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「フジサキ、ちょっと【フジペディア】で『長角族』って検索してみて」
「かしこまりました」
短く答えて正面を向くと、目を閉じたフジサキ。
実際のところ、目は閉じなくても検索できるんだけど、検索に時間がかかる時はその間ずっとフジサキの目が開きっぱなしになる。
瞬き無しで微動だにしない姿は暗がりとかで見るとかなり不気味だった。
だから、検索中は目を閉じるようにお願いした。
アタシの気紛れな提案で、フジサキが得たこの世界の知識の総称を【フジペディア】と命名した。つまり、フジサキの記憶を頼りにした検索ツールだ。
本当はポ●モン図鑑みたいな名前にしたかったんだけど、語呂が合わなくて断念した。
端末機だった頃のフジサキにはなかったオリジナル機能を二人で作ってみました。
すると、思っていたより早くフジサキは目を開けた。
お、検索が完了した合図だ。
「検索完了。ヒット件数は0件です。該当する記憶がございません」
「はぁ? アンタ、グラン・パナゲア種族図鑑、暗記したんじゃなかったの?」
「おかしいですね。もしかすると、種族図鑑にも載っていない不思議な不思議な人種なのかもしれません」
「ポ●モン言えるかな? のネタは止めろッ! 大体、アタシは151匹世代じゃない……って、今はそんな冗談言ってる雰囲気じゃないから! もう、空気読めよッ!!」
★チヒロの【 B point 】は、【 3pt 増加 】しました。
クソ真面目な顔して、何言ってんだコイツは……。
この世界に存在する種族なのに、その専門書に載っていないとはどういう事だ。
悪いヤツだからってはぶるのは良くないと思う。
それとも図鑑に長角族を記載できない特別な理由でもあるのだろうか?
「無理もないさ。見ただろ? 『長角族』の名を聞いた人々の反応。皆、長角族を恐れてるんだ。奴らの事を口に出したがる人族はまずいない。そのせいで書物に記載されないことも少なくない。誰もが記憶から消し去りたいと願っても、決して消える事がない歴史の暗部なんだ」
「名前聞いただけで逃げ出すレベルの、ヤバい種族……?」
アタシが聞くと、フランツさんは無言のままゆっくりと頷いた。
言葉にはしがたい複雑なその表情を見て、アタシは興味本位で聞いてしまった事を今さら後悔した。
ここではないどこか遠くを見つめるフランツさんの口から、人族と長角族の長い長い昔話が語られた。
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