。
「ご、ご機嫌いかがでしょうか? アイネお嬢様。本日は、その……たいへんお日柄も良く――」
「そんな下手糞な挨拶をしている暇があったら、さっさと入りなさい」
悪かったな、下手糞な挨拶で。
アタシの強張った挨拶を聞いて溜息をついたアイネは、さっさと部屋の中に戻ってしまった。
とにかく、部屋に入るしかない。
今さら逃走する訳にもいかない。それこそ、般若みたいな顔で槍を振り回しながら追いかけてくるんじゃないだろうか?
とにかく、落ち着け。
集中だ。相手の一挙一動をよく見定めるんだ、千尋! 決して油断しては駄目だ。
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