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「あの……何か、すみません」
口からするりと出た言葉は、そんなぼんやりとした謝罪だった。
そもそもはフジサキが妙にフランツさんに突っかかるから悪い。
フジサキの不手際は、所有するアタシの不手際だ。
「どうしたの? 何で謝るんだい?」
フランツさんは足を止めて振り返ると、小首を傾げた。
「あの……何て言うか……」
ごにょごにょ言いながら、ちらりと見上げる。いつの間にか、フランツさんがアタシのすぐ傍まで来ていた。
「何か、不安でもあるのかい?」
「不安と言えば……えーっと……出来る事なら、会いたくないなぁ、とは思います。その……ちょ、何とか族に。いつか元の世界に帰る方法を探しに旅に出て、道端でばったり遭遇したりしたら、アタシ戦えないですし……身を守るすべがないなぁって思いまして」
「……僕が守るよ」
フランツさんは、急にまじめな顔をして言った。
「……え?」
「大丈夫。この鉄壁のマルトゥスにいる限り、奴らが襲撃してくる事はないから安心していい。それに……万が一現れても、僕が必ず君を守るから」
その言葉には一点の曇りもなかった。
フランツさんは、本当にアタシの事を守ってくれる気でいるんだと思う。
でも、その言葉を素直に受け取れない自分がいた。
『君を知りたい』と言った彼が――『君達に何が分かる』とアタシ達を突き放したこと。
君達――そこにはフジサキだけじゃない、アタシだって含まれている。間違いなく。
「何で……アタシにそこまで良くしてくれるんですか?」
彼の真意が知りたくて、思わずそんな疑問を口走った。
「君は……その。隊長から預かった監視対象だからね」
「ああ……」
監視対象だから守る――当たり前か。何を期待してんだアタシは。
ちょっとガッカリしてしまった雰囲気を察したのか、フランツさんは困ったように眉を下げた。
「それだけでも……ないけどね」
最後にそう付け加える。
ハッとして顔を上げると、フランツさんはもう前に向き直って歩き始めていた。
――それだけでもないなら、何があるんです?
さすがにそう聞くことはできなくて、アタシは黙ってフランツさんの後をついていった。
それにしても……長角族か。いつか何処かで遭遇する事になるのだろうか?
もし出会ってしまったら、アタシはどうすれば良いんだろう?
これから先の未来が真っ暗な気がして、アタシは途方に暮れた。
~ 3rd Scene End ~
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