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「フランツさん、落ち着いてください!」
アタシは思わずフランツさんにしがみついた。
そんなアタシの背中にフジサキの食い入るような視線が突き刺さっている……気がする。
でも仕方がない。今のは、完全にフジサキが悪い。
アタシはフランツさんの顔を見上げた。
フランツさんの表情が怖い。彼がこんな表情をするとは思っていなかった。
そんなアタシの視線に気づいたのか、フランツさんがハッとしたような顔をして私を見下ろした。涙目になっているアタシと目が合う。
一瞬で、バツが悪そうな表情に変わった。
『長角族』はNGワード……千尋、覚えた。
もう絶対、言わないようにしよう。
「ごめん、チヒロ。怒鳴ったりして」
「……いえ」
どうやら落ち着いてくれたらしい。アタシはそっと、フランツさんから離れた。
振り返ると、やや不機嫌な顔をしたフジサキと目が合う。
「マスター、何故止めるのですか? 私は何も……」
「フジサキ、アンタは考えもなしに色々言い過ぎなんだよ。アタシ達は部外者なんだから、この世界の事情にとやかく言う資格はないの」
「しかし……」
「いいから! ……フランツさん、すみません。興味本位で聞く話じゃありませんでした……。フジサキ、アンタもフランツさんに謝りなさい」
「…………フランツ様、申し訳ございません」
あからさまに不承不承という感じで、フジサキがフランツさんに謝罪する。
3人の間に、嫌な沈黙が流れた。
一陣の風が吹き抜け、それと同時に広場に面した通りにさっきの活気が戻ってきた。
ざわざわと騒がしくなった通りからの声で、アタシ達は現実に引き戻された。
アタシ達の方を見て、ブルルルッとあっちゃんが嘶いた。
蹄で地面を叩き、『早く行こう』とアタシ達を急かしているみたいだ。
「そろそろ……出発しようか?」
沈黙と静寂が破られた。
アタシは黙ってコクンと頷いた。……何も言えなかった。
フジサキにはああ言ったけど……アタシは少なからずショックを受けていた。
――君達に何が分かるッ!!
フランツさんの『君達に』って言葉には、つまりアタシも含まれてるんだよね。
親切にしてくれてはいるけど、完全に信じてくれてはいないって事だ。
感情があらわになった一瞬に出た、彼の本音――。
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